憧れは思い出に変わり、思い出はいつまでも心を温めてくれる。
そうやって、人は大きくなる―――
これも、父ちゃんの受け売りだ。
(ひまわりも、いつか結婚するんだろうな……想像も出来ないけど)
ひまわりのことを思うと、思わず笑みが零れた。
どうもオラはひまわりに甘いところがある。たった一人の妹で、大切な家族。オラの、大切な。
今はただ、彼女の幸せを祈りたい。
父ちゃん達が他界した時、ひまわりは塞ぎ込んでしまった。
学校にも行かず、ずっと仏壇の前で泣いていた。
今では、それも嘘のように元気だ。
でもひまわりは、家族がいなくなることにトラウマが残っている。
一度、オラが事故で病院に運ばれた時、泣きながら病院に駈け込んで来た。
病室で眠るオラに、大声で泣きながら『置いてかないで』と叫んでいた。
オラは寝てるだけだったのにな。
今はどうかは分からない。
ただ、彼女を心配させないためにも、オラは元気でいないといけない。
今のところ生活も安定している。
このまま、平穏に暮らせていけば、それ以上に嬉しいことはない。
「……そろそろ寝るかな」
寝室に戻ったオラは、布団に潜った。そして、静かに目を閉じた。
それから数日後、オラはとある居酒屋にいた。
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