「――しんのすけさん。一つ、言っておきますね」
部屋の入り口を開けたところで、オラの方を振り返る。
そして、不敵な笑みを浮かべた。
「――私も父も、かなり“しつこい”ですから。あしからず……」
そう言い残したあいちゃんは、部屋を出ていった。
残されたオラは、ただ愕然とするしかなかった。
それからのあいちゃんの押しは凄まじかった。
一つ、開き直ったのかもしれない。
弁当作りに出張という名のドライブ……一切引くことのないその様は、さしずめ防御を捨てた突撃兵といったところか。
家に帰れば、ひまわりからは結婚を勧められる毎日。
「はぁ……」
思わず、ため息が出てしまった。
「……どうしたんですか、しんのすけくん。ため息なんて吐いて……」
車を運転する黒磯さんは、視線を前に向けたまま聞いてきた。
「い、いえ。ちょっと最近、疲れてまして……」
「……お嬢様、ですか?」
「ハハハ……」
“はいそうです。”……などと返すわけにもいかず、とりあえず失笑で茶を濁す。
すると黒磯さんは、ふっと笑みを浮かべた。
「……少しばかり、大目に見てあげてください。お嬢様は、ご自身でも接し方があまり分からないのです」
「……小さい時には、ここまでなかったんですよ。ちょっと、びっくりしちゃいまして……」
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