夢で出会った子に恋をした人間の末路・・・

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77:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2016/07/21(木) 20:51:04.47ID:H4YwPAh0.net
「あ、でも冬にはあれがあるじゃん、ほら、雪。どっちかって言うと青春っていうよりはロマンスって感じだけどさ」
「あー、いいね、雪」
スズハのこの言葉に俺はなんとなくこれから起こることを察した。
それは見事に当たり、さっきまでの暑さはどこへやら、景色は一面、銀世界におちた。

78:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2016/07/21(木) 20:51:26.80ID:H4YwPAh0.net
「おー、きれいきれい」
遠くをながめながらスズハが続けた。
「あ、そうだ! 線香花火が好きって言ってたけどさ、あっちも好きでしょ? そろそろフィナーレいっちゃおうか」
「あっち?」
俺はこれ以上驚かさせられるんだろうか?
その答えはスズハが言う前に鳴った。

79:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2016/07/21(木) 20:51:44.71ID:H4YwPAh0.net
――ヒュゥゥゥ、――ドォォォーン
けたたましい轟音とともに、雪空に花が咲いた。

80:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2016/07/21(木) 20:52:18.99ID:H4YwPAh0.net
「おー、やっぱ打ち上げも悪くないね。」
「もう無茶苦茶だな」
無茶苦茶もここまでくると笑えてくる。
「いいじゃん、楽しいんだからさ」
「そうだな」
もう、無駄に考えるのはやめることにした。
せっかくだから楽しまなきゃ損だろ?
うん、スズハの言うとおり楽しいからいいんだ。

81:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2016/07/21(木) 20:52:38.92ID:H4YwPAh0.net
そこからは、もうただ笑って、楽しんで、それは夢のような時間だった。

82:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2016/07/21(木) 20:53:16.95ID:H4YwPAh0.net

目を開けると、写り込んできたのはいつもの天井だった。
「スズ……ハ?」
無意識に口に出していた。
夢はいつだって突然覚める。
スズハは……いない。

84:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2016/07/21(木) 20:53:42.00ID:H4YwPAh0.net
さっきまでずっと一緒にいたのに、急に一人の現実にもどされるのは、なかなかきついものがあった。
おかしいよな、夢なのに、俺はいつの間にかスズハがいるのが当たり前だと思っていた。

85:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2016/07/21(木) 20:54:25.19ID:H4YwPAh0.net
胸に引っかかってたのはこれだったんだ。
スズハはここにはいない。
いや、どこにだって……いない。
この世界でいくら探しても、どこにもいないんだ。

86:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2016/07/21(木) 20:55:01.51ID:H4YwPAh0.net

夢は所詮夢でしかない。
そんなことはわかってるよ、でも、俺はスズハがいない現実を受けれることができなかった。
夢に縋るしかなかった。

俺は毎日夢の中でスズハと会った。
夜、夢を見るために、昼間、現実を生きた。
だってしかたないだろ、俺の居場所は夢の中にしかないんだ。


87:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2016/07/21(木) 20:55:23.05ID:H4YwPAh0.net

「おはよ、今日は起きるの早いね。えらいえらい」
朝、起きるとスズハが部屋にいた。
「まあ、たまにはな。ちょっと下で待っててよ、準備するから」
「準備? なんの?」
「なんのって、学校」
学校に部屋着のまま行くわけにはいかないだろ。
「何言ってんの、今日月曜日だよ、学校は休みじゃん。土日が終わってせっかくの休みなのに、学校行くの?」

88:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2016/07/21(木) 20:55:57.54ID:H4YwPAh0.net
「あれ、今日月曜か、完全に日曜だと思ってた。じゃあ休みじゃん」
でも、学校だと思ってたのに休みだと、なんか得した気分だな。
「もー、しっかりしてよ。で、今日はどこ行く?」
「海とかどう? この前はプールだったし。せっかくの冬だから海に行きたくない?」
「いいね! じゃあ、いこ!」

89:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2016/07/21(木) 20:56:22.23ID:H4YwPAh0.net
扉を開けて海に着くと、俺たちは夕暮れまで遊んだ。
スズハといると、世の中のもの全部が楽しくなる。
やっぱり俺はスズハが……

90:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2016/07/21(木) 20:56:40.53ID:H4YwPAh0.net

実は最近ずっと考えてたことがあるんだ。
あと一歩がずっと踏み出せなかったんだけど、今、隣に座るスズハを見て決心した。
子供の頃からずっと思ってたこと、俺にとってスズハはただの幼馴染じゃなくて……

91:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2016/07/21(木) 20:57:07.41ID:H4YwPAh0.net
「綺麗だね、夕日」
スズハが海を見つめながら、そう言った。
俺にとってその一言一言が、些細な手の動きやちょっとしたまばたきですら、愛おしい。

92:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2016/07/21(木) 20:58:21.16ID:H4YwPAh0.net
「なあ、スズハ」
「なに?」
その言葉はとても自然に口から出た。
ずっと言いたくて、でも言えなくて、そんな言葉も最後はあっさり。

「好きだ」

うまく言えたかな? 大丈夫かな? 引かれたらどうしよう? 失敗したら?
言ったあとはすぐに、そんな不安が頭の中を支配した。

93:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2016/07/21(木) 20:59:01.68ID:H4YwPAh0.net
「うん、私も」
だから、俺はスズハの答えが一瞬聞こえなかった。
そうして聞き返してしまった。

94:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2016/07/21(木) 20:59:21.00ID:H4YwPAh0.net
「だから、私も好きだって」
「ホント?」
「ホントだって、ずっと好きだった、大好きだよキョウヤのこと」

95:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2016/07/21(木) 20:59:40.07ID:H4YwPAh0.net
それからのことはあんまり覚えてない。
すごい嬉しくて、すごい喜んで、これからが楽しみで、そんな感じで気づいたらスズハを家まで送った帰り道だった。

96:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2016/07/21(木) 21:00:32.99ID:H4YwPAh0.net
その時も俺の頭の中にはスズハのことしかなかったよ。
もう、本当にそれくらい嬉しかったんだ。

97:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2016/07/21(木) 21:01:44.46ID:H4YwPAh0.net
「ナラサキ!」
突然聞こえたその声に俺は驚いた。
実際、暗闇で急に声をかけられるのは怖いんだよ。

98:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2016/07/21(木) 21:02:04.91ID:H4YwPAh0.net
目の前の人影を見ようと目をこらすと、よく知った顔がそこにあった。
「イソザキ先生?」
「ああ、どうしたんだこんな時間に」
いつも教室で見る先生とは違う何かおかしな雰囲気が、目の前の先生からは感じられた。
それを少し不審に思いながらも、俺は返事をする。

99:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2016/07/21(木) 21:02:36.11ID:H4YwPAh0.net
「いや、ちょっと遊びに行った帰りで」
「もう、補導される時間だぞ」
「ごめんなさい、もうすぐ家なんで、見逃してもらえると……」
イソザキ先生はそんなに厳しい先生でもないし、たぶん大丈夫だろう。

100:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2016/07/21(木) 21:02:58.33ID:H4YwPAh0.net
「そういうわけにもいかないな、お前には思い出してもらう必要がある」
先生の口から出た言葉が何を意味しているのかわからなかった。
「何言ってるんですか?」
「お前も本当はわかってるんだろう? このまま忘れたままじゃいけないんだ」
「だから、何の話を――」
「ユメミヤの話だよ」

101:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2016/07/21(木) 21:03:41.42ID:H4YwPAh0.net
「そういうわけにもいかないな、お前には思い出してもらう必要がある」
先生の口から出た言葉が何を意味しているのかわからなかった。
「何言ってるんですか?」
「お前も本当はわかってるんだろう? このまま忘れたままじゃいけないんだ」
「だから、何の話を――」
「ユメミヤの話だよ」

102:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2016/07/21(木) 21:04:13.90ID:H4YwPAh0.net
ユメミヤ、その言葉を聞いた瞬間、俺の脳裏にはいろいろなことが思い出された。
だけど、俺はそれに鍵をかける、否定する、拒絶する。
俺は絶対に認めない。

103:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2016/07/21(木) 21:05:25.71ID:H4YwPAh0.net
「なんですかそれ?」
だから俺は聞く、だってそんな奴のこと聞いたことがない。
「わかってるだろ、お前は昨日ユメミヤに会って――」
「だから何言ってるんですか? 俺はそんな奴のこと知らない、会ったことも聞いたこともない」

104:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2016/07/21(木) 21:06:09.48ID:H4YwPAh0.net
「嘘だ、お前は知っている。知らないわけがない。だってそうだろ? お前は昨日ユメミヤに会って夢と現実を交換した。夢を買う代わりに現実を売ったんだ。思い出すんだ、そして受け入れろ」
そう言って先生は、俺の頭に手を伸ばしてかざした。

106:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2016/07/21(木) 21:08:27.47ID:H4YwPAh0.net

「……お呼びですか?」
ユメミヤはいつものように、いつの間にかそこにいた。
「別に呼んでなんか――」
「……いや、呼びましたね。……あなたは心のどこかで私を呼んだ。……だから私がここにいるんです」

107:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2016/07/21(木) 21:08:58.43ID:H4YwPAh0.net
「……それで、御用は? ……まあ、聞かなくても、予想はつきますが」
スズハは現実にはいない。
それを受け入れられない俺が、自分でも気づかないうちにユメミヤを呼んだっていうのか?