窓から眺めていた外は月の光で照らされているものの鬱蒼としていた。
本当に真っ暗じゃないけど霧が出ている見たいな。雨で視界もかなり悪かった
とにかく絶対に怖い話とか怖いことを思い出しちゃいけない雰囲気が漂っていた
一応外で何かが動く影があったけど、慣れてきていて俺らはさほど驚かなかった。
俺らは気休め程度に居酒屋の話をしていた。
どこどこの焼き鳥屋が美味しかったとか、あそこのお姉ちゃんは可愛かったな―とか
ちょっと男よりな話題な時は、遠くで山岳姫が「サイテー」と笑いながら言っていたと思う。
少し経ってから山岳姫もちょっと興味が出たのかコッチにやってきて話題に参加した。
会長「そうだ、今話た居酒屋行きません?」
山岳姫「なにそれナンパ?」
会長「ちょww」
俺・D男「会長ナンパですね^q^露骨だわー」
会長「い、いや!サークル同士で何か飲みに行こうと……!」
山岳姫「合コンですか?ww」
俺・D男「女癖が悪い会長で、すみません」
会長「(´・ω・`)」
山岳姫「イイヨ」
俺・D男「え!?」
会長「なんでお前らが嬉しそうな顔しているんだよ……」
それは人が沢山集まって塊になっている球体だった。
人たちが集まっている球体だった。刺みたいなのは腕だった。
着物を着ている人から当時少し古いと感じた洋服を着た人、
登山風の格好をしている者に、ふるい日本兵みたいな格好をしたモノまで居た。
ちなみに某日本軍が行軍した地域ではないです。
かなり近づいた時、月明かりでハッキリ見えた。
球体の人たちは白目を向いてパカッと口を開けて仰向けになっていた。
体を仰け反らせてくっついている。ガムテープを丸めて頃がした後にくっついたホコリみたいに。
そこで山岳姫が気が付いて声を上げた。
山岳姫「なんで雨降っているのに月明かり出ているの?」
>>101で気がついた人いると思うけど、確かに雨は降っていたんだよね。
結構。だけど月明かりが出ている状況。それも結構明るく。
今だから考えれば、そういう雨もあり得ると思うけど
それでも長時間降る雨なのに、月明かりが出ているっていうのがやっぱ考えられない。
火の番を疎かにしていた為、火がジュッと音を立てて消えた。
より一層外の形式に目が釘付けになる。
山岳姫「ウチの部、合コン禁止なんだけどねw」
俺ら「おおっ!」
山岳姫「ああ言う場、皆強引にお酒飲ませてくるしマナー内人多いじゃん?変態だよねー」
会長「大丈夫!一応、俺らビジネスマナーについて講習受けているからマナーはある方なんです!w(←実話です)
嫌がる人に強引に酒を飲ませる上司になるなってオッサン連中(講師)から言われてるw」
山岳姫「でもソッチかなりお酒飲んでいるんでしょ?A子から聞いているよ」
俺「お酒飲むけど、普通に飲み歩きしているだけですよー」
D男「あ、ならさ、喫茶店(バイト)で開けば?ケーキ美味しいって評判じゃん」
俺「ああそう言えば先輩もやっていたよね」
山岳姫「ああー例の喫茶店か」
その後、山岳姫に「正直に言って下心あって来たんでしょ」とか、ビシビシ怒られ気味に言われながら合コンの予定を取り付けた。
ちなみに男子は俺ら(・とC男)限定とのことでした。
そんなこんなで夜深くになっていた。
たしか喫茶店の自慢のケーキについて話していた頃だったと思う。
ゴド、ゴドゴドっと鈍い音が聞こえてきた。
俺が気が付いて皆に言うと、本当だと皆も気がついた。
家を叩かれている音ではなかった。
すっかり見張り番も忘れていた俺らは最悪の事態を想像しながら、恐る恐る外を見た。
黒い影は相変わらず動いていた。白い目がコチラを睨んでいる。
でも音の正体は彼らじゃない。
D男が「なんか見えない?でかい岩?」と指をさす。
最初は見えなかったが、そのD男が指差す物が近くに来た時ソレが見えた。
黒い影とは別に巨大な黒い塊がゴロンゴロンっと転がっていた。
木にぶつかると、方向を変えて、また木にぶつかり、方向を変えて進んできている。
だんだん刺か何かが生えてるようなやけにゴツゴツしているモノだとわかりはじめた。
大きさも4mぐらいあったと思う。
全員釘付けになったかのように見た。
D男が何かに気が付いてパクパクと口を動かした。
D男「アレ……C男じゃね……?」
人の塊がグルグル転がっている途中、見慣れた姿があった。
間違いなく救援を呼びに行ったC男だった。
他にも救援メンバーの山岳部女子の一人がくっついていた。
今でもハッキリ覚えているけど、口パカッと開け白目(?目を見開いている)姿は気味が悪くなる。
会長が窓を開けて「C男!」と叫びだし、山岳部もくっついている女子の名前を叫んだ。
俺やD男も叫んだ。必死に名前を読んでいる。
すると、うまい具合にコッチへ二人を向けた状態で塊が停止した。
C男「ああああああああああああああああああ!!」
女子「あああああああああああああああああ!!」
二人悲鳴がコッチに届いた。全員声が出なくなるほど驚く。
その顔は不安に怯える顔になっていてもがいていた。
俺らの方を見ると「助けて助けて!」「イヤイヤ!イヤダの!」と必死に叫んでいた。
目は辺りを見合わたし、また体をばたつかせ始める。
騒ぎに気がついた寝ていたF美女子達も目を覚ます。
と言うよりB子たちが起きあがり目が覚めた感じだった。
三人の顔はポケーッと口を開けていて正気がないのは一目で分かった。
F美女子達「どうしたの?」「う、動いて平気なの?」
一人がF美を踏み転ぶ。バタバタと脚を動かしている。それが歩いているんだと気が付いた。
他の二人はドアへ向かって歩いて行っている。
訳がわからないながらもF美女子たちはB子たちを止めた。
一人はバタ…バタ…と床へ向かって脚を歩めている。
外ではC男と山岳部女子が悲鳴を上げながら苦しそうにもがいている。
今までリーダーシップを発揮していた山岳姫も何も言えない状態で立ち尽くしていた。
俺は頭の中で流れた嫌な想像を喋ってしまった。
俺「もしかしてだけどさ、この廃墟にさ……俺ら誘導されたんじゃね?」
D男「は!?なに馬鹿なこと言っているんだよ!」
俺「嫌だってそうじゃん!お前も気がついただろ月明かり出ているのに雨が降っている!
雨宿りじゃないけど他の人間ならそう考えてこの家に入ろうとか思うんじゃないの!?」
俺「ゴキブリホイホイ分かるだろ!?アレだよ!
都合よくあの黒い影たちに家に誘導されたんじゃねーの!?」
会長「馬鹿なこと言っているんじゃねーよ!」
会長は俺の胸ぐらを掴みながら怒鳴りつけた。
俺はハッとなって口を塞いだけど、そう思い出したら俺は外に飛び出したかった。
会長「と、とにかくC男達をどうしようか!」
山岳姫「もう訳わかんないよ……なんでなんで……」
会長が助言か何かを求めて見た先で山岳姫は頭を抱えて泣いていた。
流石に俺らを含み全員が何か心が折れるような感覚がした。
山岳姫の気丈な振る舞いが俺らを支えていたのだと痛感した。
外では「オイ!!オイオイオイィイイイイイイ!!!!」とC男がコッチを見て怒鳴っていて
女子も「山岳姫さん!山岳姫さん!!!」と叫んでいる。
家の中は女子達が一斉に泣き出し、B子たちは「ああああ」とかよく分からない声を発している。
山岳姫は座り込んで鳴き始めてしまった。
会長も俺も泣きそうで、D男だけがパニクっているが確りと辺りを見渡していた。
そしてD男はパッと壁に掛けてあった日本刀を手に取る。
刀身は出てこなかったけどかなり重そうだった。
D男「おい!B子たちを行かせるなよ!!」
そう叫ぶとD男は日本刀を棒を持つように持ちながら外へ飛び出していった。
瞬間黒い影がD男に襲いかかるが、D男は日本刀を振り回し塊へ走って行く。
俺も訳がわからなくなったけど、近くにあった水筒を持って飛び出した。
会長も理由は分からないけど、俺と一緒に小さめのリュックを持って飛び出す。
多分俺らは、山岳姫や女子たちを助けなきゃと思って行動したんだと思う。
外に出て分かったが生乾きした雨の匂いと、それ以上に濃い獣の生臭い匂いが充満していた。
黒い影の目が細めたように白い線になりニヤニヤと笑っていた。
水筒を振り回すと黒い影をすり抜けた。ただ黒い影は俺の方へ手を伸ばしてきた。
触れると羽毛の様な感触と冷たすぎる感覚がして、背筋がゾゾッとした。
身の毛もよだつとはこのことかと思った。
霧を吹きかけられたといえばいいのかな。そんな感じで冷たい感覚がズーッと全身に広がっていく感じ。
今やって分かったけど、自分の手をブワッと広げるのを腕にやるとその感覚に近い
あと無数の蜘蛛が腕を這って来ている感覚かな。
あっという間に俺らは無数の黒い影に取り憑かれてしまっていた。
冷たいような熱いような、とにかく獣臭さすぎてクラクラするかと思った。
それでも重くはなかった。
筋肉痛のような痛さはあったけど動けた。指先はしびれていたけど力は入った。
会長「俺君、D男!普通に走れる!ガンバれ!」
顔に黒い小人のような影が張り付いた会長が叫んだ。
小人はクビの部分をヘニャリと曲げて俺を見ていたので少し怖かった。
人の塊に到着すると、本当に大勢の人がくっついているのだと悟った。
白目を向いていて口をダランっとだらしなく開けている人たちがほとんどだったが、
中には「うー!うー!」と唸りながら塊の隙間からコッチに助けを求めている正気がある人も居た。
近づくと無数の手が助けを求めるように俺や会長、D男へバッと伸びて、ウネウネとしている。
「助けて!」「痛い!」「苦しい!」「気持ち悪い!」
「嫌だ!」「ああ!」「コッチです!」「コッチだ!」
自分の状態を告げる声や助けを求める声が大勢聞こえたが、俺らは一心不乱に二人を助けようとした。
二人は球体の人に手や腕、お腹を抱きつかれている形で捕まっていた。
手を叩き、時には多分指を折ったり、多分水筒や日本刀で周囲の人や女子の影にいた人の顔を殴ったりもしていたと思う。
何度も俺らも足や腕を掴まれ転びはしたが、すぐに会長やD男やら、自力でだったりして抜け出し、
再び突撃して助け出すのを繰り返して、ようやく女子を剥がすことに成功した。