女難の相を持って生まれた俺の半生➡︎幼稚園時代、女の子が急に服を脱ぎ始め・・・

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179:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2016/08/12(金) 03:49:02.34ID:kKixBPmO.net
季節の描写が心地良いな
完走楽しみにしてるぜ

180:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2016/08/12(金) 12:37:57.51ID:hrhdJogf.net
そろそろ再びパンツを脱ぐ時かな?

184:1@\(^o^)/: 2016/08/12(金) 13:09:25.83ID:WgAsFJWe.net
>>180
そんなに脱ぎたいなら、かまわんよ

181:1@\(^o^)/: 2016/08/12(金) 13:01:21.22ID:WgAsFJWe.net
おそらく奥山もそうだったと思う。男同士だから言わずとも感じる。
それまであたりまえのように付き合っていた女の子たちとの間に
男以外にはわからないくらいのわずかなひずみが出来た。

中学生とはいえ体は大人に近いた少年が異性を意識するということは
極論ではあるがセ●クスを意識すると言う事だ。
もう、性欲はあったし自慰も覚えてはいたがそれをぶつける相手として
彼女たちを見ることに俺は耐えられなかったのかもしれない。
ただ、一緒にいるだけでは満足できなくなってしまったんだ。

もちろん、お祭りは楽しかった。わたあめもかき氷もおいしくて。
祭りの最後に上げられた申し訳程度の花火も当時の俺には十分きれいで。
屋台の暖かい色のライトに照らされた彼女たちを思い出すだけで
今でも胸が躍るくらいだ。夏のひと時をすごすには魅力的な女の子たちだった。
でも当時の俺にとって、それは非常に危険な感情でもあった。
そのどちらかをきちんと選んで、自分から手をつなぐ勇気もないくせに。

ずっと俺は横山さんに恋をしていた。していると思っていた。
それがだんだんわからなくなってきてしまった。

182:1@\(^o^)/: 2016/08/12(金) 13:01:56.71ID:WgAsFJWe.net
それでも表面上は今迄通りの関係を続けた。壊したくないという一心で。
奥山の気持ちも気になってはいたが、思い切って言葉に出すことは出来ない。
悶々とした気持ちを抱えたまま、いつのまにか木枯らしが吹いていた。
それと同時に、俺の気持ちにもはっきりとした変化が訪れた。
ひとりベッドでいるときにいつも頭を支配していたツインテールの女の子は
いつしか思わず頭を撫でてしまった、おとなしくて控えめな眼鏡の女の子になった。

どこにでもいる中学生の日常を過ごすうち、
どうやら俺は吉田さんのことを好きになってしまったようだ。

すこしずつ、でも確実に。

読む本が、同じだった。
話す言葉が、同じだった。
孤独の種類が、同じだった。

奥山といるときの楽しさとも、横山さんといるときとのドキドキとも違う。
お互い話すことがなくなってからの沈黙でさえ心地よく感じたんだ。
きっと彼女が男だったとしても俺は好きになっていたのかもしれないと思うほど。

壊したくない。変えたくない。ずっとこのままいたい。
そんな気持ちを全身を貫く激しい衝動が片っ端から破壊していく。

183:1@\(^o^)/: 2016/08/12(金) 13:04:36.76ID:WgAsFJWe.net
ある日ついに俺は行動に移した。
まずは奥山だ。あいつと話さなければならない。

それが子供から少年、そして大人に至る過程にある俺が導き出した答えだった。
あまり好きな言葉ではないけれど筋ってやつだとその時は思った。
臆病で弱い俺の、精一杯の誠意でもあった。

彼は俺の呼び出しにいつものように気軽に応じてくれた。
俺の部屋に来た時にすぐに違和感を感じたのか、奥山は

「どうした?」と短く聞いた。
「俺さ、吉田さんの事好きになってしまった。」俺も端的に話した。

ぐだぐだと長い話をする気はなかった。
どこか気恥ずかしく、口調はぶっきらぼうになってしまった。

「そうか。」と彼は一瞬考えてから絞り出すように言った。

俺は勇気を絞って聞いた手前、すべてを明らかにしたいと思っていたので
いままで気になっていたことを彼に聞いた。

「お前は、どっちが好きなんだ?」

奥山は今度はゆっくり考えそしてなんだか困ったような顔をして、こういった。

「俺は、横山さんが好きだ。お前もそうだと思っていた。

185:1@\(^o^)/: 2016/08/12(金) 13:09:51.88ID:WgAsFJWe.net
一抹の不安はあったが、予想通りの答えが返ってきて俺は内心ほっとした。
こいつと一人の女の子を取り合うなんて、過酷すぎる。
友情が壊れるのも怖かったが、情けない話こいつにはどうしても勝てないと
心のどこかで思っていたからかもしれない。
それでも俺は、一生懸命勇気を出して話をした俺に対して
正直に答えてくれた奴に実直さを感じた。

「告白するつもりなのか?」彼は言った。
「ああ。」と俺は返した。

もう彼は何も言うつもりはないようだった。
言葉を探す代わりに、彼はにこりと笑ってくれた。

応援するような、それでいてどこか寂しそうな。
男の俺が見てもはっとするような笑顔だった。
俺はやっぱりこいつにはかなわないな、と思い一緒に低く笑った。

それから1週間くらいは無為に過ぎたのではないだろうか。
俺は告白のタイミングを計ってはいたがなかなか切り出せずにいた。
それでもこの心地いい関係を壊すことには変わりないのだから
どうせなら堂々と4人でいるときに告白しようと思っていた。
バレンタインデーの前には決着をつけるつもりだった。
吉田さんから、俺だけのためのチョコレートが欲しかったから。

191:1@\(^o^)/: 2016/08/12(金) 17:33:11.55ID:WgAsFJWe.net
ある週末に、あの夏休みの時に待ち合わせた小学校の桜の木の元に
みんなを呼び出した。青々とした葉はいつしかきれいさっぱり無くなっていて
それをみていたらなんだか心の隅っこまで寒々しい感情に支配された。

俺は一人でまっていた。気合いが入りすぎて、早く来てしまったんだ。
空には雲一つなく、俺の吐く息はすぐさま白い蒸気になった。

一番先に、横山さんが来てくれた。
この時の俺はひょっとしたらものすごい顔をしていたのかもしれない。
開口一番、彼女はあのはつらつとした笑顔を少し曇らせ俺に聞いた。

「どうしたの?」奥山と同じ言葉だ。

でも男同士の会話のように率直にというわけにはいかない。

「みんな来たらちゃんと話すよ。大丈夫だから。」精一杯の俺の強がりだ。

ほどなく吉田さんが現れたが、ただならぬ空気を察したのか押し黙ったまま
その場に突っ立っていた。一度救いを求めるように横山さんを見たが
彼女も何もいわず、重い沈黙だけがその場にべとっと張り付いた。

ありがたいことにすぐに奥山もやってきてくれた。
あいつは状況を知っていたから遠目に見てもひどく深刻な表情を浮かべていた。
不思議と寒さはもう感じていなかった。

全員がそろうと沈黙に耐えきれなくなった俺は口を開いた。

「俺、みんなに話がある。みんなに聞いてほしい。」と。

192:1@\(^o^)/: 2016/08/12(金) 17:33:53.18ID:WgAsFJWe.net
誰も言葉を発しなかった。俺を待っていてくれた。
思い切って俺は吉田さんを正面に見据え、その眼鏡の向こうにある目を見つめ言った。

「俺、吉田さんの事が好きです。」

そこまで言って、落ち着くために一度大きく深呼吸して俺は続けた。

「4人の関係を壊したくないとも思ったけど、何度考えても好きで。今言わないと
一生後悔するって思ったから言います。本を読んでいる吉田さんも、
人見知りな吉田さんも、そのそばかすも、俺たちだけに見せてくれる笑顔も全部好きです。」

練りに練った言葉のつもりだ。何しろ初めての告白だ。
一世一代の大勝負というと大げさかもしれないが
中学生にとってはそれは非常にエネルギーのいることだ。
おっさんが飲み屋で女の子を口説くみたいに、とはいかないのだ。
純粋で、飾る気もない、心からの言葉だった。
こんなにまっすぐに誰かに感情をぶつけたことが、俺はなかった。

193:1@\(^o^)/: 2016/08/12(金) 17:34:52.62ID:WgAsFJWe.net
永遠にも思える静寂。

皆が皆、木枯らしの吹く中空をみつめ、まるで時間が俺たちだけ動かすのを
忘れてしまったみたいに、止まっていた。
しかし突然沈黙を切り裂くように俺たち以外に誰もいない校内にチャイムが空々しく響いた。

時間は動きだした。

俺を含めみんなが吉田さんの方を見る。彼女は状況を把握するのに時間がかかるタイプだ。
俺以外の2人もそっと見守る。誰も急かしたりなんてしない。

しばらくして、呆けていた吉田さんはあの時のように一度はっと目を見開き
その次の瞬間、ゆでだこのように顔を真っ赤にした。耳まで朱に染まる。

「あっあの…私…えっと…」

困っている。困っているぞ吉田さん。
そんなところも大好きです。

「うん…ありがとう…嬉しい…」

来たか?コレ来たか?
他の二人も息をのんで見守ってくれている。

197:1@\(^o^)/: 2016/08/12(金) 18:27:57.28ID:WgAsFJWe.net
吉田さんは俯いてもごもご言っていたがついに何かを決心したような顔に変わり
今まで聞いたことのないような大きな声で、こう言った。

「でも、ごめんなさい!!私、横山さんが好きなんです!!!」

「え?」
「え?」
「え?」

ぽかーん。振られたことに気が付くことさえできない。
奥山じゃないよな?横山さんっつったよな?
横山さんって、確か女の子だったよな?
その辺から脳みそをリロードするしかなかった。

198:1@\(^o^)/: 2016/08/12(金) 18:28:30.25ID:WgAsFJWe.net
みんな、鯉のように口をぱくぱくしながら固まっている。
おいコレどーするんだ。これまでの俺の徹底的だと思われた
シュミレーションにも当然こんなのは入っていない。

「気持ち悪いよね…女の子どうしなんて…でもあのときハンカチもらった時から私…」

そこまで言って彼女は言葉を紡げなくなりぽろぽろと泣き出した。

そんな事、頭をよぎったこともなかった。
俺は必死に言葉を探したが、検索結果はゼロだった。
あの奥山ですら、似たような顔をしていた。
ただただ俺は、また泣かしてしまったことを後悔した。

200:1@\(^o^)/: 2016/08/12(金) 18:28:57.76ID:WgAsFJWe.net
突如、横山さんが口を開いた。

「うん…そんなことないよ…。」彼女は吉田さんの頭を優しく撫でた。

「私も、みんなに話したいことがある。」あやすように撫でながら彼女は続けた。

「女の子に恋をしてしまうのは、私も同じなの。」

「え?」
「え?」
「え?」

全員が横山さんの言葉にくぎ付けになる。
この後決定的な一言を彼女は言うことになる。
彼女らしく、きちんと目を見てはっきりと。

「吉田さん。私もあなたのこと、好きよ。恋愛対象として。」

えぇぇぇぇぇぇっぇぇっぇぇぇぇぇぇ…?

201:1@\(^o^)/: 2016/08/12(金) 18:30:00.11ID:WgAsFJWe.net
言葉にならない。俺は耐えられなくなって、奥山の方を見る。
あいつもやはり困惑と悲しみに満ちた表情をしていた。
そうだ。あいつも同時に振られていたんだ。告白する前に。

俺の告白は一体どこいちゃったんだよ…
眠れなかった時の幾夜にもわたるシュミレーションに費やした時間も…
俺のちっちゃな勇気も…奥山なんかすまんかった…

二人の間には冬とは思えない桃色のオーラが包んでいる。
俺と奥山はもう、ただの邪魔者でしかなかった。

「俺も、気持ち悪いとは思わない。応援するよ二人の事。」

そう言うのがやっとだった。どっちにしても友達であることには
変わりないのだから。いたたまれなくなった俺は、
茫然自失とする奥山の腕を引っ張り、その場を離れた。
自分が振られた悲しみよりも友人が幸せになる喜びを優先させた。
いや、無理やりにでもそうしようと努力した。
本当は悔しくて悲しくて寂しくて。泣き出しそうだったのだけど。


204:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2016/08/12(金) 18:48:28.23ID:qQ4rvx9d.net
レズはホモ

205:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2016/08/12(金) 19:05:31.60ID:ZHYF/fIg.net
まさか1の嫁はオクヤ…

208:1@\(^o^)/: 2016/08/13(土) 00:45:35.69ID:ZifL36Mz.net
>>204
>>205
変な流れにしないでくれwご想像にお任せする。

206:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2016/08/12(金) 21:14:10.40ID:2tx/cBzi.net
ちょっとこの展開は予想でしなかったw

208:1@\(^o^)/: 2016/08/13(土) 00:45:35.69ID:ZifL36Mz.net
>>206
俺もしていなかったよw

209:1@\(^o^)/: 2016/08/13(土) 00:46:27.63ID:ZifL36Mz.net
俺たちはまた、あの小学校で仲良く玉砕した。
帰り際、寂しそうに悲しそうにまた奥山がつぶやいた。

「女って怖いよな…」

その言葉には色々な成分が含まれていたが、俺は曖昧に頷いただけだった。
本当は痛いほどその気持ちは分かっていたのだけれど。
すまんという言葉を俺は彼の名誉のために飲み込んだ。

その日の夜、俺は久しぶりに枕に突っ伏して泣いた。
隣室の姉ちゃんにばれない様に声を殺して。
しかし夕食の時の俺の空気から何か感じ取ったのだろうか。
深夜、俺の部屋のドアが音もなく開いた。

2番目の姉ちゃん。綾子だった。

「…泣いてるの?」一言だけ。
「だんっでもっ…だいっ…」と俺。バレバレではあるが強がった。
「ウケる」そう姉ちゃんは言い残しまた静かにドアを閉めた。

隣の部屋から二人の姉の爆笑が聞こえる。
女なんて女なんてオンナなんて…
俺は頭の中でそう呪文を唱えこの世のすべての女を呪った。
逆恨みであることは十分理解していたよ、もちろん。
でもそうしないと壊れてしまうような、そんなギリギリの気持ち。
まさに泣きっ面に蜂だ。俺はさらに泣いた。体中の全ての水分が涙に変わった頃、
俺はいつの間にかすとんと深い眠りに入っていた。
不思議なことにまったく夢は見なかった。

210:1@\(^o^)/: 2016/08/13(土) 00:49:52.73ID:ZifL36Mz.net
その後の俺たちは、仲違いしていたわけではないが少しだけぎくしゃくとした
関係になってしまった。横山さんと吉田さんはどことなく二人だけでいたがっていた
様な気がしたから俺と奥山はなるべく邪魔をしないでおこう、という立場をとった。
もちろん学校の他のやつにはこのことは話していない。
はた目にはただの仲の良い女子に見えていたことだろう。俺はそれで良いと思った。

もちろん今でもこの話は同級生には内緒にしている。
絶対に墓場まで持っていこうと俺は思っている。
しかしついこの間、それぞれ普通に結婚し特に横山さんは2人の子宝に恵まれたと
言う事を人づてに聞いた。

一体あれはなんだったのだろうか?
思春期の女子特有の一過性の得体のしれない何かだったのだろうか?

俺はそれを聞いたとき一瞬そう思ったが、まぁ幸せになっているのならいいことだと
すぐに思い直せるほどには大人になった。きっと答えはこれからも出ないだろう。
出す気もない。今の俺は、直接会っても素直におめでとうと言えるだろう。

それでも当時は、二人で帰る後姿を遠くから眺めながらちくちくと痛む心を
なんとかなだめながら生活していた。応援すると言った手前、
それ以上俺がどうこうするということはで不可能だった。
かといって今までとまったく同じように接するほど器用でもなかった。

211:1@\(^o^)/: 2016/08/13(土) 00:53:11.06ID:ZifL36Mz.net
そのままするりするりと時は流れ。

3年生になり4人でべったりということは随分と減った。
俺には高校受験が控えていたし部活だって追い込みの時期で結構忙しかった。
恋愛なんてもうこうごりだと俺は思いながら暮らしていたから、
忙しさで自分の心の痛みを押しつぶすようにしてひたすら頑張った。

奥山は、中学を卒業したら働くことに決めたとある日俺に言った。
ウチの親父と同じ、自動車メーカーの養成所の様な所にいくようだ。
そこなら寮があるし、あの酔っ払いも手が出せない。
一緒に高校に行けないのは寂しく思ったが、俺はいい考えだと彼の意見を尊重した。

俺は何をやらせてもボンクラだったからとりあえずまぁまぁ学力の私立高校に決めた。
中学の部活も特に強いわけでもなくインターハイなんて夢のまた夢だったが、
最後の大会では思い出づくりに出場させてもらった。
流川と同じバッシュと、奥山と一緒に円満にバスケ部を引退した。

その大会の少し前くらいからちょくちょく試合や練習を見学に来ていた
女子の集団の中に一年下の後輩の女の子がいた。名前をアヤコとしよう。
そう、俺の2番目の姉の綾子と同じ名前だったから名字ではなく下の名前で覚えた。
彼女は地域にある唯一のキリスト教会の牧師の娘だった。
当時はよくわからなかったが牧師ということはプロテスタントだったんだろう。

俺と同じように髪の毛が茶色がかっていて目も少しグレーがかった美人だった。
誰かからイギリス系のクォーターと言う事を伝え聞いた。
ロングのストレートの長髪に、いつも水色のカチューシャをしていた。
贔屓目だったとしても彼女は学年は下なのに彼女はとても大人びて見えた。
軟弱な俺なんかよりもっと透明な白い肌をしていて、手足もすらっと長かった。
くちびるは化粧をしていないのにいつも紅を引いたように赤く、
何よりも制服のスカートを短くして履いているのがとてもよく似合った。
今イメージするJKファッションの流行はこの辺の時代からじゃないかと思う。
とにかくおしゃれで異質な空気を彼女は持っていた。

212:1@\(^o^)/: 2016/08/13(土) 00:56:57.37ID:ZifL36Mz.net
彼女が属していた団体はよく冷たいタオルやはちみつ漬けのレモン、
スポーツドリンクなんかをよく差し入れてくれた。
そのおおかたが文化部系の女子だったから彼女はその中でもよく目立った。
俺はバスケ部のモテるランキングには入っていなかったし、激しい女性不審だったから
基本的には無視を決め込んでいた。奥山は簡単に軽口を叩いて彼女たちをよく
笑わせていたが。コミュニケーションの達人なんだよ。奴は。
正直うらやましくなかったと言えば嘘になる。でも俺は意固地だったから。
たぶん卒業まで二、三回しか話していなかったんじゃないかと思う。
でも髪の毛の悩みについて話したことだけはよく覚えている。

体育教師のゴリラがしつこいこと。
持って生まれたものをかえる気はないこと。
そういったいわゆる普通とされていることに違和感があること。

俺は極力興味なさそうな顔をしたつもりだったが
なかなか同意を得られることがなかったのでこの時はよく話したと思う。
奥山はこの時、同じ体育館にいた横山さんと遠巻きにニヤニヤしていた。
てめーはもう。人の事より自分の事心配しろよ。あと、俺で遊ぶな。

話は飛んで、卒業の日。俺は学ランだった。
胸には卒業生の証の白い紙でできた花飾り。
それぞれが、それぞれの道を進む分岐点。
最後のHRも終わり奥山や横山さん、吉田さんと別れを惜しんだ。
なかなか会えなくなっちゃうねなんて言いながら。もうわだかまりはなかった。

217:1@\(^o^)/: 2016/08/13(土) 17:55:19.56ID:ZifL36Mz.net
卒業式に出席してくれた母は、先に帰ってもらった。
友達と話していくからと。

校門を出るときに、俺はちょっと驚いたがアヤコは俺を待っていてくれた。
学ランのどの中学校でもある第2ボタン文化を継承するためにだ。

俺は自分のボタンが誰かにもらってもらえるなんて思ってもいなかったから
少し驚いた。それもこんな美人が俺を待っているなんて。

俺はこの日初めて異性から告白を受けた。

「先輩。ボタンください。あと、先輩の事が好きです。」

何かのついでのように彼女は明るく言った。
彼女からは緊張のかけらも感じられなかった。
ただ少しだけその透明感のある頬に赤みがさしていたような気がした。
本格的な春を目前にした柔らかな日差しは彼女の色素の薄い髪の毛と
瞳に反射しきらきらと弾けた。
俺は情けなくも何を言っていいかわからなくなった。
好きになるには情報が少なすぎた。信じられないという気持ちもあった。

218:1@\(^o^)/: 2016/08/13(土) 17:56:59.50ID:ZifL36Mz.net
「去年からずっと先輩の事、見てたんです。」知らなかった。
「あ…そうなんだ…ありがとう。」我ながら気のきかない台詞だ。
「一度でいいんです。春休み、デートに連れて行って下さい。」と攻めの姿勢の彼女。
「・・・・・」何か言ってやれよ。俺。でも心の準備ができていない。
「これ、あたしの家の電話番号です。約束ですよ?」この子ぐいぐいくる。

返答を待たずに、彼女は無理やり俺の手に可愛らしいピンクの便箋を押し付け、
校舎の方に彼女は走って行った。手が触れたとき不覚にも俺はどきりとした。
俺は茫然として見送ったが遠くのほうで女子が何人か彼女を受け入れ、弾けるような
黄色い嬌声だけが俺の耳に届いた。よく体育館に来ていた集団だ。
俺はぎりぎりの平静を保ったまま、後ろを向き帰ろうとした。

そんな時だ。背後から声がかかった。

219:1@\(^o^)/: 2016/08/13(土) 17:58:31.29ID:ZifL36Mz.net
「…青春ってヤツすか。いいですなぁ。」奥山だ。しまった。
「…えと、どこから見てた?」俺は動揺を隠しながら振り向かずに聞いた。
「大体全部」マジすか。お前ってやつは。
「どどっどどっどどっどどうしよう奥山。」

俺はあいつの方を見た。奥山の学ランにはボタンが一つもなかった。
マジかこいつ。勝てないとは思っていたがここまで差が付くものか。
でもいい。俺の結果も、ゼロではない。

「おま、それ…」俺はだらしなく前が開かれた制服を指さし聞いた。
「あぁ、ちょっとハイエナに襲われた。」なんてこと言いやがる。
「おい奥山よ。俺はどうしたらいい?」もう一度聞き直した。
「好きなようにすりゃいいじゃん。でも約束しちまったんだろ?」俺はしてないぞ。
「ま、ちゃんと断らなかったお前が悪いよ。電話くらいしてやんな。」

続けてそう言い奥山は手をひらひらさせながら帰って行った。

初めて異性から向けられたまっすぐな好意に俺は照れていた。
俺が吉田さんに告白した時のような切実さや喪失感みたいなものは一切なかった。
ただふんわりと暖かく、柔らかい印象だけが俺の心に残った。
確かに、礼儀として電話くらいはするべきかもしれない。

家に帰り、便箋を開くと女の子らしい可愛い丸文字で電話番号と
メッセージが書かれていた。ハートマークつきだ。
この便箋はどこかに行ってしまったのでもう確認することはできないが、
自分と同じ茶色い髪をもつ俺をどのように好きになったかが書かれていた。

220:1@\(^o^)/: 2016/08/13(土) 18:00:42.11ID:ZifL36Mz.net
生まれて初めてのラブレター。嬉しくないわけなんかない。
この年頃の男の子なんて簡単なものだ。すぐに彼女のことで頭がいっぱいになった。

家に帰りドアを開くと、土曜で休みだった姉ふたり運悪く遭遇した。
いつもこいつらは俺が会いたくないときに出てくる。
ふたつの視線が俺のなくなった第2ボタンの位置に無遠慮に注がれる。

ニヤリ

魔物だ。魔物の群れに見つかってしまった。
しかもとてつもなく旨そうな餌をぶら下げて。

「あんたそれどしたん」ニヤニヤ長女
「ちょっとこっちいらっしゃいお姉ちゃんに話してごらん」ニヤニヤ次女。
「おかーさーん!ちょっと!イッチが第2ボタン喪失して帰ってきた!」増えるな!!

やめてくれぇぇぇぇぇぇぇぇっぇええええええ!
そっとしておいてよ…暇人すぎるだろ…女っていくつになってもこういうの好物だな。

俺は逃げるように二階の自分の部屋に飛び込み、ドアが開かないように
勉強机の椅子をつかってバリケードを作った。

扉の外には魔物が三匹蠢いている。