170:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2016/07/21(木) 21:47:13.93ID:fLRKoG/Y.net
*
「ユメミヤはいるの!」
俺の話をずっと聞いていてくれた鈴葉が、突然叫んだ。
「いまだって、ほら、ここにちゃんといる」
鈴葉が自分の横を指して言う。
「違う、少なくとも、俺に鈴葉の名前を教えてくれたユメミヤはそいつじゃない。それはお前が創った架空の存在なんだ」
俺はユメミヤに任せろと誓った、そして『俺』自身にも誓った。
だったら、言わなきゃいけない。
171:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2016/07/21(木) 21:48:44.92ID:fLRKoG/Y.net
「そう、だから、君に会わさせてくれたのも、ここにいるユメミヤじゃん」
鈴葉の目からは涙が流れていた。
もうこれで、鈴葉の涙を見るのは何回めだろうか?
もし、涙を流させているのが俺なんだとしたら、それを笑顔に変えるのも俺の役目だ。
172:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2016/07/21(木) 21:49:06.86ID:fLRKoG/Y.net
「いるよ! ユメミヤはいる! いてくれなきゃ……困るの! ユメミヤがいなかったら、だれが……だれが私のそばにいてくれるの? だれが私を……守ってくれるのっ?」
173:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2016/07/21(木) 21:49:27.15ID:fLRKoG/Y.net
「俺がいるだろ」
口が自然に動いていた。
自分でも、自分がこんなこと言うなんて信じられなかったけど、それでも、これが俺の本心だった。
174:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2016/07/21(木) 21:50:05.35ID:fLRKoG/Y.net
「俺がいる。俺がそばにいる。俺が……楢崎 恭也が四宮 鈴葉を守る。鈴葉にもユメミヤにも俺はそう誓ったんだ。ずっとそばにいる。絶対に守る。……それじゃあだめか?」
175:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2016/07/21(木) 21:50:25.08ID:fLRKoG/Y.net
「なんなの……なんで……そんなの、だめなわけないじゃん、……ずるいよ、かっこよすぎるよ」
176:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2016/07/21(木) 21:50:40.52ID:fLRKoG/Y.net
鈴葉はまだ泣いていたけれど、泣きながらもそう言って笑ってくれた。
俺はそれがどうしようもなく嬉しかった。
177:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2016/07/21(木) 21:51:13.13ID:fLRKoG/Y.net
*
「でもさ、どうしてここがわかったの?」
鈴葉が不思議そうな顔をしている。
「鈴葉のことが好きだから」
「何それ」
「ごめん、嘘」
「嘘なの?」
「好きなのは嘘じゃないよ」
嘘なはずがない。
178:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2016/07/21(木) 21:52:35.53ID:fLRKoG/Y.net
「ただ、夢の中で行った場所はほとんど知らない場所だったけど、ここだけは知ってるなと思って。それって鈴葉が本当は現実に戻りたがってるってことだろ? だからここにいると思った」
「ふーん、かっこいいじゃん」
「まあ、ホントは他にアテがなかっただけだけどな」
「何それ。恭也ってそういうところあるよね。やっぱりずるい」
そう言いながらも鈴葉は笑っていた。
179:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2016/07/21(木) 21:52:57.53ID:fLRKoG/Y.net
「それでさ、もう一回聞きたいんだけど」
「何を?」
「わかるでしょ」
わかる、確かにわかるけど、
「恥ずかしいから、やだ」
180:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2016/07/21(木) 21:53:17.61ID:fLRKoG/Y.net
「えー、ケチ。なんだよ、もー」
鈴葉はそういうと、波打ち際まで走っていった。
「風邪ひくぞ」
海の中に入っていった鈴葉に声をかける。
「そしたらそばにいて看病してくれるんでしょ?だからいいの。 恭也もきなよ」
そう言うと、鈴葉は俺の手を引いて海に入った。
なんか、前にもこんなことがあった気がするな。ただ、その時と違うのは、
181:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2016/07/21(木) 21:53:37.95ID:fLRKoG/Y.net
「寒っ」
「あたりまえじゃん、冬なんだから」
叫んだ俺に、笑いながら鈴葉が言った。
鈴葉がそう言っているのがおかしくて、俺も笑った。
182:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2016/07/21(木) 21:53:56.48ID:fLRKoG/Y.net
そうだ、冬は寒いし、休みは少ないし、田舎は退屈だけど、それでも……それでも鈴葉がいてくれるならそれでいい。
それだけで、この世界は夢のセカイよりもずっと輝いて見える。
183:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2016/07/21(木) 21:54:18.37ID:fLRKoG/Y.net
そんな世界でなら恥ずかしいのもしょうがないか。
俺は覚悟を決めて、名前を呼んだ。
あの時と同じように、だけど、あの時とは違う世界で。
184:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2016/07/21(木) 21:54:37.35ID:fLRKoG/Y.net
「なあ、鈴葉」
「なに?」
鈴葉がふりかえる。
それを見て俺は確信した。
やっぱり俺は、どんな世界でも、どんな時でも鈴葉が……
185:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2016/07/21(木) 21:54:55.15ID:fLRKoG/Y.net
「好きだ」
「うん、私も。大好き」
186:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2016/07/21(木) 21:57:37.24ID:fLRKoG/Y.net
これでおしまいです
最後まで読んでくださった方はありがとうございました
188:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2016/07/22(金) 00:27:45.51ID:XBn4kpYW.net
やっぱこういう空想的な作品は見てて面白いな
けどユメミヤの核心に迫ってるとこが少し読み憎かったかな
次の作品が完成したらスレ建ててくれたら嬉しい
190:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2016/07/22(金) 02:58:11.35ID:+86dbK0D.net
面白かった
191:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2016/07/22(金) 03:25:43.54ID:ClRhP85x.net
海でのシーンが最近みた映画に似てたよ
面白かった。また書いてね