高校の行事の勉強合宿で夏の山奥へ➡︎そこで忘れられない出来事が・・・

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261:1 ◆od.mCbJyhw @\(^o^)/: 2016/12/20(火) 00:18:18.08ID:sYV6Bbni.net
その反応は意外なものだった。
武智「あれ、驚かないね」
委員長「まあ、だって私は渚と吉谷君が付き合ってるの知ってたし」

委員長「むしろ、それで1が落ち込むのがびっくりなんだけど……」
武智は、また黙って俺の方を見た。

俺「俺、渚のこと好きだったからね。それでだよ……」

262:1 ◆od.mCbJyhw @\(^o^)/: 2016/12/20(火) 00:18:53.59ID:sYV6Bbni.net
委員長「うっそー! そうなんだ知らなかった」
委員長「ってか二人とも吉谷君と渚が付き合ってること知らなかったの?」

そう質問されて、俺も武智も「知らなかったけど」と答えた。

委員長「えー! じゃあ吉谷君は1にも武智にも付き合ってること言ってなかったの?」
武智「聞いた覚えはねえよな?」
そう振られて、俺も大きく頷いた。

263:1 ◆od.mCbJyhw @\(^o^)/: 2016/12/20(火) 00:21:12.35ID:sYV6Bbni.net
武智「少なくとも、男子で知ってる奴はいないんじゃねえの」
委員長「うわー、そうなんだ……」
暗がりで委員長の表情はよく見えなかったが、声色が呆れていることは分かった。

委員長「吉谷君は、1が渚のこと好きだってことは……」

俺「知ってるね。前に話したことあったし」
武智「そうだよな、前に言ってたもんな」

それを聞いて委員長は「やばいことになったねぇ」と苦笑いしていた。

264:1 ◆od.mCbJyhw @\(^o^)/: 2016/12/20(火) 00:22:05.65ID:sYV6Bbni.net
武智「いやー別に付き合うのはしょうがないかもしれないけどさ」
武智「隠してたってのが、やっぱりショックだよな~」

本当にそうだった。
俺は渚の気持ちだって最初から知っていたし、
ハッキリ言ってくれれば諦めだってついたのに。

今まで吉谷と仲良くしていた時間、あの全てが偽りだったように思えた。

アイツは、俺や武智や元気と遊んでいる時、笑っている時、
一体何を思っていたんだろうか?

265:1 ◆od.mCbJyhw @\(^o^)/: 2016/12/20(火) 00:22:43.42ID:sYV6Bbni.net
吉谷は、俺の渚への想いを知っていた上で、秘密にしていたのか?
武智「まあでも、アイツにも何か事情があったかもしれんし」
委員長「うん、吉谷君もきっと悪気はないと思う……」

それはそうだけど。そんな事言っても、気持ちに整理はつけられなかった。

なぜ隠していた。なぜ黙っていた。
そんな想いが黒く燃え上がって、俺の心が荒んでいくのが分かった。

266:1 ◆od.mCbJyhw @\(^o^)/: 2016/12/20(火) 00:23:39.22ID:sYV6Bbni.net
肝試しが終わり、へとへとになって部屋に戻って、
元気や武智たちと何を話すでもなくゲームをして遊んでいた。

すると、そこに吉谷が何も言わずに帰ってきた。
俺たちには話しかけず、布団を敷いて先に寝るようだ。
もしかしたら俺は、吉谷を睨んでしまっていたかもしれない。

武智「なあ、吉谷」
武智が声をかけると、横になった吉谷はだるそうに、「なに」と答えた。

269:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2016/12/20(火) 00:28:56.52ID:/M/ecaoB.net
大人なら消化できることが思春期ってできねーんだよなぁ

270:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2016/12/20(火) 00:30:34.66ID:Q038mZAQ.net
肝試しからのキャッキャウフフ展開かと思ったら…
修羅場突入かね?
あと武智と委員長のかけ合いめっちゃ好きw

273:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2016/12/20(火) 07:51:47.77ID:Espt8OeD.net
うおぉーー!
続き気になるぜ
個人的には最終的に中学生と結婚してればよし

274:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2016/12/20(火) 13:21:30.32ID:jkNRB9WM.net
高校時代に戻りたくなってきたわ…
どうしてくれる

282:1 ◆od.mCbJyhw @\(^o^)/: 2016/12/21(水) 00:15:51.94ID:w0vmV9HP.net
武智「お前、渚と付き合ってたのか」
吉谷「なんだ、もう武智にまでまわったのか」

吉谷は、こちらを向くこともなく、淡々と話した。

武智「俺たちに隠してたのかよ」
吉谷「別に隠してはいねえよ。元気には言ってあったしな」

元気は状況を飲み込めていないようで、「何かあった?」と混乱している。

283:1 ◆od.mCbJyhw @\(^o^)/: 2016/12/21(水) 00:17:28.46ID:w0vmV9HP.net
武智「何も。ただ、吉谷が付き合ってるのが分かったんだよ」
武智「んで、俺と1には秘密にしてたのか?」

武智がグイグイと突っ込んでいくので、俺は心配になった。
俺「おい武智、もういいって……」

吉谷「ああ、隠してたさ。だって、何て言えばいいんだよ?」
吉谷「1、お前の気持ちだって俺は知ってんのに」

284:1 ◆od.mCbJyhw @\(^o^)/: 2016/12/21(水) 00:18:48.96ID:w0vmV9HP.net
武智「そんなもん! 素直に言えばそれで済んだことだろ!」
吉谷「できるか!!」
吉谷が、大声をあげた。

あと一歩で、担任が部屋に来そうなくらい、大きな声だった。

吉谷「そんな簡単に、できるか!」
吉谷「俺だってどれだけ悩んだと思ってる」
吉谷がそう言い切って、部屋の中はしんとした。

285:1 ◆od.mCbJyhw @\(^o^)/: 2016/12/21(水) 00:20:09.68ID:w0vmV9HP.net
俺も武智も元気も、誰も何も言えずにいた。
吉谷「隠してたつもりはない。いつかは言おうと思ってた」
吉谷「そこは……悪かったって思ってる」

それだけ言うと、吉谷は布団に潜り込んでしまった。

それはそうだ。
吉谷だって悪気があったわけじゃないだろうし、悩んだはずだ。
でも、俺だってそんな簡単には割り切れなかった。

286:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2016/12/21(水) 00:22:05.55ID:lu6bO12f.net
吉谷…

287:1 ◆od.mCbJyhw @\(^o^)/: 2016/12/21(水) 00:28:15.67ID:w0vmV9HP.net
次の日、4日目は何もかも手がつかなかった。
まったくと言っていいほど、集中できない。
何をする気も起きなかった。

武智も、元気も、吉谷も、みんな様子がおかしい。
仲の良かった俺たち4人の関係が、壊れかけていた。

いがみ合ったり、言い合ったりはしないが、
今までのような自然さや、気軽さがない。
それに、吉谷は目に見えて俺たちを避けているようだった。

288:1 ◆od.mCbJyhw @\(^o^)/: 2016/12/21(水) 00:43:12.03ID:w0vmV9HP.net
しかも、俺は失恋をした。
元々諦めかけていた渚への想いだが、
それが完全に打ち砕かれた。

渚という俺の好きな人は、目の前から消えた。
むしろ、これで良かったのかもしれないが、
どうしようもない虚しさと、やりきれない悲しさだけが心に残った。

そんな、様々なしこりを残したまま、4日目は終わった。

289:1 ◆od.mCbJyhw @\(^o^)/: 2016/12/21(水) 00:45:50.12ID:w0vmV9HP.net
翌日の5日目、この日はとても暑く朝からみんなへばっていた。
俺たちを灼き殺しそうなほどの太陽が、カンカンに照っていた。

例のごとく、午後の休憩時間に担任が「お菓子の買い出し頼む~!」と呼びかけた。

武智もその場にいなかったので、俺は一人で名乗り出て、買い出しに行くことにした。
正直、もうあの神社に向かうつもりもなかったのだが、
俺は気づけばふらっとあの神社に立ち寄っていた。

290:1 ◆od.mCbJyhw @\(^o^)/: 2016/12/21(水) 00:49:04.65ID:w0vmV9HP.net
階段を登るのは大変なのに、俺はまたあの鳥居の前に自転車を止めて、
神社へと向かっていった。
白い日光が広場を一杯にして、その中で小学生が駆け回っていた。

その様子に少しだけ嬉しくなって、俺は境内を目指した。
拝殿には、やっぱりヒロコが座っていて、ギターを弾いていた。

あ、いるじゃないか。
それは安心なのか、ときめきなのか、自分でも分からなかった。


291:1 ◆od.mCbJyhw @\(^o^)/: 2016/12/21(水) 00:50:23.47ID:w0vmV9HP.net
ヒロコ「あ、1だ! 来てくれたんだね」
俺「うん、なんか久しぶりだね」

ヒロコ「昨日も一昨日も来なかったから、もう来ないかと思ってた」
そう言うと、ヒロコは「ひひ」と笑った。
その表情は汗ばんでいて、少しだけ火照っていた。

俺「ごめんね。ちょっと大変だったんだ」
ヒロコ「もう、明後日には帰っちゃうんでしょ?」

俺「そうだね……」
そう呟くと、ツクツクボウシの声がどこからともなく聴こえた。

292:1 ◆od.mCbJyhw @\(^o^)/: 2016/12/21(水) 00:51:09.41ID:w0vmV9HP.net
俺「またブルーハーツ弾いているの?」
そう聞くとヒロコはニコッと笑った。

ヒロコ「うん、終わらない歌。この前弾いた時、すごく楽しくて」
ヒロコ「だから、完璧にしたいなって」

この前弾いた時。あの時は、楽しかったな。
そんなことを思ってしまった。

293:1 ◆od.mCbJyhw @\(^o^)/: 2016/12/21(水) 00:52:13.66ID:w0vmV9HP.net
俺「こんな日は、『青空』なんかもいいよね」
ヒロコ「いいね! でも、青空はまだ練習中だから~」
俺「そっかw」

ヒロコと話していると、自然と笑顔になっている自分がいることに気づいた。
どうしてだろうか?

ふと、ギターを弾くヒロコの二の腕あたりに、あざがあるのを見つけた。

305:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2016/12/21(水) 11:35:23.35ID:mbifGz+R.net
夏っていいな

306:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2016/12/21(水) 11:39:26.25ID:xswpRMjr.net
学生時代にこんな甘酸っぱい青春したかった

307:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2016/12/21(水) 17:43:17.44ID:lu6bO12f.net
夏に、いや高校時代に戻りたくなった

313:1 ◆od.mCbJyhw @\(^o^)/: 2016/12/22(木) 00:23:15.50ID:jQo6cTiU.net
俺「ちょっと……そのあざは何?」
しばらくヒロコは黙っていた。

俺「何かあったの?」
ヒロコ「ちょっと、殴られた。この前のあいつらに」

俺「え? マジで?」
ヒロコは黙って頷いた。

314:1 ◆od.mCbJyhw @\(^o^)/: 2016/12/22(木) 00:23:54.17ID:jQo6cTiU.net
俺「それ、大丈夫なの?」
ヒロコ「これは別に大丈夫だけど、さすがにちょっと面倒くさいかな」
そう話すヒロコは笑顔をなくし、無表情だった。

俺「なんであんな奴らと一緒にいるんだよ?」

ヒロコ「本当はもう、一緒にいたくないよ。でも、ギターを貰ったし」
俺「ギターを?」

316:1 ◆od.mCbJyhw @\(^o^)/: 2016/12/22(木) 00:25:42.61ID:jQo6cTiU.net
ヒロコ「あたしの家ね、ママが離婚してさ、すっごいお金ないの」
ヒロコ「だから、ギター欲しくても買えなくてさ」
ヒロコ「そしたらあいつらが、ギターを安く譲ってくれるって言うから」
淡々と、それでいて噛みしめるように語り続ける。

ヒロコは、あのMDウォークマンを取り出した。
ヒロコ「これで音楽聴いてるのも、パパが置いてったやつで」
ヒロコ「これしか、音楽聴くものないんだよ」

317:1 ◆od.mCbJyhw @\(^o^)/: 2016/12/22(木) 00:29:11.47ID:jQo6cTiU.net
今までの出来事全てに、合点がいった。
なぜMDウォークマンを使っているかも、ヒロコが古臭い音楽を聴いているかも。

俺「そっか。ブルーハーツもミッシェルも……そのMDがあったからってことか」
ヒロコ「そうそう。偶然それがあって、聴いたら大好きになった」

ヒロコは、またうっすらと笑みを浮かべた。
ヒロコ「ママは忙しくて家にあんまりいないから、そんな時これを聴いたら、励まされた」

318:1 ◆od.mCbJyhw @\(^o^)/: 2016/12/22(木) 00:33:59.62ID:jQo6cTiU.net
俺「でも、ギターを貰ったならもういいじゃん」
ヒロコは「ううん」とかぶりを振った。

ヒロコ「あいつら、ああ見えても楽器するからさ」
ヒロコ「一緒にいたら、演奏してくれるかなって思ってた」

俺はなるほどな、と思った。
ヒロコは学校でもバンドが組めなくて、ずっと一緒にできる人を探していた。
あのヤンキーたちも、そうだったということだ。

319:1 ◆od.mCbJyhw @\(^o^)/: 2016/12/22(木) 00:46:14.02ID:jQo6cTiU.net
ヒロコ「でも、あたし気づいちゃったんだよね」
俺「なに?」

ヒロコ「あいつらは、あたしから金を取ることしか考えてないし、一緒に音楽もやってくれない」
ヒロコ「あたしはただ、バンドがしたかった。ギターがしたかっただけなのに」
ヒロコ「もう、こんなの嫌だ……」

ヒロコは、目に涙を浮かべていた。
壊れそうだったものが、ついに音を立てて崩れた、そんな気がした。

320:1 ◆od.mCbJyhw @\(^o^)/: 2016/12/22(木) 00:57:51.07ID:jQo6cTiU.net
そんなに最低の連中だったのか。
ヒロコが人を寄せ付けない風貌をしているのも、煙草を吸って強がるのも、
全ては、自分の弱さを隠したかったからなのか?

許せないと思った。

俺「そんな奴ら、もう縁を切っちゃえよ」
ヒロコ「そんなことしたら、後で何されるか分かんないし……」
ヒロコ「あたし一人で抵抗するのは、怖い」

321:1 ◆od.mCbJyhw @\(^o^)/: 2016/12/22(木) 00:59:08.43ID:jQo6cTiU.net
俺「そいつらは、今日の夜も来るのか?」
ヒロコ「来ると思うけど……」

俺「俺に考えがある。だから、今夜いつも通りここに来て」

俺一人じゃ無理だ。
あいつらの助けがいる……

322:1 ◆od.mCbJyhw @\(^o^)/: 2016/12/22(木) 01:00:19.32ID:jQo6cTiU.net
俺は買い出しをテキトーに済ませ、一目散で勉強小屋に戻った。
すぐに席に座っていた武智、吉谷、元気を外に連れ出し事情を話す。
この前来たヒロコが、追い詰められていることを赤裸々に語った。

俺「だからさ、頼む。今夜、力を貸してくれないか?」
3人は、しばらく黙って見合っていた。

俺「こんなことにいきなり巻き込むのは本当に悪いけど……」
俺「お前らしかいないから」

すると、武智が口を開いた。
武智「タッパのある奴がいた方が相手もビビるだろうしな。俺は行くよ」

323:1 ◆od.mCbJyhw @\(^o^)/: 2016/12/22(木) 01:01:07.07ID:jQo6cTiU.net
俺「マジか! ありがとう」
喜んだのも束の間、吉谷が口を開く。

吉谷「そんな得体の知れない連中に巻き込まれたくねえよ」
吉谷の目はいつになく真剣だった。

俺「吉谷、頼むよ。お前だってヒロコの事は一生懸命だって言ってたじゃねえか」

吉谷は首を横に振った。
吉谷「別にあの子は悪くないし、気持ちもわかる」
吉谷「でも、もしバレたらどうなる? ただ事じゃねえぞ、分かってんのか?」
吉谷「俺は勉強をしにここに来たワケで、ケンカをしに来たわけじゃない」