264:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2017/07/02(日) 04:30:56.58ID:rBxtmIDi.net
彼女野過呼吸がちょうどぴたりと収まった頃、彼女の父親の車のヘッドライトが僕達を照らした。
いつも出張で居なかった父親とちゃんと話をしたのはこれが初めてのタイミングだった。
とても線の細い、頼りのない父親に見えた。
父親は僕にひとしきりお礼と謝罪を繰り返しながらひとまず家に戻りましょうと提案した。
266:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2017/07/02(日) 04:36:10.49ID:rBxtmIDi.net
先に僕がシャワーを借り今朝僕の母が用意したお泊り用の服に着替えた。
といってもそれも雨でぐっしょり濡れていたんだけど、彼女の父親の服は僕には小さすぎたからね。
お風呂場から急いで戻るとリビングでは家族会議が行われていた。
ざっと汚れだけを落としてパジャマに着替えさせられた彼女はソファに仰向けで寝かされていた。ハッキリと目を見開いて天井の何処か一点を見つめたいた。一種の興奮状態からまだ冷めていなかったのかもしれない。
仰向けの彼女とソファに向けて置いた食卓用の高い背もたれのイスに座った家族の風景がシュールだった。
棺桶に入れられた死体でも眺めてるみたいな構図だなと思ったんだ。
彼女に対して本当にごめんなさいと謝る母親の目が死んだ魚の目のようだったことが印象的だった。
ウィノナがお風呂に半ば無理やり入れられた後、ウィノナの家族とはいろいろな話をした。
268:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2017/07/02(日) 04:45:38.19ID:rBxtmIDi.net
その殆どが謝罪だった。
僕は自分で言うのもなんだけど結構温厚なタイプなんだよね。
勿論彼女の家族たちも僕が怒るところなんて見たことがなかったんだ。
話が僕に対することばかりで、娘の心配をしていないように思えてついにキレてしまったんだ。
「いい加減にしろよ。ウィノナは明日にでも死ぬかも知れないんだ。少なくとも死ぬほど辛い思いをして、死ぬ気で助けを求めてる。警察に連絡するでもなんでもいいからすぐにこの状況をなんとかしたらどうなんですか。」
徐々に言い過ぎたトーンダウンしてと思って最後に
「…すいません」
と付け加えた。
父親は僕の剣幕に気圧されたのか同意をしたが母親はまだ世間体やらなにやらを気にしている様子だった。
妹は頼りない家族で本当にごめんなさいと僕に耳打ちをして来た。
僕は妹に何かあったら連絡をくれとメールアドレスを手書きで書いて渡しておいた。
お風呂からウィノナが上がってきた頃には午前2時を過ぎていた。
269:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2017/07/02(日) 04:53:00.06ID:rBxtmIDi.net
彼女は持ち物と靴は律儀に堤防に置きっぱなしだったらしく水没して使えなくなったものは無かった。飛び降り自殺も靴とか置いてあるよね。あれなんでなんだろう。
あとで回収して分かったんだけどカッターナイフなんかも持ち出していた。
本当に死にたかったのか、助けを求めていたのかは分からない。多分本人もわからかい。
でも意志の有無はともあれ実際夜中の海に着衣で入って行ったら多分見つかんなかったら死ぬ。それは自分が目で見たからわかる。
言い方は変かもしれないけど、不幸なことに適切な自殺方法の一つではあったんだ。
そういう意味ではボロボロになりながらなんとか彼女を見つけた当時の自分を褒めてやりたい。
僕も携帯だけは浜に放り投げていたので水没は免れていた。
270:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2017/07/02(日) 05:01:36.61ID:rBxtmIDi.net
ウィノナはなかなか浴室から出てこなかった。妹に連れ戻してもらう。
ウィノナと僕、家族は会話を試みたが彼女は上の空でただごめんなさいとだけ繰り返した。
このごめんなさいが何に対するごめんなさいなのかは全くわからなかった。
心配をかけてごめんなさい。
心が弱くてごめんなさい。
死ねなくてごめんなさい。
生まれてきてごめんなさい。
“ごめんなさい”にどんな言葉をつけても彼女の心情そのもののように思えたんだ。
きっとその全ての“ごめんなさい”が混在してそれしか言えなかっただろう。
取り敢えず妹とウィノナは2階の妹の部屋で、僕はウィノナのベッドを借りることにした。
睡眠不足と体力の消耗で体はもう動かないくらいだったがいくら目を瞑っても眠ることはできなかった。色々なことがありすぎた。
1階からはウィノナの両親が口論しているのがはっきりと聞こえたいた。
急いでシャワーを浴びたからかまだ僕からはほんのりと磯の臭いがしていた。
275:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2017/07/02(日) 08:54:05.90ID:ca2YtaOz.net
全12話で例えると今は何話目?
282:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2017/07/02(日) 10:56:19.92ID:2dB0xtYB.net
>>275
9までは来た気がする!!
273:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2017/07/02(日) 07:43:35.04ID:1KPNi2Xb.net
期待してます
286:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2017/07/02(日) 11:07:07.21ID:rBxtmIDi.net
土曜日
結局眠ることもできないまま朝を迎えた。
隣の妹の部屋をドアの隙間から確認すると二人はぐっすり寝息を立てていた。本音としてはちょっと拍子抜けだった。
まぁそれに越したことはないんだけどね。
女性って多分男よりも打たれ強いよね。
僕は居心地の悪さを感じて置き手紙を書いて家をあとにした。特に彼女の母親は昨日の父親との口論ですごく怒ってるようだったからね。
警察に行くことも考えたけどこれ以上勝手な行動をすると彼女の母親も敵に回しそうだったので、素直にバスに乗った。
海水でシワシワになった千円札が2枚
運転手に怪訝な顔をされながら両替をしてバスを降りた。
自宅の玄関がとてもありがたいようなものに思えた。
僕の母親は朝から待っていたようだ。朝食が用意してあった。
僕は完全に緊張の糸が切れたのだろう。トーストをかじりながらボロボロと涙を流していた。
母親は何も訊いてはこなかった。塩水まみれの制服を見てもなお、まだパン要る?なんてことを聞いてくる。
僕は母がこんなにも優しい人間だったことを今まで知らなかった。
288:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2017/07/02(日) 11:15:32.16ID:rBxtmIDi.net
自室に戻ってしたことと言えば、もちろんオ●ニーだ。もちろんってのも変な話だけど人間は生命の危機を感じると種の保存をする為にフル勃起になるのだ。
眠い時に限って息子が起き始めたり、授業で居眠りしてたらムクムクしてきたりするよね。
極度の疲れを感じていた僕はがっつりオ●ニーをした。馬鹿だよね。
いや、書かないでおこうって思ったんだけどね。あまりにもはっきりと覚えていることだったからね。
3回目をしようとおち●ちんを握りしめたまま寝落ちしたしまった。
夢の世界では悪夢に魘された。
この時見た夢もはっきりと覚えている。
彼女が自分の胸を両手で抉って心臓を僕に差し出したり、耳を勢い良く千切ったり、そんな夢だ。
現実世界では多分おち●ちんを握ったまま、うーうー魘されてたんだろうな。
289:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2017/07/02(日) 11:21:41.85ID:rBxtmIDi.net
僕は夜、ウィノナからの電話で目を覚ました。
「昨日はごめんなさい。」
その後の言葉が出てこないようだった。
後には泣き声と鼻を啜る音しか聞こえてこなかった。
僕は
「大丈夫。絶対に何とかしてやるから、すぐにそこから助け出してやるからもう少しだけ時間をくれないか」
そんなことを言った。
僕にできることなんてほとんど無かったのにとんだビックマウスだ。
本当は会いに行って、抱きしめてそう言ってあげたかった。
ただこれ以上僕の家族に心配をかけて引き止められたらまずい。
父親に殴られることは構わなかったが、騒ぎ立てられては困る。まだ例のメールはしばらくは続くんだ。
また死ぬと言い出さないか、不安な気持ちを抱えたまま今日は電話で我慢することにした。
その後も泣き声が続くばかりだったが結局、僕は2時間ほど泣き声をずっと聴いていた。
290:滝山 ◆7gTe4bH3Yk @\(^o^)/: 2017/07/02(日) 11:26:59.40ID:7klr36F9.net
いちの母ちゃんがすこ
293:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2017/07/02(日) 11:33:05.94ID:rBxtmIDi.net
>>290
ありがとう!!
そうだね。今となっては世界で一番のおかんだと思えるよ。
結構体もでかくてね、まるで男みたいなんだけど本当に優しい人だ。
おかんとのエピソードだけで本当はここまでの内容と同じくらいの長さの話がかけるくらいに、色んなことがあったんだ。
291:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2017/07/02(日) 11:27:55.76ID:rBxtmIDi.net
日曜日
偉そうなことを宣った割に僕は土曜日の反動で日曜日はほとんど寝て過ごした。体が動かなかったんだ。
といっても寝付くとすぐ悪い夢ばかりを見てなかなか深く眠れない。
まるで瞼の裏がスクリーンになったみたいに彼女の死を上映し始める。
僕もそんなに精神的には強いほうじゃなかったんだなって改めて思った。
きっと当の本人よりも死のイメージに怯えていたんじゃないかな。
彼女の妹から、例のメールはまだ続いていると言うことと、彼女たちの母親ももともと結構ヒステリックで妹もたまに困ることがあったこと、父親は見た目通りで母親がヒステリーを起こした時は何も出来ないことを教えてもらった。
僕は明日の月曜日には警察に相談に行けるように何とかならないかと妹に相談した。
妹はうまく交渉してくれたようで、
翌日警察にもう一度相談しに行くこと、その為に両親とも仕事を休ませたことを報告してくれた。
ちなみに妹はまだ中3だったな。
すごく良くできた妹で彼女にも救われた部分は大きかった。
296:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2017/07/02(日) 12:17:25.51ID:2dB0xtYB.net
月曜日
僕は風邪を引いて学校を休んだ。
どうせウィノナも学校には来ないことは分かっていたし無理をする必要は感じなかった。半分ズル休みみたいなもんだったけど、確かに鏡をみると病人の顔つきをしていた。
その日はマンドリルと飯田がお見舞いに来た。おそらく僕の欠席の理由が風邪じゃないと睨んでのことだ。
土日にあった事は伏せておいた。
ウィノナが自殺未遂をしたなんて言えなかった。
でも二人は察してくれたんだね。詮索はしなくて、お前が話したいことを話せよなんて言ってくれたよ。
自室で二人と話しているうちに涙が止まらなくなった。俺もうどうしていいかわかんねぇよなんて言っていきなり泣き出したら普通びっくりするよね。
マンドリルが僕の頭をワシワシ撫でて、また元気になったらパフェでも喰おうぜなんて言う。この時は流石にマンドリルの食欲については何も思わなかったよ。むしろそんな他愛のない話をしてくれたおかげてわ少し現実に返ってきたような気がする。
僕は翌日、学校にいくふりをしてウィノナの家に行くつもりだった。2日前にあったばかりなのにもうだいぶと遠くに行ってしまったような気がしていたから。
二人には何とかうまいこと学校には風邪で引き続き休みと言うことにしておいて欲しいとお願いしたら快くOKをしてくれた。
302:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2017/07/02(日) 13:39:11.30ID:rBxtmIDi.net
火曜日
学校には行かずウィノナ宅へ直行
彼女の両親が仕事に出ていることは確認済みで妹からは鍵の隠し場所を聞いてあった。
勝手に上がりこみ、2階へ上がりウィノナの部屋のドアの前で入るぞとだけ言った。
返事はなかったがそのまま入室した。
303:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2017/07/02(日) 13:41:48.97ID:rBxtmIDi.net
ウィノナはドアに背を向けて勉強机に向かって何か作業をしているように見えた。
そのまま顔を覗き込もうとして隣に立ち、状況を把握した。
僕はすっかりノートに何かを書いていると思っていたが、彼女は自分の左腕を右手で持ったカッターで切り刻んでいた。所謂リストカットだ。
304:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2017/07/02(日) 13:46:22.00ID:rBxtmIDi.net
僕は彼女の行為をやめさせるべくカッターを取り上げた。
嫌がる彼女にビンタをした。
僕は、お前のやっていることを分からせてやると言って彼女と同様に左腕に右手でカッターを突き立てたんだ。
こうして客観視させれば彼女が僕にどれだけ心配と恐怖を与えたのかわかってもらえると思ったんだ。
これは結果的に失敗だった。
リストカットってものはそんなに勢い良くやるもんではないことを知らなかった。
格好つけて思いっきり突き立てたことと、興奮してたこととが相まって割とやばい量の出血があった。
305:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2017/07/02(日) 13:47:10.17ID:rBxtmIDi.net
ここで痛いと言っては格好がつかない。カーペットも血まみれになってきた。
僕はいても立っても居られずカッターナイフを握りしめたまま黙って部屋を去った。
玄関を出てからと言うと緊張が解けたせいか痛みが何倍にも感じられて、半泣き状態で病院に駆け込んだ。
我ながら情けない末路である。
306:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2017/07/02(日) 14:06:35.52ID:rBxtmIDi.net
なんだかんだ緊急で数針縫ってもらった。
ウィノナからの“バカ。どこにいるの?”と連絡があった。なんだ案外元気じゃないか、ちょっとびっくりした。
当時の僕はリストカットが死ぬ為にやる行為じゃないってことを知らなかったんだな。
病院には有無を言わさず自宅に連絡をされ、母親に回収され、状況を根掘り葉掘り聞かれ、こっぴどく叱られながら自宅に戻った。
母は泣いていた。
僕は初めて母親を泣かしてしまったことを激しく悔いながら、目を離した隙を見計らって家を抜け出した。
罪悪感に押しつぶされそうになりながらウィノナに“バカはお前だろ。死ぬのも自分を傷つけるのも俺が許さない。今から行くから待ってろバカ”と馬鹿丸出しのメールを送りつけ、包帯で巻かれた左腕を隠しながらまた彼女の家に向かった。
313:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2017/07/02(日) 16:54:02.47ID:rBxtmIDi.net
母親には“本当にごめんなさい。今晩中には必ず戻るから”とメールをした。
“海で待ってる”との彼女の返事に海の中でないことを願いながら、彼女がフナムシまみれで寝ていた堤防まで到着した。
かなり時間がかかった。自転車は彼女の家に置きっぱなしだったからだ。
それでも彼女は待っていた。
314:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2017/07/02(日) 16:58:59.85ID:rBxtmIDi.net
ウィノナ「痛かった?」
僕は正直に痛かったこと。彼女に死んで欲しくない一心でやったこと。母親にバレたことを話した。
ウィノナ「バカだね。ありがとう。」
少しだけ彼女に笑顔が戻ったような気がして僕は彼女にキスをした。やはり男子高校生だ。あんなに落ち込んでいたのに隙あらばである。
今朝と比較したら彼女はだいぶ落ち着きを取り戻した様子だった。
あとで分かることだが、彼女は躁鬱病の初期症状を発症していた。
この時は恐らく躁状態に近かったのかもしれない。
315:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2017/07/02(日) 17:01:04.72ID:rBxtmIDi.net
その後ウィノナから話を聞くには警察には届け出た模様。
時代としてはこういった事件が丁度増えてきた頃でそういう専門の窓口があったらしい。前回のおっさんは何だったんだ。
僕は彼女にこんなことを話した。
「犯人がわかってしまうこともそれはそれで怖いかもしれない。ただ、今俺が調べた限りではそんなに親しい人ではない可能性が高いように思える。だから、もう覚悟決めよう。あと、恨みはなんの解決も産まない。冷静に解決して行こうな?」
恨みがどうのこうのは飯田の受け売りである。
彼女はただ分かったと頷いた。
僕は母親との約束を守るために彼女とのセ●クスは諦めて自転車をぶっ飛ばして帰った。
316:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2017/07/02(日) 17:10:39.72ID:rBxtmIDi.net
少し顔は怒っているように見えたがそれでめ僕の母親は優しかった。
少し夕食には遅れたが黙って温め直して出してくれた。
その後警察の調査が始まった。
飯田とマンドリルにも手伝ってもらっていたが残念なことに高校生なりの限界があった。
だが調べれば調べるほど、学校にいるとは思えない。ただいたずらに周りの人間のアリバイを増やしていくようだった。
もう少し早くにその限界に気が付けばこんな想いはせずに済んだのだろう。
皆には腕の怪我も心配されたが結局詳しくこの話をしたことは一度もなかった。
ウィノナに届くメールは更にエスカレートをしていった。
317:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2017/07/02(日) 17:20:17.79ID:rBxtmIDi.net
結局、当初一週間程度と目された警察の調査は実際にはその何倍もの時間が費やされた。
この間、ウィノナは一度も登校はしなかった。
それに対する彼女の母親の叱責、鳴り止まないどころかエスカレートする脅迫メール。
一月の間に彼女の人格は破壊されつつあり、何とか自我を保つために僕に依存をするようになった。
3日に1日は大切な彼女から死にたいと連絡が来る生活に僕も精神を蝕まれつつあった。
例えば1通目は大体“もう疲れた”こんな感じだ。僕は“もうしばらく我慢すれば大丈夫だから。”なんて無意味な励ましを返す。
何通かのやり取りすると“助けてくれるって言ったじゃない”と僕を責めるようになり、最後は決まって“死にたい”或いは“あの時死なせてくれたら”そんな内容になった。
そのたびに僕は出動し彼女に会いに行った。
実際に死にたかったのかと言えばそうではないのだろう。寧ろ生きたいからこそ、僕に助けを求めていたのだと思う。
時間が経つに連れてこの“死にたい”の発作間隔は短くなっていった。
何度かは以前の様に実行に移そうとしたこともあった。
318:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2017/07/02(日) 17:24:33.56ID:rBxtmIDi.net
ウィノナの長期休みは校内の全員が知る事実となり、病気ではない“何か”がウィノナに降り掛かったと噂されていた。
それでもバンド活動は続けたかった。高校生のコンテストみたいなのがあって、オリジナル曲で出場した所、結構いい結果が出ていたんだ。
寧ろ、そういう風に何か別のことに打ち込んで忘れたかったのかもしれない。
視聴覚準備室でバンド練習をしていた日曜日、調査が始まり大凡2ヶ月後、漸く事態は進展した。
彼女の妹から電話があった。
319:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2017/07/02(日) 17:25:44.72ID:rBxtmIDi.net
「イチさんですか?ウィノナの妹です。連絡したいことがあって姉の携帯から電話しました。」
若干息切れをしていた。
「実は金曜日に警察から連絡があって、例の件の犯人が母に知らされました。近くにお住いの山本家が契約しているドコモ端末より送信されていることが分かったんです。はい。姉の友人の山本レナさんのご家庭です」
まさにこんな口調だった。
僕は言葉を失った。絶句、この言葉を本来の意味で実感した。
レナちゃんと言えば早々に容疑者リストから消し去っていた人物だったしとてもそんな事をする人にも思えなかったからだ。
「それから…」
妹は続けた。
320:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2017/07/02(日) 17:28:06.90ID:rBxtmIDi.net
「それから、それを今日の朝、父と母から姉に伝えたんです。姉は暴れ出して手がつけられず部屋に隔離してたんですが、今部屋を飛び出して行きました。もし姉がそちらにいれば…」
僕は即座に居ないと、答えてすぐそちらに行くと申し出た。返答は聞かなかった。
すぐに視聴覚準備室を飛び出した僕だったが状況を察した飯田が僕の後ろを走ってきていた。
「平山と石原にはざっとだけ説明しちまった。すまん。取り敢えず俺も行く」
二人は予想通りだと言う反応だったようだ。
何が出来るかは分からなかった。
ただ何か良くないことが起きる予感に衝き動かされていた。
321:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2017/07/02(日) 17:30:22.82ID:rBxtmIDi.net
僕が真っ先に向かったのは彼女の家ではない。
レナちゃんの家だ。
やはり改めて見るとやはり大きな家で玄関の前にちょっとした門がある。
この門の前に不可解なものが置いてあったが近づいてすぐに分かった。
ウィノナの部屋にあったぬいぐるみだ。
部屋の中の一番大きいサイズの口がバッテンのうさぎのぬいぐるみだ。
あとで分かった事だけど、このぬいぐるみはレナちゃんが中学時代にウィノナにプレゼントしたものだった。
首の部分からワタがはみ出してワタが少なくなったからか、耳がしんなりしていた。
無表情なそのうさぎはいささか不気味だった。
322:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2017/07/02(日) 17:32:12.74ID:CSJ+fvEu.net
なんかヤバくなってきたな
324:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2017/07/02(日) 17:35:28.53ID:rBxtmIDi.net
>>322
そうだね。
確かにヤバさみたいなものは感じた。
僕はどちらかといえば彼女が被害者になるより加害者になる方が怖かったな。
加害者になったら、もう好きではいられなくなるかもしれないからね。
323:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2017/07/02(日) 17:33:23.48ID:rBxtmIDi.net
門には私の人生を返してと書かれたルーズリーフが一枚貼り付けられていた。
門の外側についたインターホンは壊されていた。
初めから誰もいなかったのか、あるいは居留守か。
既に警察から山本家にも連絡が行っているだろう。いずれにせよ会えることはないと判断した。
幸いな事に、立派な家が例外なくそうであるように、山本家もセキュリティはしっかりとしている様子では有った。
飯田には最寄りのバス停を中心にして街を探索を依頼、僕はウィノナの家へと向かった。
325:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2017/07/02(日) 17:42:14.60ID:rBxtmIDi.net
ウィノナ宅では母親と妹に会った。状況の確認をざっと済ませる。
警察にも相談済みだが各交番に通達が行く程度で捜査員などをつけたりは出来ないようだった。
母親も今日の日までずっと神経を擦り減らしてきたのだろう。自分で探し出すという気力はとても無いように見えた。
石原から電話がありウィノナらしき人を学校で見かけたとの事。
彼と平山は事件の状況を知らないが見つけたら方法は問わないから拘束してくれと頼んだ。
突飛な頼みに聞こえたのだろう、何度も聞き返されたが僕は彼女が加害者になってしまう事を恐れてこれ以上隠しては居られないと覚悟した。
急いで飯田に連絡し引き続き彼女の自宅周辺を見て回ってもらうことにした。