20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/09/30(月) 19:18:24.61 ID:2mBUXQwQ0
どうだろうか、多分あれは2年前の春か秋だったと思う。
如何せん俺が花粉症じゃないからいつも春と秋を区別できずに思い出にしてしまうんだ。
元々住んでいた部屋で大小20体ばかりの霊を見てしまった俺は21体目と眼が合った時、引っ越しを決意した。
まぁ、安ければ良いかと反省せずに悪習を反復してしまったんだ。
26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/09/30(月) 19:24:22.77 ID:2mBUXQwQ0
俺が
「安い物件は有りますか?」
と聞くと、顔が貧相な割に体が柔らかそうな鴬谷の不動産屋は
「あるけど。割とって事?」
とか聞いてきたんだ。
割とっていうのはどういう意味なのか大体は分かるんだが、なんていうかすごく癪に触る言い方だった。
「割とって?」
「いや、何て言うか部屋のグレードの割に安いって言う事。」
質問を質問で返すと、不動産屋は狼狽しながら精一杯怪訝な顔をしていた。
「いくらですか?」
「2Lで6万。」
成る程。コレは割とな物件だ。
「内見行けます?」
「勿論。」
「安い物件は有りますか?」
と聞くと、顔が貧相な割に体が柔らかそうな鴬谷の不動産屋は
「あるけど。割とって事?」
とか聞いてきたんだ。
割とっていうのはどういう意味なのか大体は分かるんだが、なんていうかすごく癪に触る言い方だった。
「割とって?」
「いや、何て言うか部屋のグレードの割に安いって言う事。」
質問を質問で返すと、不動産屋は狼狽しながら精一杯怪訝な顔をしていた。
「いくらですか?」
「2Lで6万。」
成る程。コレは割とな物件だ。
「内見行けます?」
「勿論。」
29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/09/30(月) 19:29:27.86 ID:2mBUXQwQ0
加齢臭のキツい不動産屋の車に乗る事10分、鼻の中の糞に加齢臭がくっついた頃にそのアパートについた。
「どうです。」
玄関を開けた瞬間にそんな事を聞くもんだから
「まだ分からないし、少し臭いますね。」
と言うと、不動産屋は自分のにおいを差し置いて臭いものを嗅ぐような顔をした。
「どうぞ、そのまま上がってお部屋を見て下さい。」
言われなくともそうしていた俺は部屋を丹念に見て回った。
もう幽霊やらはこりごりだった。
「…あれ。穴?」
最初に穴を見つけたのは不動産屋の方だった。
「どうです。」
玄関を開けた瞬間にそんな事を聞くもんだから
「まだ分からないし、少し臭いますね。」
と言うと、不動産屋は自分のにおいを差し置いて臭いものを嗅ぐような顔をした。
「どうぞ、そのまま上がってお部屋を見て下さい。」
言われなくともそうしていた俺は部屋を丹念に見て回った。
もう幽霊やらはこりごりだった。
「…あれ。穴?」
最初に穴を見つけたのは不動産屋の方だった。
33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/09/30(月) 19:34:28.74 ID:2mBUXQwQ0
「え?」
俺は不動産屋がリビングで素っ頓狂な声を出していたので、何だ何だと駆けつけた。
「あ…。穴だ。」
実際には穴がぽっかりと開いていた訳では無く、壁紙の下に穴があるのが結露や何やらで紙が引っ張られ輪郭を出してしまい丸分かりになっていた。
「何だろうなコレ…。こんなのあったかな。」
不動産屋がその丸い輪郭を手でなぞっていると、どうもその穴が直径20センチはあろう大穴だという事が分かった。
俺は不動産屋がリビングで素っ頓狂な声を出していたので、何だ何だと駆けつけた。
「あ…。穴だ。」
実際には穴がぽっかりと開いていた訳では無く、壁紙の下に穴があるのが結露や何やらで紙が引っ張られ輪郭を出してしまい丸分かりになっていた。
「何だろうなコレ…。こんなのあったかな。」
不動産屋がその丸い輪郭を手でなぞっていると、どうもその穴が直径20センチはあろう大穴だという事が分かった。
34: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/09/30(月) 19:37:19.71 ID:2mBUXQwQ0
「このままで良いですよ。」
「え?」
俺の突然の申し出に不動産屋は焦っていたが、かえって好都合なのでそのまま話を進めた。
「この穴、このままで良いんで家賃下げてもらえません?」
「いや。でもなー…。」
「5.5で。」
「んー…。」
「え?」
俺の突然の申し出に不動産屋は焦っていたが、かえって好都合なのでそのまま話を進めた。
「この穴、このままで良いんで家賃下げてもらえません?」
「いや。でもなー…。」
「5.5で。」
「んー…。」
35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/09/30(月) 19:42:39.24 ID:2mBUXQwQ0
「良いよ。5.5で。」
「おー。それじゃ決定で。」
これが間違いだった。
内見が終わり部屋を出る時、視界の端で捉えた穴の輪郭は不動産屋がなぞったせいかやたらはっきりしていた。
「それじゃね。こことここと…」
その後の契約なんかは何事も無くポンポンと進み、晴れてその次の月からあの穴部屋に越す事となった。
「おー。それじゃ決定で。」
これが間違いだった。
内見が終わり部屋を出る時、視界の端で捉えた穴の輪郭は不動産屋がなぞったせいかやたらはっきりしていた。
「それじゃね。こことここと…」
その後の契約なんかは何事も無くポンポンと進み、晴れてその次の月からあの穴部屋に越す事となった。