「――そうですか……ひまわりちゃんが……」
「はい……」
仕事の休憩中、オラは黒磯さんに、自分の胸の内を打ち明けた。
黒磯さんは、嫌な顔一つせず、オラの愚痴のような話に付き合ってくれた。
「……私自身、そういう恋愛沙汰は疎くて……何とも言えないところはありますね。
ただ、それは本当に、ひまわりちゃんが望んだことなのか――それが気になります」
「……どういうことですか?」
「………」
黒磯さんは、何かを考える。目はどこかを向き、まるで言葉を防ぐかのように、手を口に添えていた。
「……それは、今はまだ分かりません。
それよりも、私としては、別のことが気になりますね」
「別のこと?」
「……あなたのことですよ、しんのすけくん」
「お、オラ?」
「……人は、何か複数の選択肢で悩む時、答えは、既に決まってるものなんですよ。悩むのは、その確認作業なんです。
これで本当にいいのか分からない。そうしたいが、それが正しいのか分からない。
だからこそ、人は誰かに救いを求め、教えを乞うのです。そして、自分の判断の正しさを検証するのです」
「………」
「……さて、しんのすけくんは、どちらに決まっているのですか?もちろん、その答えは、しんのすけくんにしか分かりません。
ただ、私の知るあなたなら、きっと後は足を踏み出すだけなんです。何しろあなたは、お嬢様が認めた人物なのですから」
「……黒磯さん……」
話し終えた黒磯さんは、微笑みだけを残して立ち去って行った。
彼の話は、オラの体深くに響いていた。
……本当は決まっているはずの、オラの気持ち……
でも今のオラには、いくら考えても分からなかった。
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