高校の行事の勉強合宿で夏の山奥へ➡︎そこで忘れられない出来事が・・・

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412:1 ◆od.mCbJyhw @\(^o^)/: 2016/12/27(火) 01:51:06.41ID:l0x0uwBQ.net
委員長「それならもう時間もないし、すぐ着せてあげるから、うちらの部屋おいで」
渚「うん、早く着替えちゃお」
言われるまま、ヒロコは二人に背中を押されて部屋へと連れて行かれてしまったw

ヒロコは戸惑いながらも嬉しそうで、委員長にライブのことを話して良かったなと思った。

413:1 ◆od.mCbJyhw @\(^o^)/: 2016/12/27(火) 01:51:39.99ID:l0x0uwBQ.net
三人が去ってから、吉谷にそれとなく聞いてみた。
俺「浴衣、よかったの?」
吉谷「アイツが貸すって言うなら、それでいいよ」
吉谷「それに、やっぱりライブに衣装は必要だろ」

吉谷はほんの少しだけ笑みを浮かべて、ベースの練習を再開した。
それを聞いて安心し、俺も歌詞の確認を始めた。

414:1 ◆od.mCbJyhw @\(^o^)/: 2016/12/27(火) 01:54:34.11ID:l0x0uwBQ.net
しばらくすると、部屋から三人が戻ってきた。
ヒロコは、鮮やかな青色の浴衣を身にまとい、髪を後ろで結っていた。
はっきり言って、とても綺麗だ。

渚「サイズがちょうどで良かった」
委員長「ね、よく似合うでしょ。下駄とかは、向こうで履き替えればいいから」
委員長は嬉しそうに下駄の入った袋をヒロコに手渡した。

ヒロコははにかみながら、恐る恐るこちらを見た。

415:1 ◆od.mCbJyhw @\(^o^)/: 2016/12/27(火) 01:55:22.48ID:l0x0uwBQ.net
俺「いいじゃん、ほんとによく似合ってるよ。髪の毛もいいね」
吉谷も「いいね」と笑顔で頷いている。

ヒロコはぱあっと明るい笑顔になり、「ありがとう」と遠慮がちに言った。

ヒロコは嬉しさを抑えきれないようで、「夢みたい!」と呟いて浴衣を愛おしそうに眺めた。
その笑顔はまるでプリズムのように瞬き、キラキラと光を放った。
これで、衣装はバッチリだ。

416:1 ◆od.mCbJyhw @\(^o^)/: 2016/12/27(火) 01:56:34.90ID:l0x0uwBQ.net
俺「ってか、委員長たちも戻らなくて大丈夫?」
委員長「そうだ、そろそろ戻らないとさすがに……」

委員長がそう言ったのと同時に、吉谷が「やべえ!」と声をあげた。

吉谷「出演者の集合時間って6時だよな? あと30分くらいしかねえぞ」
俺「え、マジで!?」

ふもとの町までは、自転車で飛ばしてギリギリで30分くらいだ。
今すぐ行かないと、間に合わない。

417:1 ◆od.mCbJyhw @\(^o^)/: 2016/12/27(火) 01:57:58.39ID:l0x0uwBQ.net
やばいやばい、と焦りながら急いで外へと飛び出す。
本当ならバスで行くつもりだったので、何の準備もしていなかった。

委員長「じゃあ私たちは戻るから、またあとでね!」
俺「ああ、みんなによろしくね」
委員長と渚を見送り、俺たちは自転車置き場を目指した。

俺「バスの時間、ちゃんと考えとくんだった」
吉谷「まあ、色々あったししょうがねえ」

自転車にまたがり、ギターを背負ったヒロコを後ろの荷台に促した。
ヒロコは荷台を指差して「ここ?」と首を傾げた。

421:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2016/12/27(火) 02:34:47.69ID:+yY8HZud.net
追いついたけど普通に面白かったわ
ひと夏の恋って感じでたまらん!
続きが激しく待ち遠しい

2:1 ◆od.mCbJyhw: 2016/12/31(土) 16:49:54.25 ID:oVMLduBOo.net
俺「あ、浴衣で二人乗りはさすがに危ないかな」
吉谷「いまさら何言ってんだww」
吉谷に、大げさに笑われた。

荷台によろよろと腰掛けたヒロコは、やっぱり少しおぼつかなかった。

吉谷「そんなに怖かったら、ヒロコちゃん1にしっかりつかまってな」
吉谷がそうアドバイスすると、ヒロコは俺の腰あたりに思い切りつかまった。

3:1 ◆od.mCbJyhw: 2016/12/31(土) 16:52:37.42 ID:oVMLduBOo.net
俺「マジかwwwwww」
びっくりして、変な声が出てしまった。
さすがに照れくさくてしょうがないので、すぐに「急ぐよ!」と言ってペダルを踏んだ。

すっかり日が暮れて、橙に溶け込んだ町の中を思い切り走った。
二台の自転車の影が、ぼんやりと長く伸びる。
どこからともなく、寂しげにヒグラシの鳴く声が聞こえた。

しばらく走ると、あのひらけた県道にぶつかり、下り坂になった。

4:1 ◆od.mCbJyhw: 2016/12/31(土) 17:02:20.63 ID:oVMLduBOo.net
吉谷「一気にいくぞ」
吉谷は、立ち乗りになり思い切り速度を上げた。
ヒロコに、「飛ばすよ!」と一言声をかけ、俺もそれに続いた。

広い県道の下り坂を、一気に駆け下りていく。
途中、何台かの車にもすれ違ったが、そんなのお構いなしに、
俺たちは全力で走り続けた。

しばらくすると山道の雰囲気は薄れ、遠くにふもとの町が見え始めた。
遥か彼方には、橙黄色に光を放つ太陽も見えた。
そのせいもあってか、町のすべてが夕暮れに呑み込まれていた。

5:1 ◆od.mCbJyhw: 2016/12/31(土) 17:08:25.14 ID:oVMLduBOo.net
信号機、街路樹、すれ違う車、目に映る全てがオレンジで、
町中まるごと影が伸びていくような気がした。

俺「もうすぐ、着きそうだな」
走りっぱなしで、全身から汗が吹き出していた。

吉谷「まだ時間的には大丈夫だ、急ごう!」
吉谷も息を切らして自転車をこいでいた。

吉谷「お祭りって、確かお寺の近くだよね」
ヒロコ「うん。駅に近いから、看板の駅方面に向かえばいいと思う」

7:1 ◆od.mCbJyhw: 2016/12/31(土) 18:20:55.22 ID:oVMLduBOo.net
それを聞いて「よっしゃ!」ともう一度思い切りペダルを踏んだ。
ひたすら道を下っていると、次第に町並みが変わっていき、
市街地のような場所に出てきた。

言われていた駅の前を過ぎ、ヒロコに促されるままお寺方面を目指した。

寺に近づいてくると人々の往来も増え、浴衣を着ている人や、
子どもの姿も目立ってきた。
お祭りの、浮かれた雰囲気が広がっていた。

交通整備の人が誘導灯を振って、人や車を捌いている。

8:1 ◆od.mCbJyhw: 2016/12/31(土) 18:32:02.63 ID:oVMLduBOo.net
吉谷「よし、着いた!」
俺「間に合った間に合った!」
俺たちは息も切れ切れに、自転車置き場に自転車をぶち込んだ。

ヒロコが駆け出し「早く早く!」と急かしている。

すっかりバテバテの足を引っ張って、それに付いて行く。
俺「受付って、どこでできるのさ」
ヒロコ「多分、奥に運営のテントがあるから、そこ」

9:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします: 2016/12/31(土) 18:37:53.38 ID:3MW+u5AAo.net
町中まるごと影が伸びていくような気がした
↑読んでてあぁ~ってなったわ
光景が目に浮かんだよ、すごい

10:1 ◆od.mCbJyhw: 2016/12/31(土) 18:44:51.11 ID:oVMLduBOo.net
寺の敷地内に入ると、そこら中に屋台が立っていた。
焼きとうもろこしやたこ焼きだの、醤油を焼いたような香ばしい匂いともに、
「いかがっすかー」という威勢のいい声が四方から響いている。

人の数も多く、走って進んでいくには、少し厳しかった。
それでもヒロコは、人混みをかき分けどんどん進んでいった。

はぐれたらヤバイと思い、俺も吉谷もヒロコを必死に追いかけた。


11:1 ◆od.mCbJyhw: 2016/12/31(土) 18:52:23.11 ID:oVMLduBOo.net
進んでいくと広場に行き着き、寺の本堂のようなものが目の前に見えた。
横には、派手に電飾の飾りが施されたお手製ステージのようなものがあり、
見上げると、「夏祭りフェスステージ」と看板が掲げられていた。

ヒロコはそれに構うこともなく、本堂の脇にあったテントへと、
一直線に向かっていった。

思った以上にしっかりとしたステージに少々驚いてると、
「二人ともこっちだよ!」と、ヒロコに呼ばれた。

12:1 ◆od.mCbJyhw: 2016/12/31(土) 18:53:28.20 ID:oVMLduBOo.net
運営テントの中では、ハッピを着たスタッフが慌ただしく動き回っている。
何人かのスタッフと会話をし、受付の手続きを済ませる。
「ぎりぎりでしたね」と笑われてしまった。

スタッフ「グループ名が無しになっていますが、このままでいいですか?」
それを聞いてヒロコが俺と吉谷の方を見たので、「あれでしょ」と助言した。

ヒロコ「バンド名は、『THE SUMMER HEARTS』でお願いします」

13:1 ◆od.mCbJyhw: 2016/12/31(土) 18:58:44.12 ID:oVMLduBOo.net
スタッフは「いい名前ですね」と笑って書面を訂正していた。
その後、どういう編成でどんな曲をやるかの説明を行った。

俺「あ、そうだ。マイクを2本用意してもらってもいいですか」
出し抜けに言ったので、吉谷が不思議そうに俺の方を見た。

吉谷「なんで2本?」
吉谷の質問に答えず、俺は「ヒロコ、いい?」と、ヒロコの顔を見つめた。

14:1 ◆od.mCbJyhw: 2016/12/31(土) 19:02:39.30 ID:oVMLduBOo.net
俺「マイク用意するから、歌いたくなったら歌いな」
俺「ハモリとかコーラスとか、そんなんじゃない。歌いたいとこで歌えばいい」
俺「言ってたろ? ブルーハーツを聴いてると元気になるって」

吉谷は「なるほどね」と納得した様子で頷いていた。

俺「だから、ヒロコも思い切り歌うんだよ。ステージの上で」
俺「それって、楽しそうだろ?」

ヒロコ「ほんとうに? あたし歌ってもいいの?」
ヒロコの顔に、笑顔が訪れた。

15:1 ◆od.mCbJyhw: 2016/12/31(土) 19:10:03.70 ID:oVMLduBOo.net
俺「もちろんだよ。俺と一緒に歌おう」
俺「ギター弾きながらだと難しいと思うけど、歌いたいとこだけでいい」

そう言うと、「あたし、頑張るね!」と両手を元気に振り回した。
その表情は嬉々として、まるで夏休み前の小学生みたいだった。
そんな無邪気な顔が、青色の鮮やかな浴衣にぴったりだった。

期待とワクワクと、ほんの少しの緊張。
そんなものが入り混じっていたんだと思う。

16:1 ◆od.mCbJyhw: 2016/12/31(土) 22:11:02.03 ID:oVMLduBOo.net
スタッフ「リハーサルはないので、直前に簡単に調整を行います」
スタッフ「7時にはステージが始まりますので、出番は多分7時半過ぎくらいかと思います」

その後、俺たちは運営テントを後にし、広場の隅のベンチに腰掛けた。
広場を囲うように、周辺には無数の出店があり、
頭上にはいくつもの提灯が揺れていた。

日はすっかり落ち、それらの賑やかな灯りでお寺の中は彩られていた。

17:1 ◆od.mCbJyhw: 2016/12/31(土) 22:13:02.62 ID:oVMLduBOo.net
暗い世界に、楽しげな灯りがいくつも揺れている。
どこからともなく、子どものはしゃぐ声が聞こえた。
まさしく、夏祭りが始まったんだな、と実感した。

ヒロコは出店を見てくると言って、一人で入口通りの方に行ってしまった。
ベンチには、俺と吉谷の二人だけが座っていた。

吉谷「なあ、一ついいか」
俺「なんだ?」

18:1 ◆od.mCbJyhw: 2016/12/31(土) 22:21:27.56 ID:oVMLduBOo.net
吉谷「渚のこと、黙ってて悪かったな」
「ああ……」と中途半端なニュアンスで返事をしてしまう。

吉谷「隠してるとか、そんなつもりじゃなかった」
吉谷「でも、俺も好きで……どうしようもなくなって」
吉谷「もっと早く、勇気を持って言えばよかった。ごめん」

通り過ぎる人の笑い声とか、出店で焼きそばを焼く景気の良い音とか、
なんだか色んな音が聞こえた気がした。

19:1 ◆od.mCbJyhw: 2016/12/31(土) 22:27:20.18 ID:oVMLduBOo.net
俺「別に、俺も怒ってるとかじゃない。吉谷がそう言ってくれてよかった」
俺「これで、きっぱり諦めがつくし。俺も次へ踏み出すだけだよ」

吉谷「…そうか」

しばらく会話が途切れて黙っていると、ヒロコがはしゃいだ様子で戻ってきた。
傍目から見ても、浮かれているのがすぐに分かる。
嬉しくて仕方ないのか、その表情は屈託のない笑顔だ。

20:1 ◆od.mCbJyhw: 2016/12/31(土) 22:29:16.52 ID:oVMLduBOo.net
ヒロコ「ねえねえ!すごいよ! なんか色々あった!」
落ち着かない様子で、通りの方を指差す。

俺「まあ、お祭りだからねぇ」
ヒロコ「すごいねすごいね!」

ヒロコの楽しさが伝わってきて、こっちまで笑顔になってしまう。

俺「何か買ってくればよかったのにww」
ヒロコは唇を噛み、首を横に振った。
ヒロコ「お金ないし、我慢だよ」

21:1 ◆od.mCbJyhw: 2016/12/31(土) 22:30:02.69 ID:oVMLduBOo.net
吉谷が、小声で(行って来い)と俺の背中を叩いた。
「ええ?」と戸惑っていると、(いいから)と釘をさされた。

俺「ヒロコ、おごってやるから一緒に行こうぜ」
ヒロコ「え、いいの?」
ヒロコはそう言うと、吉谷の方を見た。

吉谷「俺はここにいるから。二人で見てきな」