やめてくれ
まあ聞いてくれよ。
おれは大学卒業して、すぐに小学校の教員になったんだよ。
でも、初めに雇われたのは非常勤。
まあいってみればバイトみたいなもんだよ。
その中に、1年生の体育も含まれてたのね。
非常勤とは言えども、念願の教員になっておれはすごく燃えてた。
ほんとうに一所懸命に教えたよ。
子どもからしたら、非常勤も専任も関係ないからな。
休み時間もボールの投げ方を教えてやったり、
一緒に鬼ごっことかして遊んだり、子どもたちとの仲もばっちりだった。
で、その中でも特になついてきた一人の女の子がいたんだ。
その子は何かと言うと、俺にまとわりついてきて、だっこだのおんぶだのせがんでいた。
でもまぁ、おれも一人のことばかり仲が深まりすぎるのも立場上良くないし、
適当にいなしてる部分もあったんだけど、
なんだか知らないけどその子の方が、おれと波長が合うところでもあったようで
いつもいつもくっついてきてた。
何か、回線調子悪いから、切り替える。ID変わるかも。
で、向こうがなついてきてくれるもんだから、俺もよくないな~とは思いつつ、
休み時間なんかは、その子を含めて何人かの子と一緒にいることが多かった。
とはいえ、1年生だからかわいいもんで、
単に無邪気な遊びにつきあってやっていたに過ぎない。
でも、子どもほど、一度気持ちが一つの方向に向いたら
それへの執着はとても大きいようで、出勤するたびに、
その子はおれに飛びついてくるようになったんだ。
おれも、教員1年目だったこともあって、
子どもがなついてくれることの嬉しさをかみしめてた。
で、そんな調子で2年目、また俺は同じ学校で非常勤をやってた。
相変わらずその子はおれにべったりで、
1年以上経過しても変わらず信頼関係を保ち続けられていた。
それどころか、非常勤の立場ながら、その子の親御さんとも親密になって
廊下で会ったりすると「>>1先生のおかげで、うちの娘は体を動かすのが好きになって」
なんてお礼も言われたりするような間柄になった。
で、おれもとうとう下積みが終わって、
3年目には正規の教員になれるという見込みが立ったんだけど、
それはつまり、この学校を離れなければならないということだった。
頭の片隅では、この愛着ある学校でずっと・・・なんていう思いもあったけれど、
それは学校教員の宿命で、自分で務める学校は選べない。
それはつまり、例のなついてくれてた子ともお別れをしなきゃならないということだった。。