従姉妹とさとみが行った高校、有名な進学校で、頭の良い奴はほとんどがここへ行く
男女比は4:6くらい、爽やかで健全な高校
クラスメートや先生は俺が工業高校へ行く事を驚いてたけど、止めはされなかった
ちなみに俺の高校と従姉妹の高校は車で30分ほどの距離
今は近く思えるけど、自転車しか交通手段が無かった当時はとても遠く感じたし
それ以前に従姉妹に彼氏ができたらどうしよう…ととても不安だった
1年のとき、その学校の雰囲気に馴染むことに集中、特に先輩に目をつけられないようにした
勉強は元々出来たこともあって上位をキープ、部活はもちろん卓球部で、どうしても先輩とプレイしたかったから必死でレギュラーになった
2年のとき、特になし、交友関係もそれなりで、部活も県予選を突破し四国大会へ
3年の春、俺はある人物と再会する
3年になって、何故か俺は読書にはまっていた
元々本を読むのは好きだったけど、この時期が一番ハイペースで読んでと思う
図書館には部活が無い休日に、一週間毎に通っていた
その図書館でいつものように気になる本を探していると、急に声をかけられた
「あ、俺君…覚えとる?」
俺「………あー、えーっと、さとみ?」
さとみ「うん!覚えとってくれたん?久しぶりやなぁ!」
さとみだった
さとみも友達とよく図書館へ来ていたそうで、たまたま俺を見かけたから声をかけたらしい
さとみの友達は皆美人だった
当の本人も相変わらず美人で、天然で、小さかった
そして超意外なんだけど彼氏はいない、とのこと
工業高校選んだのを心底後悔した
従姉妹の事を聞いたら、あまり仲良くないからしらないって言われた
詳しく聞くと、高校へ入り話す事も少なくなり、お互い別々の友達ができたとか
少しショックだったけど、まあそれはそれでいいか、と思った
それから二人で近況を教えあって、また会うかもなって言って別れた
それからはよくさとみと会うようになって
その度お互いの友達がどうだとか部活が上手くいってるかとか話してた
夏休みになった
俺の最後の大会(団体)は県でベスト8、正直納得いかなかった
まあ先輩に頼りきったチームだったから、仕方ないけど
その時もさとみとの交流は続いてて
夏休みの始めに二人で遊びに行こうって話もあったけど、結局行かずに夏休みは終盤に差し掛かる
俺が図書館に行くと、いつものようにさとみが居た
俺「よう、また勉強か」
さとみ「うん、進学校は大変なんよー…」
俺「マジで大変そうやな、こんなん全然解らんわ」
さとみ「なー……あ!」
俺「?」
さとみ「そういえばな、気分転換にどっか行こうって話しがあるんやけど、行く?」
俺「え、行かんけど」
さとみ「えー何でよ、いこーだ」
俺「だって何所行くかも解らんしどうせお前の学校の奴ばっかだろ」
さとみ「場所はまだ決まってないけど、メンバーは………」
さとみが挙げたメンバーは、どれも中学時代の同級生だった
さとみ「な?いけるよな!」
俺「いやー…皆と会ってないし、何か俺一人浮きそうやけんなー」
さとみ「あ、そういえば従姉妹ちゃんも来るよ!」
俺「!」
これは俺の心を動かした
さっきのメンバーとは別段会いたいとは感じなかったのに、従姉妹だけは強く会いたいと思ってしまった
俺「んー………まあそこまで言うなら」
さとみ「ほんま!?やった!皆に言っとくな!」
俺はさとみにばれない様に、しょうがないから行ってやってもいいか、っていう雰囲気を出しながら答えた
そして家に帰って即カッコいい服を探したり髪型研究したりした
それから何回かさとみと会って、集合場所や何所へ行くか、皆の反応なども聞いた
当日、何故か図書館集合、俺は超早起きして何度も鏡で自分の姿を確認した
自転車で出発、ちゃんと10分前行動を心がけた
俺一人だったら暇かなー、でもどうせ10分くらいで皆来るだろ
何て考えてるうちに図書館へ着いた
さとみは、既に来ていた
俺が、「うーす、早いなー」って話しかけると
「まあ今日は私がリーダーやけんな!言う事聞かないかんよ?」って笑ってた
そんなくだらない話をしてる内にぞくぞくと皆が集まってきた
皆中学時代のノリとあんま変わってなくて、俺の不安は直に無くなった
従姉妹は最後に来た
その時に交わした会話は
「…おう、久しぶり」
「…うん」
だけだった
もっと話したいと思ったけど、気まずくて、照れくさくて、何も言えなかった
あ、上で皆って書いたけど、詳しくは8人、上手く男:女=4:4になってた
車は、さとみともう一人野球部だった奴が出してくれた
向かった先は水族館
インドアな俺には嬉しい行き先だった
水族館では8人で行動するのは流石に、という理由で4人ずつに分かれることになり
8人の内の4人は驚く事にカップル同士だという事で、
俺、さとみ、友達、従姉妹
他4人
の組み合わせになった
正直イチャイチャするのを見てると腹立つので、良い組み合わせだと思った
俺のグループは順路に沿って進んだ
他4人は、適当にぶらぶらしてくるって言ってどっか行った
魚の種類とかどの魚が凄かったとかは憶えてない
そんな事より、友達が従姉妹と仲良くしてて気が気じゃなかった
4人で回るはずがさとみ俺・友達従姉妹って感じで別れてた
さとみがつまらなそうにしてたから、申し訳ないな、と思って極力気にしないようにした
俺の予定では、
「うわーこれ綺麗やなー」
「ほんまやなー」
みたいに喋れるはずだったのに、何て言えばいいか解らないけどモヤモヤした物が俺の頭の中にあった
水族館では結局喋れなかった
昼食は女子陣が弁当を作ってきてくれてて、皆で食べる事にした
けど、女子二人が彼氏にばっかり食べさせるせいで、ここでもグループが別れた
俺は主にさとみのを、友達は従姉妹のを食ってた
正直「友達ウザイ」って思った、ゴメン
午後からは近くの海に行った
しかし海でも友達と従姉妹が楽しそうに泳いでた
泳ぎが苦手な俺はさとみとバレーしてた
夕方になって、流石に疲れた、もう帰ろうかってなった時に
さとみが「サプラーイズ!」って言って、車から花火を持ってきた
テンションだだ上がりの皆、さとみも鼻高々だった
皆まちまちに好きな花火を取り出して楽しんだ
手筒花火なんかは滅茶苦茶盛り上がった
この日初めて全員で遊んだ
夜が更けて花火も残り少なくなってきて、またグループに別れ始めた
やっぱり俺はさとみと居て、楽しそうにはしゃぐ従姉妹を見つめる事しかできなかった
俺が、ふとさとみに「喉渇いたな」って言うと気を利かせたのかジュースを買いに行ってくれた
一人になって、もう一度従姉妹を見てみるとなんと従姉妹も一人だった