すぺっく
俺
当時中学2年生
名前 涼太
兄貴
当時高校2年生
名前 健太
兄貴の彼女
当時高校2年生
名前 歩美
パンツは履いてていいぞ!
健太やめろよ
RPGの主人公に真剣に考えて名前つけてそう
名前はスマン。ABCだとわけわかんなくなるから同級生の名前借りたわ。
俺が最初に歩美と出会ったのは、中学2年生になってすぐの4月だった。
その日は休日だったけどサッカー部の練習もなく、家の中で何をするでもなく下はジャージに上はTシャツっていう部屋着姿でいたんだ。
両親は共働きだし、兄貴の健太は朝からどっかに出掛けてて俺は一人でテレビ見ながらご飯食ってた。
ご飯食べ終わってソファに座りながら携帯をいじってたら、いきなりピンポーンってインターホンが鳴ったんだ。
普段居留守使う俺だったが、その日は母親が宅急便来るから居留守使うなってメモを置いていた。
しょうがなく印鑑持って玄関の扉を開けると、そこには段ボールの代わりにコージーコーナーの箱を持った女が立っていた。
当然俺は意味が分からないし、誰?不審者?とか思った。そこで戸惑っている俺を見て、満面の笑みを浮かべた女は口を開いた。
女「はじめまして!健太から聞いてるかな?」
俺「えっ?」
女「あれ?聞いてない?今日、健太の家に遊びに行くって言ってあったんだけど…涼太くんだよね?」
この時、俺は直ぐに目の前の女が兄貴の彼女だと気づいた。高校生になっても俺と同じサッカーをやっていた兄貴から、彼女なんて浮ついた話を聞いたことはなかったので驚いた。
俺「あっ、聞いてないですけど兄貴今いないですよ?」
女「えー!ちゃんとメールしてあったんだけどな。どうしたんだろう?とりあえず、健太とお付き合いさせていただいてます。歩美です。」
見るからに年下だし、部屋着姿の俺へ深々と頭を下げた歩美。頭を上げた際に笑顔で手渡してきたコージーコーナーのケーキ。
俺はそれを「ありがとうございます」とか余裕ぶって貰ったけど、実際はその笑顔に見惚れてしまった。
歩美は高校生ってだけあって、私服姿だったんだけどめちゃくちゃ可愛かった。髪が長かった頃のガッキーを想像してくれれば間違いない。
そんな歩美と俺は玄関で二人どうすればいいのか分からず、無言になってしまった。
兄貴がいないのに家に入れられないし、かといってケーキだけ貰って帰すのも悪い。
俺「あのー。兄貴に電話かメールしてみたらどうですか?」
歩美「あっ、そうだね!」
同じように気まずそうにしていた歩美が鞄から携帯を取り出そうとあたふたしていると、その背後から兄貴が走ってくるのが見えた。
兄貴「歩美、ごめんな!来るって言ってたのに!」
歩美「よかったー。メールだったから伝わってないのかと思った」
一瞬にして歩美の顔が変わったのを、俺は見逃さなかった。なんていうか、俺と話してるときには見せなかった女らしさっていうの?それが兄貴の前だと出てたんだ。
ぶりっ子とか甘えてるわけじゃないんだけど、その時の二人は見るからに高校生カップルだったな。
兄貴「おっ、涼太もありがとうな。ちょっと康平のところにノート届けに行ってたんだ」
康平ってのは兄貴と同じサッカー部の同級生で、俺にとっては中学時代の先輩だった。
そのまま歩美を兄貴は家に入れ、俺も流れ的に兄貴達とリビングに向かった。
リビングに三人で座って、俺は貰ったケーキと冷蔵庫にいつもある炭酸を用意してテーブルに持って行った。貰ったケーキの中身は家族の人数分である四つ入ってたんだが、その中に兄貴が好きなモンブランが入っていた。
俺はそれを見たときに、付き合ってるんだから自分の彼氏の好きなもの知ってて当たり前だよな。って、思ったのと同時に羨ましく感じた。
歩美「家族の人数分しかないから、私はいらないよ!」
健太「大丈夫、父親出張で明後日帰ってくるから食べちゃえよ」
歩美「じゃあ、私もいただくね」
それだけの会話だったが、兄貴が俺の知ってる兄貴じゃなかった。なんていうか男らしいんだよ。大切にしてるってのが凄い伝わってきた。
健太「改めて、こいつが俺の弟の涼太。中学二年生でサッカーやってるんだ」
歩美「さっきも言ったけど、歩美です。宜しくね」
俺「あっ、宜しくお願いします」
中学二年生って年頃も関係してるのかは分からないが、とにかく俺は余裕ぶって歩美にかっこよく見せたかった。
本当は目の前の歩美を可愛いとか思ってるくせに、それがバレないようになんとかポーカーフェイスを決めていた。
兄貴「ケーキくれたのが歩美で、俺の彼女。一応1年の頃から付き合ってるんだ」
別に兄貴の恋愛をすべて知ってるわけじゃないが、中学時代から兄貴はモテた。同級生の女子も、「涼太くんのお兄さんかっこいいよね」とか言ってきたし。
兄貴は告白してきた子が可愛ければ付き合うような、女関係が適当な印象があった。だからこそ、今回連れてきた歩美を大事にしているのも本気なのも分かった。
まだガキの俺は、すっかり歩美のその見た目に惚れてしまった。でも、そんなこと言えるわけもないし素ぶりも見せられない。
その日は俺が二階の自室に篭り、兄貴達はずっとリビングにいた。夕方帰ったらしいが、俺は部屋で寝ていて知らなかった。
これが、俺と歩美の出会い。なんの捻りもないしただ兄貴が彼女連れてきて弟に紹介しただけっていうものだった。
それでもこの一回で、俺は歩美の無邪気な笑顔を好きになってしまった。
歩美を家に連れてきて親に紹介して以来、兄貴は今まで隠してきたのがなんだったのか分からないくらい歩美のことをオープンに話すようになった。
他の兄弟は知らないが、俺と兄貴は二人ともサッカーやってたこともあってか仲が良い。
それに本人には絶対言わないが、同じポジションでサッカーが上手い兄貴を尊敬していた。また、同時に劣等感というか兄貴がコンプレックスでもあった。
勉強も運動も出来て、顔も良ければ愛想も良い。そんな兄貴を持ったせいで、中学の先生にはよく兄貴の話を聞かされていた。
比べられるたびにムカついて、それでも心のどこかで兄貴には勝てないからしょうがないと諦めていた。
その時連れてきたのが歩美。俺は、どうしても完璧な兄貴から何か一つ奪ってやりたいと思ってしまったのだ。
それから二ヶ月間、俺は歩美に会うことは出来なかった。と言うか、兄貴が家に連れてこなかったのだ。
兄貴は自転車通学だが、どうやら歩美は電車通学らしい。だからあまり家に呼ぶと帰宅時間が遅くなるのが理由だった。
俺は是非また歩美に来て欲しかったが、そんなこと口が裂けても言えない。
だから遠回しに「別に俺がいても気にしないでいいからな」とか兄貴に言っていた。
兄貴と歩美がとっくにそういう関係なのは空いたゴムの箱を部屋で見つけて知っていた。でも俺の家でヤらないから、多分歩美の家でヤってたんだと思う。
乱れた歩美の姿を想像して、俺は何度か抜いたこともある。でも、妄想の中の歩美だけで現実では二ヶ月も会えてなかった。
そんなとき、俺が隠していた中間の壊滅的なテスト結果が見つかってしまった。
期末の二週間前だったんだが、あまりにも酷かったので俺は親に結果を見せろと言われてもはぐらかし続けていたのだ。
丸つけしてあるテストの答案用紙を捨てるのはダメだと思って、ベッドの下に置いたのがまずかった。兄貴からくすねたエロ本(ベッド下に隠した)と一緒に、母親が答案用紙を机の上に置きやがったんだ。
俺はキレたね。なぜ年頃の男の部屋に入るんだと、夕飯作ってる母親に怒鳴りつけた。どうやら俺が空の弁当を出し忘れたのを部屋に取りに行き、汚いからついでに軽く掃除をしようとして見つけたらしい。
その時、俺は遊びに行っていた。自業自得だと思ったが、なんかもうエロ本の恥ずかしさとテスト結果見られてやばいって感情が爆発して顔真っ赤だった。
夕飯はカレーだったが、半狂乱になりながら母親に怒っている間に完成してしまった。
こういうとき男の子供持つ母親って凄いと思うんだが、俺がキレて怒鳴っても怖がることもなければ完全にシカト。
「はいはい。涼太が悪いんでしょー」って見事に俺の厨二病っぽい言い訳と屁理屈は流された。
母親「分かったから、この話は後で。お皿五枚持ってきて!」
俺「はっ?うちっていつから五人家族になったんだよ」
母親「あれ?今日は歩美ちゃん来るんだけど、ホワイトボード見てないの?」
そう言われて急いでリビングのテレビ横に置かれたホワイトボードを見る。そこには、「歩美ちゃん夕飯」と母親の字で書かれていた。
俺の家は母親が100均で買ってきた小さいホワイトボードをテレビ横に置いてるんだが、そこに予定や連絡を書くことになっている。
俺は中学生だし別に用もないので見ないし使ってないが、兄貴は部活の遠征だったり弁当の有無だったりを律儀に母親のために書き込んでいる。
この時ほどホワイトボードを見なかったことを後悔したことはないね。朝から知ってたら、一日のテンションとやる気は倍くらい変わっていた。
母親にバレない程度に急いで洗面所行くと、顔洗って髪の毛を軽くセットした。俺なりに最初の部屋着にボサボサヘアーの印象を良くしたかったのだ。
兄ちゃん頑張れ
ついさっきまでエロ本やらテスト結果やらでキレてたくせに、珍しくカレーを盛る作業を手伝った。
母親はそんな俺を見て、怒られるのを回避するためのポイント稼ぎだと思ったみたい。それならそれで、勘違いしたままで良かった。
兄貴の彼女に会うのが楽しみだなんて誰が考える?普通なら罪悪感を感じるところだが、まだ若かった俺はそんな罪悪感なんて少しも感じずに歩美が来るのを待っていた。
そして7時を過ぎた頃。なぜか父親と兄貴達が三人仲良く帰ってきたのだ。