「――ああ、しんのすけか。九州のじいちゃんたい」
「―――ッ!」
「むさえに伝えてくれんね。――いい加減、諦めて九州に戻れとな。頼んだばい」
そして、電話は切れた。
呆然とするオラに、ドアの陰に隠れたむさえさんがおそるおそる顔を覗かせた。
どうだった?――そう言わんばかりの顔をして、オラに注目する。
オラは静かに、親指を立て、アウトのジェスチャーを取る。
それを見たむさえさんは、一人、ムンクの叫びのような顔をするのだった。
「と、父さんにバレてたとは……」
むさえさんは、居間の中央で項垂れる。
「……まあ、親子ってことじゃないの?」
「さすが九州のじいちゃんね。むさえおばさんの行動パターンを読んでる……」
ひまわりは腕を組みながら、感慨深そうに呟く。
「――こうしちゃいられない!」
むさえさんは、さっさと荷物をまとめて玄関に駆け出した。
「え?もう帰るの?」
「まあね!父さんに居場所がバレてるなら長居は無用」
むさえさんは急いで靴紐を結ぶ。
と、その時――
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