震災で両親を亡くした結果・・・

波が引いて急に我に帰ったというか正気に戻って「お父さんとお母さんはどうしたんだろう…？」って思った。高台の方には公衆電話なかったし。当時携帯も持ってなかった。友達の親に頼んで電話かけてもらったけどその時はいくらかけても繋がらなかった。電話に出ないとかじゃなくて回線が混んでたのね。

まあでも自分の家は海から遠いしなーとか思った。なんか今でも謎なんだけど本当にそのくらいの軽い気持ちだった。目の前の光景を読み込むのに労力を使ってるから他の何もわかんない感じ。とりあえず家に帰ろうと思ってはいたんだけどさっきまでいた友達の家は流されちゃったし道も大渋滞だし、てか瓦礫が沢山あって歩けるような感じじゃなかった。学校は2階まで波が来て浸かったらしい。だから学校に行こうとは一切思わなかった。

その日は何故か地震が来てから急激に冷え込んで雪まで降った。上着も持たずにきたから寒かったなあ。制服は濡れたから中学のジャージを着てた気がする。
逃げるところがなくなった自分たちは海から少し離れた小学校へ避難した。地元の人間は、津波が来たらとりあえずその小学校か、もう少し離れた小学校の体育館に避難するって大体予想がつく。だからどちらかにいれば親が迎えに来るだろうって思ってたんだ。

俺も目の前の防風林から黒い壁のような津波が迫ってきた時は死んだと思った
田んぼに浮いてた近所の人とか流されてひっくり返った車から出てた手は今でも思い出す

この辺話すと長くなるから結果を先に言うと、お父さんもお母さんもいつまでも迎えには来なかった。
遺体はまだ見つかってない。どこで流されたのかもわからないし、何故家にいなかったのかもわからない。
とにかく何もわからずいきなり1人になってしまった。

その日のうちにわかったわけじゃなくて、死んだこと(遺体が見つからないこと)がわかるまで少し時間があった。その間ひたすら避難所でボーッとしていた。深く考えることを脳味噌が遮断してるみたいだった。なんだろう、文字は読めるけど理解ができないみたいな感じ。支援物資のランチパックをひたすら食ってた。今でもランチパックを見ると吐き気がする。あの時のこと思い出して吐きそうになる。
そのあと中学校の体育館に行って、大量に並んだ死体の中から両親を探した。本当に不思議なんだけど何にも感情がわかなかったんだ。可哀想とか痛そうとか辛いとか。ただ無心で知らない大人に連れられて両親を探した。中には、もうぐちゃぐちゃになってゾンビみたいになってるのもあった。「困難じゃお父さんかどうかなんてわかるわけないよなあ」とか思ったりした。

震災から数日経っても親と連絡が取れないし遺体も見つからない。安否が確認できなかった。
担任の先生が車で家まで連れてってくれた。家はめちゃくちゃだった。当たり前だけど誰もいなかった。自分と両親の3人暮らしだからね。とりあえず先生に言われた通り印鑑とか通帳とか、連絡先が書いてあるノートとかあと服とか必要なもの一式持って学校に戻った。もうここまで見つからないとしたら完全に死んだんだろうなって自分ではわかってたけど、周りの人間誰もそうは言わなかったな。気遣ってくれたんだろうね。

色々先生が頑張ってくれて、家から持ってきた親類の連絡先に片っ端から連絡をとって避難する家を見つけてくれた。自分のおじいちゃんの兄弟の息子、大叔父さんっていうの？が、関東の方にいて、面倒見てくれると。(面倒だからこれからおじさんって呼ぶね。実際そう呼んでる)
後々知ったけど学校やら保険やらいろんな手続きは全部そのおじさん夫婦がやってくれたらしい。本当、感謝しかない。

めちゃくちゃ道も混んでるし公共交通機関もほぼ止まってるしガソリンもどこも売ってないのにわざわざ車で迎えに来てくれた。法事かなんかで2～3回しか見たことないから初めはめちゃくちゃ会うのが嫌だった。知らない人の家にこれから住むのか…みたいに考えてた気がする。実際迎えに来てくれて最初に顔合わせた瞬間おばさんにすげー勢いで泣きながら抱きしめてくれた。なんでこの人よく知らない子どものこと抱きしめられるんだろーとかボーッと考えてた。今思うと感情がすでに死んでたんだよね、何をされても何を言われてもなんの感情も抱かなくなってた。例えば瓦礫の掃除してて遺体が発見されても、ああ、またか。とか思ってた。

まずはおじさんとおばさんとが実家の片付けをしてくれた。冷蔵庫の中身全部捨てたり、割れたガラスを保護したり色々してくれた。食べれそうなものは関東の家に持って帰ったり。(これに関しては本当に申し訳なさそうな顔をするので「全然いいよみんなで食べてよ」って何回も言った)
こうやってやることが目の前にあるうちはまだ良かったな。気が紛れたというか。この時何もやることがなかったら多分自殺してた。本気でそう思う

いろいろ片付けをしたりして、おじさんの家に行くことに。震災から1週間～10日くらい経ってたかな。
関東のおじさんの家についてからは本当に毎日クソつまんなかった。テレビは津波の映像だの原発関連のニュースだので最悪だったしポポポポーンとか見すぎて聞くだけで涙が出たしテレビは見れなくなった。土地勘もないから散歩にも行けないし何しろ他人の家にいきなり住むってなって居心地の悪さは半端じゃなかった。きてから3日間くらいうんこできなかった。

見てるよ
読んでると先生とか自分も大変だろうに
人のために必死になってくれてて人間って凄いと思う

そんな自分のことを見て心配したおじさんがもう、使わない古いパソコンをくれた。おじさんは仕事でパソコンをよく使う人だから、設定とかもやってくれて、自由に使っていいよと言ってくれた。
元々ニコニコ動画とか見るの好きだったしボカロとかも好きだったので、その日からはパソコンでネットを徘徊するのが日常になった。おじさんおばさんは自分が塞ぎ込んでることは心配していたけど、下手に声をかけたり外に連れ出したりせずにそっと見守ってくれていた。今思うもそれが一番当時の自分にとって心地よかった。

体験者の話は生々しいな
映像みても実感わかないしな