612 :本当にあった怖い名無し:2013/09/23(月) 03:44:06.53 ID:4ccit6h+0
Kの夢に異変が起きたのは、Kから夢の話を聞くようになって一ヶ月近く経ってからだった。
奴はその頃、街中を走る夢を何度か見ていて、最初に聞いた時はその延長だと思ったよ。
K「昨夜は線路の横を走った」
H「昨夜も?」
K「そう、昨夜も。二夜連続!」
俺「すげえ!連夜は初めてだな」
Kは二晩続けて「線路の横を走る」夢を見ていた。
街中を横断する線路で、上下二本の線路の両側は細い道路を挟んで住宅地になっているらしい。
その線路横の細い道路を自転車で走る夢だった。
二晩の夢の線路は続いていて、Kは線路伝いに「どこか」へ向かっている途中だと言う。
その時のKは「ようやく目的地が見えてきた気がする」と、現実の話でもないのにやけに張り切っていた。
それから一週間くらい、俺は課題だバイトだと忙しくてKともHとも話す機会がなかった。
大学で久しぶりにHに会ったら、Kの様子がおかしいと言う。
講義を欠席してサークルにも来なくなり、電話で遊びに誘っても生返事。
新しい夢について尋ねても「うーん、まぁそれなりに」としか言わなかったらしい。
後で考えると本当に直感だったんだが、俺はHからKのことを聞いたその時、ものすごく嫌な予感がした。
617 :本当にあった怖い名無し:2013/09/23(月) 05:56:40.31 ID:4ccit6h+0
(すいません。落ちてました。なのであまり進んでません。眠い)
「とにかくKに会おう」ということになり、電話して居場所を尋ねたら友達の家にいると言う。
外出したくないと言うKを説得して、Kの居場所から一番近かったファミレスに呼び出した。
俺とHは先にそこへ行ってKが来るのを待ってたんだけど、店に入ってきた奴を見て
俺は自分の直感が正しかったことがわかった。
Kは異様なくらいやつれていた。
目の下にすごい隈を作って痩せて、ろくに寝ても食べてもいないようだった。
俺とHはしぶるKを一生懸命説得して、この一週間に何があったのか話すようにうながした。
Kは前置きに「お前らに話をすると本当になりそうで怖い」と何度も繰り返しながら、
ぽつぽつと話した。それはやっぱり、例の夢の話だった。
Kが二晩続けて線路横を走る夢を見た後のこと。
二日間は夢を見なかったらしい。
ところが次の日から、夢は毎晩やってきてKの睡眠を脅かした。
その日。自転車で線路横を走る。前方には踏み切りが見えてくる。
次の日。踏み切り前で電車が通り過ぎるのを待っている。自転車にまたがって、一番前で。
次の日。自転車で踏み切りを渡る。何度も何度も繰り返し渡る。
次の日。どこかの路地で自転車を降りて、踏み切りへ歩いていく。
次の日。踏み切りを歩いて渡る途中、線路の真ん中で立ち止まる。
次の日。線路の上を歩いている。踏み切りを後にして。線路をまっすぐ。