そして黒磯さんは、一枚の紙をあいちゃんに渡す。
それを見たあいちゃんは、目を伏せた。
「……なるほど……こんなことが……しんのすけさんの心中、お察しします」
「察する程でもないって。特に何も考えてなかったからね」
「それでも、人のために行動するその御気持ち……あいは、感動しました!」
あいちゃんは紙を抱き締めながら、天を仰いだ。
「そんな、大袈裟だなぁ……」
するとあいちゃんは、視線をオラに戻す。そして、優しい笑みを浮かべて、切り出した。
「――しんのすけさん、あなたは、今の職場で働いていくおつもりですか?」
「う~ん……まあ、僕がいないと困るだろうし……。それより、なんで?」
「……実は、酢乙女グループの本社ビルで、新しく1名の雇用を募集しているのです」
「酢乙女グループの?」
「そうです。――しんのすけさん。そこに、応募してみませんか?」
「……え?」
「給料は今よりはいいはずです。少々体力を使いますけど……」
「いやいや、それはダメだよ」
「どうしてですか?」
「だって、なんかそれって、卑怯じゃないか。あいちゃんのコネで入るみたいな感じで……」
そう言うと、あいちゃんはフッと笑みを浮かべた。
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