ちなみにその子は、見た目にも天使みたいにかわいい子で、
よくネット上で落ちてる写真でいうと、この子にイメージが近い。
>>19 それは、むしろ怖いなwww
で、おれもその子と別れるのはほんとにつらかった。
教員としての経験が全然なくて、技術は未熟だったけれど
その分、子どもたあちができるようになって喜ぶ顔や嬉しそうにする顔、
そうしたことが自分にとって喜びだった。
そして、思い返したときに浮かんでくるのは、
その子に初めて会った日のこと、ドッジボールの投げ方を教えてあげたこと
一輪車の練習に付き合ったこと、壁倒立の支えをしてやったこと・・・。
自分にとって、無我夢中ですごした最初の教員生活の象徴みたいな存在になってたんだな。
時間はどんどん過ぎていったけど、
その子はおれが3月までなんてことは夢にも思っていなかっただろうから、
いつも変わらない笑顔で、俺に飛びついてきてた。
本当だったら、学年末の退職のあいさつまで、自分進退は秘密にしていなければならない。
でも、おれは、その子がその瞬間に絶望するだろうなと言うことが手に取るように分かってた。
だから、3月までが本当につらかった。
毎日その子に会うたびに、もうすぐお別れなんだなという気持ちでいっぱいになってしまって、
その子は笑顔でニコニコしているのに、こっちは一方でとても悲しくて、
顔を合わせるのがかえってつらい日々だった。
でも、時間はやっぱり待ってくれない。
3月になり、とうとう、終業式の時間が来た。
今年度の退職教員として、俺は校長に名前をよばれて、舞台に立った。
舞台に立った瞬間、2年前に同じように舞台に立って紹介を受けた日のことから、
この2年間の思い出が、一気に押し寄せてきて、思わず涙にむせんでしまった。
例の子の方は、わざと見なかった。
やがて、式も終わり、おれはぼんやりと職員室に座っていた。
しばらくすると、それぞれのクラスの帰りの会が終わり、
子どもたちが下校するざわめきも聞こえてきた。
最後のあいさつと思って、おれは職員室から出て、子どもたちの下駄箱の方へ向かった。
と、職員室から出て数歩歩んだそばから、例の子が前からこちらへダッと駆けてくるのが見えた。
>>27 風邪ひくから履いて
たまちゃん「やめないでー!!!」
おれ「・・・ごめんね、ごめんね」
たまちゃん「うわーん!!!」
俺にできたのは、そう言って、頭をなでてやることだけだった。
結局数分間、たまちゃんは泣き続けたんだけど、なんとかなだめた。
おれ「先生も、たまちゃんと一緒に体育が出来て楽しかったよ。
例の子、例の子って言い続けるのもなんだし、今目の前にたまねぎあるから、
以下、たまちゃんね
たまちゃん「何でやめるの・・・」
おれ「いや、他の学校で、先生をすることになって・・・。」
たまちゃん「何で教えてくれなかったの・・・」
おれ「教えたかったんだけど、こういうことって、先にみんなに教えちゃいけないんだ、ごめんね・・・」
たまちゃん「・・・うわーん!!!」
以下、たまちゃん号泣。
職員室のほぼまん前で、他の子どももいる中で泣きつかれて、おれ狼狽。
たまちゃん「・・・お手紙書く」
おれ「うん。きっと返事を書くよ」
たまちゃん「絶対だよ! 約束だよ!」
おれ「たまちゃんからのお手紙を、そのままにするわけないじゃない。楽しみにしてるよ」
たまちゃん「・・・うん!」
ほんとに健気だった。
そのあとは、最終下校の時間も近づいてきたから、ほとんど追い返すようにしてたまちゃんを帰した。
さいごに、たまちゃんは靴を履きかえてから、
おれの脚を両腕でぎゅっと抱きしめて、しばらくおれのズボンに顔をうずめた後、、
「先生、ばいばい、またね」と、笑顔を見せて帰っていった。
俺自身、たまちゃんだけでなく、いろいろな思い出が詰まった初めの職場。
感慨にふけりたかったけど、そんなひまもなく、次の職場へ移る準備を進めなきゃならなかった。
4月。
おれは、新しい学校に移り、それなりにうまくスタートを切った。
新しい学校でも自分から積極的に校庭へ出て行って、子どもたちと遊んだ。
もちろん、今までの非常勤の身分とは違って正規の教員になったわけだから
仕事量は今までの非ではないほど、膨らんでいた。
だけど、新しい職場での期待や、今までの職場での子どもたちの思い出を胸に、
がつがつ仕事に取り組んで、新生活に徐々に気持ちをシフトさせていっていた。
もちろん、たまちゃんのことを忘れたわけではなかった。
さっきも書いたけど、たまちゃんは自分の中である種、象徴のようなものになっていたから、
自分が教員であるというアイデンティティの根っこに、常にたまちゃんのことがあった。
新しい職場で、不慣れな環境のためにミスをして、ちょっと自分が嫌になりそうになった時でも、
「たまちゃんのように自分を慕ってくれた子どもがいたんだから、まだ頑張れる!」
そう思うと、不思議と気持ちがすーっと楽になって、また頑張れる気がした。