高校の行事の勉強合宿で夏の山奥へ➡︎そこで忘れられない出来事が・・・

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19:1 ◆od.mCbJyhw @\(^o^)/: 2016/12/13(火) 23:46:39.47ID:MBkufoH5.net
俺たちもなんとかその場のテンションを抑え込んで、勉強場へと向かう準備を進める。
武智「しかしさぁ、吉谷もあれだよなぁ」
俺「何が?」

武智「いや、真面目で頭いいけど、アイツもベースなんか持ってきちゃってw」
俺「あー、そうだね。なんだかんだ、そういうとこあるよねw」
武智「むかつく時もあるけど、俺は好きだわw アイツのそういうところ」

俺も部屋の片隅に置かれた吉谷のベースを見つめて
「そうだな」って軽くつぶやいた。

20:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2016/12/13(火) 23:48:10.51ID:DWoD00fs.net
こういうテンションは分かるわww
意味もなく暴れたりはしゃいだり、あの頃は何がそんなに楽しかったんだろうな…

21:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2016/12/13(火) 23:48:48.34ID:zZAbnvPH.net
面白い!

22:1 ◆od.mCbJyhw @\(^o^)/: 2016/12/13(火) 23:49:01.78ID:MBkufoH5.net
勉強会の場所は、寝泊りする宿の真裏にある小さなプレハブ小屋だった。
俺たちが「勉強小屋」と呼んでいる、宿の離れである。

そのため、勉強会に向かうには一旦外に出ないといけない。

武智「あっついなーー」
俺「確かに……」
いくら山奥とは言え、8月ど真ん中の直射日光はしんどかった。

遠くから蝉がミンミンと鳴く声が聞こえて、間違いなく「夏本番」という感じだった。

23:1 ◆od.mCbJyhw @\(^o^)/: 2016/12/13(火) 23:50:47.68ID:MBkufoH5.net
元気「待ってくれよー」
俺「元気、なんでそんなに荷物多いの?」
元気は汗だくになって、明らかに異常な量の本を抱えていた。

武智「いや、それ半分以上漫画とかじゃねーの?ww」
武智がそう言うと、元気は強張った顔で「シッ!」と言った。
それを見て俺と武智は大笑いしてしまう。

「ここに何しに来てんだよーww」

24:1 ◆od.mCbJyhw @\(^o^)/: 2016/12/13(火) 23:54:04.28ID:MBkufoH5.net
元気はさも「お前らに言われたくねえ」」みたいな顔をしていたけど、
俺たちは堪えきれずに大笑いしてしまった。
どうしてなのか、やることなすこと全てに、「楽しさ」が滲んでいた。

そんなこんなで、「勉強小屋」に辿り着いた俺たちは、勉強合宿をスタートさせる。
クーラーもついてない35人がぎりぎり収まるプレハブ小屋で、
扇風機の風だけを頼りに、一週間勉強に没頭するんだ。

そんな風に考えていたけど、
これがまったく勉強どころじゃなくなっていくんだよな。

25:1 ◆od.mCbJyhw @\(^o^)/: 2016/12/13(火) 23:57:53.30ID:MBkufoH5.net
昼過ぎに始めた勉強は、夕方前には一旦休憩時間となる。
初日はまだまだ体力が残っているので、みんな元気である。

俺「かぁー!! この調子でいけば一週間で数チャート一冊終わるわww」
元気「それ、毎年言ってない?w」
俺の隣に座った元気が煎餅を食べながら突っ込んでくる。

俺「いや、今年は本気だよ? だって受験生だからねw」

26:1 ◆od.mCbJyhw @\(^o^)/: 2016/12/14(水) 00:00:38.91ID:P91s7vxQ.net
そんなくだらないやりとりをしていると、担任が遠くで声を上げた。
先生「お菓子なくなったなー誰か近くまで買い出しいってくれないかー?」

これを聞いていた武智が勢いよく、
「あ、俺行きますよ!」と高々と手を挙げた

(アイツサボりたいだけだろ……)
なんて心の中で思っていたら、俺と元気の席に近づいてきた。

27:1 ◆od.mCbJyhw @\(^o^)/: 2016/12/14(水) 00:03:11.95ID:P91s7vxQ.net
武智「なあなあ、1か元気、一緒に買い出しに行こうぜ」
元気「俺は絶対に行かねえよ」
元気は煎餅を食いながら即答した。

武智「お前が沢山食うからお菓子なくなったんだからなwww」
と冗談交じりに文句を言ったが、その矛先はすぐに俺に向いた。

武智「なあ、1は行くだろ? 買い出し。一人じゃつまらんからさ~」
俺「えー、ちょうど集中してたところなのに」

28:1 ◆od.mCbJyhw @\(^o^)/: 2016/12/14(水) 00:08:54.94ID:P91s7vxQ.net
武智「いいじゃねえかよ。気晴らししに行こうぜ」
俺「だー、分かったよ」
武智の押しに負けて、諦めて了承してしまう俺。

武智「せんせー! お菓子だけでいいんすかー!?」
先生「あー、みんなで分けられそうなものを頼む」
プレハブ小屋のたてつけの悪いガラス戸を開けながら、
武智はこちらを向いてニヤニヤしだした。

武智「ひひひ、早速抜け出せたな」

29:1 ◆od.mCbJyhw @\(^o^)/: 2016/12/14(水) 00:12:08.64ID:P91s7vxQ.net
不思議と、その武智の顔を見て、ちょっとだけ嬉しくなってしまう。
「ああ、今年もまた、あの濃い一週間が始まるんだなぁ……」
って心のどこかで思ってしまって、ワクワクが止まらなかった。

二人でプレハブ小屋を出て、西日の突き刺す駐車場の脇に止まった自転車を見つける。
武智「おー、まだあるじゃんこれ」
俺「ほんとだ、去年もこれに乗って遊んだなぁ」

30:1 ◆od.mCbJyhw @\(^o^)/: 2016/12/14(水) 00:15:22.03ID:P91s7vxQ.net
武智「この自転車、去年川に落としそうになってめっちゃ笑ったよなww」
俺「あー、あれは焦ったよなwww」
なんて言いながら、二人して古びた2台の自転車にまたがる。

夕方近くになったとはいえ、8月の日光は容赦なく俺らを照りつけるから、
すぐに汗だくになってしまった。
至る所から蝉の声がこだまして、なんだか朦朧としてくる。

しばらく山道を下っていると、少しひらけた県道に出た。
武智「なあ、どうする? セブンに行くか? それとも」
俺「うーん、ちょっと遠いんだよなぁ確か」

31:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2016/12/14(水) 00:16:21.77ID:6nfg7rYE.net
ノスタルジックだね
いいね~

32:1 ◆od.mCbJyhw @\(^o^)/: 2016/12/14(水) 00:18:23.74ID:P91s7vxQ.net
この県道を下って15分位で、セブン-イレブンにたどり着くが、
帰り道は上りでとてもしんどい。

一方、脇道に入れば地元の駄菓子屋のようなものがあり、すぐに事足りるのだ。

俺「とりあえず今日は駄菓子屋でいいんじゃね?」
武智「うっし、そうしよか」
そう言って武智は立ち乗りをして勢いよく県道を横断していく。

33:1 ◆od.mCbJyhw @\(^o^)/: 2016/12/14(水) 00:20:21.51ID:P91s7vxQ.net
しばらく走れば、赤いひさしを構えた古ぼけた商店が見えてくる。
武智「あったあったww 良かったなまだあって」
俺「毎年ハラハラするよな~ww」

古びた駄菓子屋だが、お菓子やアイスなどひと通り揃っていて、
贅沢を言わなければ十分買い物できる場所なんだ。

よせと言ったのに、武智はひたすらアイスを買い始めた。

俺「お前が急いで持って帰れよなww溶けても知らねえぞ!」
武智「任せろって! 超特急で持って帰るからww」
なんてやり取りをしてしまった。

34:1 ◆od.mCbJyhw @\(^o^)/: 2016/12/14(水) 00:22:34.88ID:P91s7vxQ.net
駄菓子屋のおばちゃんに「気をつけて持って帰れしね~」
なんて言われながらそそくさと店を出て、自転車にまたがる。

俺「お前本当ににそんなに買って……ちゃんと持って帰れよ」
武智「わーかってるよ」

武智「そんなことよりさ、あれ、楽しみだよな」
俺「ん? あれって何のこと?」

武智「ばっかお前! 縁日だよ縁日!」
俺「あー、夏祭りのことか」

35:1 ◆od.mCbJyhw @\(^o^)/: 2016/12/14(水) 00:24:46.90ID:P91s7vxQ.net
この年の勉強合宿では偶然日程が重なり、
最終日の前日にふもとの町で夏祭りが予定されていた。

そして、担任からも「その日まで勉強を頑張れば、夏祭りに遊びに行っていい」
という許可が降りていたのだ。
そのためクラスは一気に盛り上がり、女子には浴衣を持参した子もいるらしい。

最後の最後にそういう楽しみがあると、やはり心が躍るというものだ。
それに後々、この夏祭りが俺たちにとって凄く大切なものになる。

36:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2016/12/14(水) 00:27:02.27ID:yXGH67rk.net
何か重要な伏線ぽいな
しえんしえん

37:1 ◆od.mCbJyhw @\(^o^)/: 2016/12/14(水) 00:27:54.25ID:P91s7vxQ.net
武智「お前さ、夏祭り、渚を誘って行けよ」
俺「はあ? 何言ってんだよ」
渚というのは同じクラスの女子で、
俺が1年以上好きなのに、何も出来ずにいた子の事だ。

武智「だってチャンスじゃねえか! こんな機会滅多にないだろ」
俺「まあ、そうかもしれんけどさ……」
俺たちは自転車をこぎながら淡々と話し続ける。

39:1 ◆od.mCbJyhw @\(^o^)/: 2016/12/14(水) 00:30:34.06ID:P91s7vxQ.net
俺「でも、武智だって分かってんだろ? 渚は無理だって」
武智「いや、そんなん分かんねーじゃん。だってまだ決まったわけじゃないし」
そう言うと武智は、憎たらしい笑みを浮かべた。

俺「そうやって俺に発破かけないでくれよ……」
俺も武智も、渚には他に好きな人がいると、知っていたんだ。

40:1 ◆od.mCbJyhw @\(^o^)/: 2016/12/14(水) 00:32:46.27ID:P91s7vxQ.net
俺のテンションが落ちたのが分かってか、
武智も喋るのをやめて、しばらく無言で走る時間が続いた。

夏の午後の、傾きかけた太陽が道を照らしている。

武智「あ、そういや飲み物買ってくるの忘れてたな」
俺「そんなん頼まれてなかったじゃん?」
武智「あーいや、なんか女子たちが飲み物が無くなったって言ってたんだよ」
俺「ふーん……」

武智「買ってったら、お前渚とも話せるかもよ」
武智が思いついたように、俺に向かって言った。

41:1 ◆od.mCbJyhw @\(^o^)/: 2016/12/14(水) 00:35:51.31ID:P91s7vxQ.net
武智にそう言われて、「うーん」と悩んでしまう。
武智「考えてないで買ってけばいいんだよ、その辺で」
俺「その辺って言っても、もう店なんかないぞ」

武智「自販機か何か探せばいいだろ」
武智「俺はアイスがあるから先行くからさ! じゃあな!」

そう言うと、武智は俺を置いて一人で突っ走っていってしまった。
「無責任なやつめ……」
と思ったけど、とりあえずどこかに自販機がないか、
道草を食って探してみる事にしたんだ。

42:1 ◆od.mCbJyhw @\(^o^)/: 2016/12/14(水) 00:39:13.05ID:P91s7vxQ.net
少し走ると、道の脇にくすんだ赤色の鳥居を見つけた。
神社だよな? と思って自転車を止めて立ち止まると、何やら音が聞こえた。

「キィィィン」という気持ちの良い金属音と、少年たちの歓声のような声。
この奥で野球でもしてるんだろうか?
少し気になって、その場に自転車を止めて鳥居をくぐってみる。

両脇に木々が生い茂る階段を登ると、そこには大きな広場があって、
近所の小学生だろうか、10人ほどがわあわあ言いながら野球をしていた。

43:1 ◆od.mCbJyhw @\(^o^)/: 2016/12/14(水) 00:42:42.93ID:P91s7vxQ.net
とても楽しそうに駆け回っていたので、
それを遠くから眺めて、「宿に戻ったら俺もあいつらと野球しようかな」
なんて考えてニヤついてしまった。

やろうと思えばクラスのみんなと何だってできる。
そんな時だったんだよな。

すぐに我に返って、自販機は置いてないかと探してみる。
広場の方にはないようなので、俺は奥にある境内の方へと向かった。

44:1 ◆od.mCbJyhw @\(^o^)/: 2016/12/14(水) 00:46:23.70ID:P91s7vxQ.net
境内の方へと歩いて行くと、少し様子が変だった。
何故か妙に煙草臭い。
まずいなぁ、地元のヤンキーのたまり場にでも来ちゃったかな、と少し不安を覚える。

しかしそこにいたのは、俺の想像とは違うものだった。
髪を明るい茶髪に染め上げた女の子が、拝殿の階段に腰掛けている。

白のカットソーにショートパンツというラフな格好で、
歳は俺と同じくらいか年下か……

そして、煙草をくわながら俺のことを睨んでいた。