「……あいちゃん、最近疲れてるね……。何かあったの?」
「……少し、思うことがありまして……。いつも気を使わせてしまって、申し訳ありません……」
「いや、それはいいんだけど……何か悩んでいるなら、オラにでも相談してよ。出来る限り力になりたいし」
(本当に力になれるかはなんとも言えないけど……)
「……ありがとうございます、しんのすけさん」
あいちゃんは、再び力ない笑顔をオラに向けた。
何に悩んでいるかは分からない。だけど、オラは彼女のボディーガードであり、友達でもある。
相談してくれるかは分からないけど、もし言ってきた場合は、出来る限り力になろうと決意する。
……そう思った、わずか数日後のことだった……
「――え!?あいちゃんが行方不明!?」
「はい!送迎係の者が、少し目を離した隙にいなくなってしまったようで……」
会社に出勤したオラに、秘書の女性が慌てながら伝えてきた。
あいちゃんが、どこにいるか分からないという。
「GPSとかであいちゃんの場所は分からないんですか?」
「それが、あい様はGPS機能つきの携帯電話、バッグ、靴等をすべておいて行ってしまっているようで……」
(靴にまで……さすがはあいちゃん……)
などと感心している場合ではない。
いなくなったのは自宅敷地内から。そして、寸前まで送迎の車に乗車していた。
状況から考えるに、誘拐の線は薄いだろう。あいちゃん自らが、どこかへ行った――そう考えるのが、妥当だと思う。
ではいったい、彼女はどこに行ってしまったのか……
手がかりは、今のところない。
酢乙女家の監視体制を熟知している彼女にとって、その目を逃れるのは容易いのかもしれない。
「……とにかく、オラも探してみます」
「は、はい!よろしくお願いします!」
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