ダメだよ、といいかけるより先にA君が言う。
「あれ、少し前に先生の為に買ったんです」
お年玉で情けないですけどね、とA君が笑う横でそういえば、と思い出す。
あれ、新品だったような…
「先生に教えてもらい始めて、成績伸びたんです。父にも誉められました」
「あれだけ努力できるんだから私の力なんて微量すぎるよ」
「あれだけ努力してたのに今まで分からなかったんです、先生のお力でしょう?感謝して当然です!」
うっ、と息詰まる。
この子は人を丸め込む天才なんじゃないか。
78: ◆bN5NHW/.U6 2012/01/14(土) 17:06:19.55 ID:XJZmyDoz0
その日は10時からバイトがあったので、朝食に箸をつけないうちに帰宅の準備をした。
おじさまにもお礼を言いたかったが、噂通りおじさまの朝風呂は長い。
仕方ないので置き手紙をして家を出た。
駅まで送ってくれたA君は、ずっと「如何に朝食が美味しかったか」を語ってくれたので、気恥ずかしかった。
電車に乗って、戴いたアロマの箱を見つめる。
そういえ、10万円頂いても、こんな小洒落たものを買う発想に至らなかった。というか、相変わらず余裕はない。
自分の世界に全く違う色が加わっていく。
それが斬新で嬉しかった。
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