高校の行事の勉強合宿で夏の山奥へ➡︎そこで忘れられない出来事が・・・

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177:1 ◆od.mCbJyhw @\(^o^)/: 2016/12/18(日) 02:20:25.28ID:7PmSbru9.net
吉谷「中学生の女の子で、そりゃまた珍しいな」
吉谷が食いついたところで、俺は続けた。

俺「だから、この子と一緒に『終わらない歌』演奏してくれないか?」
俺「頼む!」
そう言うと、吉谷は「うーーん」と唸って悩み始めた。

吉谷「バレたら、とんでもねえことになるぞ……」
吉谷はそう呟くと、首をひねった。

178:1 ◆od.mCbJyhw @\(^o^)/: 2016/12/18(日) 02:30:46.71ID:7PmSbru9.net
俺「この子、バンドも組んだことないし、誰かと一緒に弾いたこともないんだよ」
俺「だから、なんとか」
俺が必死にそう言うと、ヒロコも「お願いします」と頭を下げた。

さすがの吉谷も押し負けたのか、
「じゃあ、いいけどさ……」と承諾してくれた。

それを聞いてヒロコが「ありがとう!」と飛び跳ねた。

吉谷「とりあえず部屋に来なよ」
吉谷「ここだと誰かに見られちまう」
吉谷は俺たちを宿の裏口へと先導した。

179:1 ◆od.mCbJyhw @\(^o^)/: 2016/12/18(日) 02:35:24.24ID:7PmSbru9.net
歩きながら吉谷に、「詳しいことは後でちゃんと教えるから」と話した。
吉谷は「絶対だからな」と口をとがらせた。

吉谷「えーと、ヒロコちゃん? 靴は持って中に入ってな」
宿舎に入ると、吉谷は念入りに中を見回した。

吉谷「夕飯中で良かったな。まだ誰もいない」
吉谷は小声でそう言うと、俺とヒロコに「入れ」と手で促した。

三人で素早く2階の俺たちの部屋へと向かった。

180:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2016/12/18(日) 02:44:52.72ID:FLJD2jRM.net
なんだかハラハラするなぁ…

181:1 ◆od.mCbJyhw @\(^o^)/: 2016/12/18(日) 02:50:28.07ID:7PmSbru9.net
吉谷「仕方ないとは言え、中学生の女子を部屋に入れるのは罪悪感がすげえよw」
吉谷はそう苦笑いしたが、俺も散らかっていた私物をすぐに片付けたw

吉谷が部屋の隅に立てかけてあったベースを構えて「よし」と言うと、
それを見てヒロコも急いでギターを構えた。
ヒロコはあからさまに緊張していて、動きがぎこちなかったw

俺が「そんなに緊張しなくてもw」と語りかけると、
「でも……」とあたふたしていたw

182:1 ◆od.mCbJyhw @\(^o^)/: 2016/12/18(日) 02:58:07.76ID:7PmSbru9.net
吉谷「ちょっと、軽く弾いてみてよ」
ヒロコ「わ、分かった」
ヒロコはカチコチになりながら、終わらない歌の出だしをさらった。

吉谷「おお、思ったより弾けるじゃん!」
そう言うと吉谷は、嬉しそうにカバンから何か取り出した。

吉谷「アンプとかはさすがにないけど、コイツで合わせよう」
取り出したのは、ミニスピーカーだった。
そして自らの音楽プレイヤーをつなげた。

183:1 ◆od.mCbJyhw @\(^o^)/: 2016/12/18(日) 02:59:57.59ID:7PmSbru9.net
吉谷「別にミスったっていいし、気楽にいこう」

吉谷は「よっしゃやろか」と言って、俺に音楽プレイヤーを差し出した。
ヒロコに「準備はいい?」と聞くと頷いたので、再生ボタンを押す。
スピーカーから「終わらない歌」が流れて、二人の表情が変わった。

ジャジャ! ジャジャ! ジャージャージャーン!
ジャジャ! ジャジャ! ジャージャージャーン!

あの聴き親しんだイントロが流れて、すぐに「終わらない歌を歌おう!」と曲が走り始める。

184:1 ◆od.mCbJyhw @\(^o^)/: 2016/12/18(日) 03:05:07.63ID:7PmSbru9.net
あたふたしながら弾くヒロコに、
吉谷はさも楽しそうに笑顔で「自信持って弾けばいいんだよ!」と呼びかけた。

2回目のサビが来る頃にはヒロコも固さが取れて、
楽しそうに笑顔混じりで演奏を始めた。
二人とも体を上下に揺らして、ノリノリである。

俺も楽しくなって、ついつい歌を口ずさんでしまう。

185:1 ◆od.mCbJyhw @\(^o^)/: 2016/12/18(日) 03:06:49.45ID:7PmSbru9.net
一通り演奏し終わると、吉谷は「上出来だよ!」と言って楽しそうに笑みをこぼした。
ヒロコ「やった! 全部やりきれたー!」
盛り上がって、三人で思わずハイタッチしてしまった。

俺「二人とも、すごいね!w」
興奮してそう言うと、二人は恥ずかしそうに笑った。

気づくと、部屋のドアの前に武智と元気が立っていた。
武智はニヤニヤしていたが、元気は何とも複雑な表情をしている。

196:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2016/12/18(日) 22:57:10.81ID:VeuUrm3W.net
凄くイイ!
待ってます!

198:1 ◆od.mCbJyhw @\(^o^)/: 2016/12/19(月) 00:08:24.17ID:Tegzasq4.net
武智「セッションなんて、楽しそうなことしてんじゃん」
俺「え?! もう夕飯終わった?」
慌ててそう聞くと、「大丈夫大丈夫、まだみんな食ってっから」と武智が答えた。

武智「なんかお前らが怪しかったからさww様子を見に来たんだよ」
俺「なんだよ……それなら良かった」

武智は俺を引き寄せ、小声で(これが、昨日言ってた子か?)と尋ねた。
俺が黙って頷くと、「やっぱり」とおちょくるような笑顔を作った。

199:1 ◆od.mCbJyhw @\(^o^)/: 2016/12/19(月) 00:09:08.77ID:Tegzasq4.net
突然人数が増えたのでヒロコは驚いたのか、
俺のそばに寄ってきて武智と元気に軽い会釈をした。
元気だけが状況を理解しておらず、口を開けたままだった。

吉谷「ちゃんと先生はごまかして来たんだよな?」
武智「だーいじょぶだって。そこはマジで問題ないから」

武智「そんなことより、邪魔してごめんな」
武智「せっかくなんだし、もっと弾けよ」

200:1 ◆od.mCbJyhw @\(^o^)/: 2016/12/19(月) 00:09:53.23ID:Tegzasq4.net
吉谷は、「他に何か弾きたいのある?」とヒロコに質問した。
ヒロコはこの状況に物怖じすることもなく、
「それならもっかい終わらない歌を弾きたい」と言った。

吉谷は「好きだねw」と笑いつつも、「いいよ」と準備態勢に入った。
すると武智が何を思ったのか、
「同じじゃつまんねえし、1が歌ったらどうなんだよ」と言い出した。

すると吉谷も「いいじゃんそれwお前歌えよww」と乗り気になった。


201:1 ◆od.mCbJyhw @\(^o^)/: 2016/12/19(月) 00:10:44.64ID:Tegzasq4.net
さすがにみんなの前で歌うのは恥ずかしかった俺は、ヒロコの方を見た。

ヒロコ「すっごくいいと思う。歌ってよ!」
ヒロコも目をキラキラさせて、そう頼み込んできたのだった。

逃げ場がなくなった俺は、「それじゃ、一回だけね……」と泣く泣く了承した。
元気だけはやはり輪に入れず、呆然としたまま黙っていたw

もう半ばやけになっていた俺は「いくぞー!」と叫んで再生ボタンを押した。

202:1 ◆od.mCbJyhw @\(^o^)/: 2016/12/19(月) 00:11:46.15ID:Tegzasq4.net
ジャジャ! ジャジャ! ジャージャージャーン!
ジャジャ! ジャジャ! ジャージャージャーン!

吉谷とヒロコの渇いた楽器の音が鳴り響く。
不思議と、さっきよりも大きく聴こえるような気がした。

「終わらない歌を歌おう! クソッタレの世界のため!」

歌い出すと、不思議とみんな笑顔になった。
歌っている俺自身も、なんだか楽しくて仕方がない!

203:1 ◆od.mCbJyhw @\(^o^)/: 2016/12/19(月) 00:12:28.11ID:Tegzasq4.net
途中から、さもヒロトかのように部屋中を動き回って歌う俺に、
ノリノリで演奏を続ける吉谷とヒロコ。
武智と元気も楽しそうに体を揺らし、合いの手を入れる。

ただの寂れた和室に過ぎなかった場所が、
たちまちライブ会場になったような気がした。

とにかく楽しくて、俺は我を忘れて歌い続けた。

204:1 ◆od.mCbJyhw @\(^o^)/: 2016/12/19(月) 00:13:33.80ID:Tegzasq4.net
最後まで演りきって曲が終わると、
みんなで「イエーーーー!!」と盛り上がってしまった。
そして意味もなく、またハイタッチ。

歌い終わった後も、なんだか胸のドキドキを抑えきれなかった。
なんなんだ、この気分は。

そしてヒロコが、「すっごく楽しい!!!」と叫んだ。
その笑顔は、まるで晴れ渡る夏空のようだった。

淀みがなく、真っ直ぐで、純真な笑顔。
この子、こんな顔で笑えたのか、と意表を突かれた。

205:1 ◆od.mCbJyhw @\(^o^)/: 2016/12/19(月) 00:14:28.17ID:Tegzasq4.net
そんな風に盛り上がっていたのも束の間、
窓から外の様子を見ていた元気が、「あ、そろそろやばいかもよ」と言った。

武智「え、もうそんな時間か?」
俺「大声で歌いすぎたかな?」
吉谷「まずいね、帰ったほうがいいかも」
場の空気が一気に張り詰めた。

もちろん、合宿所に部外者の立入りは禁止だし、それが地元の女子中学生だなんてバレた暁には、
俺たち全員どうなるか分かったものじゃない。

206:1 ◆od.mCbJyhw @\(^o^)/: 2016/12/19(月) 00:15:45.64ID:Tegzasq4.net
武智「様子見てくるわ!!」
そう言って、勢い良く武智が階段を降りていった。

元気「俺はこっから見てるよ。こっちに向かってきてる人はいないけど、すぐ来そうだわ」

ヒロコは眉をひそめて、「え、どうしたらいいの?」と困っているようだった。
俺「とりあえずギターをしまって、帰る準備! 靴も持ってね」

武智「おーい! 今ならまだ行けるぞ! 早く早く!」
一階から、武智の呼ぶ声がした。

207:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2016/12/19(月) 00:16:01.32ID:tRXIoTpt.net
わくわくしてくるな

208:1 ◆od.mCbJyhw @\(^o^)/: 2016/12/19(月) 00:17:05.25ID:Tegzasq4.net
元気も「今、今!」と俺たちを促した。
ヒロコと俺と吉谷の三人は、大急ぎで階段を降りた。

裏口の方で、武智が「こっちこっち」と手招きしていた。
裏口から勢い良く飛び出すと、吉谷と武智は食堂の方に向かおうとした。

吉谷「俺らが食堂の方に行って、こっちに人が来ないようにしとくから」
それを聞いてヒロコが、「あの、今日は本当にありがとうございました」とお礼を言った。

吉谷と武智は、振り向きながら手を振ってそれに応えた。

209:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2016/12/19(月) 00:19:13.15ID:7CCyvkHX.net
みんなでちょっと悪いことして、見つからないように逃げ出すこのヒヤヒヤした感じ、たまらない
ドキドキしてくる胸が

210:1 ◆od.mCbJyhw @\(^o^)/: 2016/12/19(月) 00:20:13.51ID:Tegzasq4.net
俺とヒロコは猛スピードで走って宿舎から出て、近くの道路まで来た。
俺「ここまで来れば、さすがに大丈夫だろ」
ヒロコ「そうだね……」

俺たちは肩で息をしながら会話を続けた。

ヒロコ「1の友達に、ちゃんとお礼言いたかったな」
俺「気にしないでよ、俺から伝えとくからさ」

ヒロコは真剣な顔で「よろしく」と言った。

211:1 ◆od.mCbJyhw @\(^o^)/: 2016/12/19(月) 00:20:52.93ID:Tegzasq4.net
ヒロコ「今日は、本当に楽しかった」
ヒロコ「人と弾いたの初めてで、なんだかライブしたみたい」
俺「そうだねw 俺もついつい乗りすぎちゃったw」

ヒロコ「誰かと一緒に弾くって、こんなに楽しいことだったんだ」
ヒロコは「ひひひ」と笑って、「ありがとね」と呟いた。

その笑顔はやっぱり、あのあどけないものだったけど、
どうしてか、俺の心にじーんと染み込んだ気がした。

212:1 ◆od.mCbJyhw @\(^o^)/: 2016/12/19(月) 00:22:19.06ID:Tegzasq4.net
俺「いいって、気にしないでよ」
照れ隠しで、ついつい素っ気なく返事をしてしまう。

俺「それより、こっから家遠いの? 大丈夫?」
ヒロコ「ううん、そんなにだよ。だからここで大丈夫」

ヒロコは「じゃあね」と俺に手を振った。
俺も黙って振り返す。

ヒロコは最後に、「あの神社で、また弾いてるからね」と言い残していった。
その言葉とともに、暗がりの街灯の中、あの茶髪の後ろ姿が遠くなっていくのを目に焼き付けた。

213:1 ◆od.mCbJyhw @\(^o^)/: 2016/12/19(月) 00:23:07.44ID:Tegzasq4.net
ヒロコのことを心配に思いつつも宿舎に戻ると、
外にはすでに夕飯終わりのクラスメイトが何人もいた。

危なかったな、と肝を冷やした。

食堂前に吉谷と武智がいて、「大丈夫だったか」と聞かれたので、
「なんも問題なかったよ」と答えて、
一人で食堂で軽くご飯を食べて、部屋に戻ることにした。