女難の相を持って生まれた俺の半生➡︎幼稚園時代、女の子が急に服を脱ぎ始め・・・

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124:1@\(^o^)/: 2016/08/10(水) 15:38:53.50ID:TYpDn0l8.net
>>123
日本人が黒髪なのはあたりまえってのがすでに差別だよな
どっからが茶髪だっていう線引きもないし。
結局は主観だもんな。理不尽極まりない。

125:1@\(^o^)/: 2016/08/10(水) 15:47:52.14ID:TYpDn0l8.net
俺は問答無用に丸坊主にされた。ハゲ上がった頭を竹刀でたたかれた。
トイレの鏡で自分の顔をみると、なまっちろい女顔なので
なんだか尼さんみたいだなって思って泣けてきた。
まだ何もしていないのに…姉ちゃんがグレたのだって証明書取っても
執拗に黒く染めろって言われ続けた反動じゃないか…
それに姉ちゃんがグレてたって俺がグレるとは限らないじゃないか…
卒業したのだって何年も前だろ?なんて粘着質なんだよ。

クラスに初めて入ると、みんな一瞬固まったが
折よく同じクラスになった奥山が上手く茶化してくれて
その日のうちに「空海」という二つ名が授けられた。
悲惨な経験ではあったが、奥山のおかげで笑ってもらうのは
悪い気がしなかったしあだ名をつけてもらったのも初めてだったので
ちょっとだけ、嬉しくて救われたような気持ちになった。
俺は心の中で、奥山に感謝した。

髪の毛問題は、親に言いって学校にねじ込んでもらった。
でも今のように学校の方が親より強いということはなかったから
謝罪なんて一切なかった。あのゴリラは柔道の時間になると、
俺の時だけ本気で投げた。意識が飛びそうになるくらい。
ただのあてつけだってのは、子供だって理解できる。
でも彼はある部活の顧問で全国大会の常連だったから
学校内でもかなり力があったから、俺は何もできなかった。
俺が苦しそうにしていると、たまに奥山が自分から志願して
身代わりになってくれた。やっぱこいつ本当は優しいやつだったんだ。

ゴリラはうっとうしかったが、拾う神あればとはよく言ったもので
中には人情派のいい先生もいた。社会の先生だったがかなりの変わり者で
年号を暗記させるだけではなく綿花をプランターで栽培して、昔の道具で
糸をより、機織りの真似事なんかを授業中にやらせてくれた。
その道具は休みの日に先生とクラスの何人かで近所の農家の蔵へお邪魔して
借りてきた。帰りにはラーメンまでおごってくれた。

そのメンバーの中にいたんだ。あの子が。

126:1@\(^o^)/: 2016/08/10(水) 15:50:46.93ID:TYpDn0l8.net
ごめん違うな

学校の方が親より強い→×
親の方が学校より強い→〇

当時は先生様みたいな風潮がまだ残ってたんだ。田舎だったし。

127:1@\(^o^)/: 2016/08/10(水) 16:01:35.14ID:TYpDn0l8.net
彼女は背が高くて、いつもツインテールにしているきれい、
というよりは可愛くて活発な女の子だった。
違う小学校から入ってきたので知らなかったが、
その先生の課外授業の際にはいつも参加していた。
もちろん、俺も。そして家に居場所のない奥山もよく来ていた。
彼女のことは、横山さんとでも呼ぼう。

それに俺と奥山はバスケ部に入ったが、彼女はバレー部だったので
同じ体育館で練習してたから仲良くなるには時間がかからなかった。
(スラムダンクの流川と同じバッシュ買ったのは内緒な)
他にも何人か定期メンバーみたいな感じのやつはいたが、
活発な横山さんは女子と遊ぶより俺たちと遊ぶほうが楽しいみたいだった。

とにかく小学校のころよりもはるかに明るい青春がやっと俺にもやってきた気がした。

134:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2016/08/10(水) 20:02:16.61ID:ZWEBmAV1.net
女難うんぬんの話だから
まさか…横山も…

138:1@\(^o^)/: 2016/08/10(水) 21:01:44.26ID:TYpDn0l8.net
俺たちは何事もなく2年生になった。三人とも別々のクラスになってしまったが
変わらずよく一緒に遊んだ。といっても公園でくだらない話をしたり、
やっぱり俺んちで漫画をみたりゲームをしたりするだけ。
金もないし、そもそも遊ぶところが無い。
部活に勤しみ、やたらめったら食い、遊び、寝て厨二病が完全に発症するころには
俺も奥山も背の高かった横山さんを追い越していた。

初めて奥山と彼女を家に連れて行ったときタイミング悪く
母親と姉と次女の綾子姉が家にいた。
普段は見たことのないようなカップでお紅茶が出てきたのを覚えている。
テレビのある部屋は一応閉め切っていたが、曇りガラスの向こうで
姉と母親が蠢いているのが見えた。ニヤニヤすんじゃねーよ。

でも確かに、この頃には好きになっていたんだと思う。
そんな話はしたことが無かったが、奥山だってまんざらではなさそう。
またお前は恋敵にクラスチェンジするのかよとも思ったが
3人でいる時間が楽しくて、壊したくないって気持ちの方が勝っていた。

そんな淡くも幸せなある日の放課後。

139:1@\(^o^)/: 2016/08/10(水) 21:03:18.55ID:TYpDn0l8.net
夏休みが間近に迫った季節で、夕暮れが真っ赤に空を染めていた。
暑いからちょっとソフトクリーム食って帰ろうぜという流れになった。
本当は校則違反だったが、ゴリラにさえ見つからなければ問題ない。
3人で商店のほうに歩いていくと手前の路地の奥で横山さんが何かを見つけた。
どうやら女子3人が1人の女の子を囲んでいるようだった。
その三人は、一つ上の学年で有名なビッチだった。
対してもう一人の女の子は俺のクラスの隅っこにいる眼鏡をかけた
おとなしそうな子だった。名前を吉田さんとでもする。

彼女はあまり友達がいなそうで、休み時間にはいつも難しそうな本を
読んでいた。俺も本が好きだったので通っていた図書館でも何回か見たことがある。
物静かなで教養のあるそうな子。そんなイメージを俺は持っていたが
近づきがたいオーラを背負っていたので話したことはほとんどなかった。

一瞬俺らが止まっていると、横山さんが走り始めた。
俺と奥山は顔を見合わせあわてて後を追いかけた。
相手は女子とはいえ先輩だ。内心困ったことになったなと思いつつも
さすがに好きな子ひとりに押し付けるわけにもいかない。
横山の顔をみると、ちょっと目をキラキラさせながら笑っている。
いかん。男気スイッチ入っちまってるじゃないか。
ここで負けるわけにはいかない。いいところを見せるのは俺だ。
そんな器の小さな考えが俺の脳裏を支配した。

149:1@\(^o^)/: 2016/08/10(水) 23:44:45.83ID:TYpDn0l8.net
俺たちが追いついた時には横山さんは

「何やってるんですか?」と少し息を切らせながら彼女たちに声をかけていた。

「なんだよお前関係ねーだろウケるんだけど」とビッチズ。

よく見たら吉田さんは目に涙を浮かべている。今にも泣きだしそうだ。
彼女は小さい体をぷるぷると震わせながら、それでも必死に耐えているように見えた。

これはいかん。奥山にイニシアチブを取られるわけにはいかない。
俺はとにかく焦っていたので後ろからとりあえず声をかけた。

「あれ?吉田さん?どうしたの?」

今思い出しても自分で情けなく思うが、かなりわざとらしく声も裏返っていた。

150:1@\(^o^)/: 2016/08/10(水) 23:46:18.88ID:TYpDn0l8.net
「なんだよおめーらよ。2年か?どっかいけよ。お話ししてただけだよなー?吉田ちゃん」

んなわけあるかビッチよ。どう考えてもおかしいじゃねぇか。
お前の安っぽい化粧よりもおかしいよ。その爪とかどういうことになってんだよ。
俺はそんな考えを表情に出さないように気を付けながら、さらに口を出そうとした。

「いやあの…」正直おれは緊張でパニックを起こす寸前だったと思う。

俺が言いかける前に奥山が横山(と俺を)守るようにしゃしゃり出た。
ちなみにこいつは元いじめっ子だけあってなかなか迫力のある面構えをしている。
上背も、身体の厚みも完全に負けている。空手を少しかじったとはいえ、
天性のいじめっ子には簡単には勝てないのだ。

「センパイ、イジメっすか??やめましょうよそんなこと」

奥山ぁあっぁぁっぁぁぁっぁああああああああ!
おれがかっこいくなるとこだろぉぉぉぉおおおおおそこは!!!


151:1@\(^o^)/: 2016/08/10(水) 23:47:44.35ID:TYpDn0l8.net
全員の視線が奥山に集まる。

「んだよお前。あれ?こいつあれじゃん?あのアル中クズ親父の」とビッチ

奥山は一瞬あの時のような悲しそうな顔を見せたが、すぐに笑顔になってこう言った。

「そうですよー。クズの息子が頭下げるんで、今日は勘弁してやって下さいよ。
そんなことしてるとウチの親父みたいにクズになっちゃいますよ。」

奥山は深々と、似合いもしない香水の匂いをぷんぷんさせている尻軽女たちに頭を下げた。
俺は思わずうぉぉぉ…マジかこいつ、、格好いいじゃないかよ…と思ってしまった。

「奥山くん…」横山さんも、なんだかぽーっとしてしまっている。

これはまずい。俺の出番まるでないじゃないかよ。
いやいやそんなことより、とりあえずこの場を収めるには乗っておくしかないと思った俺は

「俺からもお願いします。クラスメイトなんで。」

と奥山の隣に一歩出て一緒に頭を下げた。それを見た横山さんもそれに倣った。
吉田さんは涙目こそおさまったようだったが、なんだか信じられないものでも
見てしまったかのように一回大きく目を見開き、次の瞬間ハっとしたような顔をして
ペコリとちいさく頭を下げた。言葉はまだ出せないようだった。

152:1@\(^o^)/: 2016/08/10(水) 23:52:09.78ID:TYpDn0l8.net
「んだよ気持ちわりーな。もういいや。つまんないからカラオケでもいこ」

ビッチ達はまるでおもちゃに飽きてしまった子供の様な顔をして、踵を返し去って行った。
俺は内心、あいつらの周りにいる怖い先輩たちとのもめごとを危惧していたから
大事になる前に自分の頭一つを犠牲にして事を収めた奥山を素直に尊敬した。
たいして広い人間関係があるわけではない当時の俺にとってこんな奴と友達になれた
ことが俺は、誇らしかった。自分の根性のなさを抜きにしてもだ。

とはいえ一番オイシイところをもって行かれ、ちょっとした嫉妬も感じていた俺は
一呼吸おいてから中学生にしては背が低くリスのような可愛らしさを持った
吉田さんの方を向き、自分にできる最高の優しい笑顔を浮かべているつもりで言った。
近くで見ると彼女にはすこしだけ、そばかすがあった。

「大丈夫?怪我とかない?何か取られたりとかしてない?」

途端、吉田さんが堰を切ったように泣き出した。
ぺたんと地面に座り込み、ついでにうぅぅぅ…と低く唸った。
ボブっていうのかな?短めの黒髪が呼吸をする度にゆらゆらと揺れた。
きっと猛獣のようなビッチどもから解放されて気が抜けたんだろう。

「えぇぇぇえちょっ、、どうしたの?どっか痛いの?」

同年代の女の子の涙なんか目の前で見たことが無かったんだ。
俺はそんな間の抜けたことを言うのが精いっぱいだった。
どうにかこの事態を収拾しようと思わず小さい子にするように
吉田さんの頭をそっと撫でた。いや、撫でてしまったんだ。

158:1@\(^o^)/: 2016/08/11(木) 15:06:17.86ID:EpMbwdaB.net
「あーイッチ泣かした」と奥山 てめぇこの野郎。
「ひどいひどーい」と横山さん。意地悪な顔も可愛いです。

俺はオロオロすることしかできない。そんなスキルはもっていないよ。
横山さんは鞄からこの世にこんなに清潔なものはあるのか?というくらい
真っ白で、女の子らしい縁取りにピンクの刺繍をあしらってあるハンカチを
取り出して吉田さんにそっと差し出した。
なぜだか俺、このハンカチの事を昨日の事のように覚えているんだ。

それを見た吉田さんは何故か余計に一度大きく泣いた。
優しさが沁みるって感情は俺たちにも伝わった。
誰も一言も発せず彼女の気持ちが落ち着くのを待った。
横山さんも、だまってにこにこと微笑みながらハンカチを差し出したままだ。

159:1@\(^o^)/: 2016/08/11(木) 15:06:39.60ID:EpMbwdaB.net
ひとしきり泣いた後、吉田さんはおずおずと受け取って眼鏡をとり涙を拭いた。
真っ赤になってしまった目は若干痛々しくも映ったが
そんな野暮なことを突っ込むやつはひとりもいなかった。
姉と妹くらい背丈の違う二人を見ていると俺はななんだかくすぐったいような
気持ちになった。奥山のほうに顔を向けるとちらっと目が合った。
おそらく似たような気持ちだったんだろう。ニコッとあいつは笑いかけてきた。
なんとかなったな。そう心の声が聞こえたような気がした。
ああほんとだ。お前のおかげだよ。俺は胸の中でそう返した。
その時俺は、こいつは俺なんかより遥かに大人なんだと感じた。
未成熟でいい加減な俺はいい恰好をすることしかはじめ頭になかったから。

数分もすると吉田さんは落ち着いたのかゆっくり立ち上がり、やっと言葉を発した。

「あ、あのっあ…ありがとうございましゅっっっつ!…た。」

口を開いたと思ったら、それはもう見事にスカっとするほど盛大に噛んだ。

161:1@\(^o^)/: 2016/08/11(木) 15:08:09.63ID:EpMbwdaB.net
一瞬の静寂。そのあと何かが破裂するくらいの勢いで爆笑。
笑っちゃ悪いとは思ったが、これはもうしょうがない。
つられて吉田さん本人も照れながらも一緒に笑顔を見せる。
…ん?眼鏡を取って笑うとなかなか可愛いじゃないか。
背は低く、まだつるぺたではあったが愛嬌のある顔立ちをしている。
紅潮した顔にあるそばかすもチャームポイントといって良いだろう。

俺はそのとき漠然とやっぱり女の子は怖い顔や泣き顔よりも笑顔がいいと思った。
おっさんにもなると怒った顔も可愛いねぇなんて軽口も言えるようになるんだが
それはもっともっと後の、汚れきった後の時代の話。

俺は、いや俺たちは皆、本当によかったな、この子がもっとひどい目に合う前に
気が付いてあげられてと心から思ってた。

吉田さんは一言、

「ハンカチは洗って返します。ほんとにありがとう」と

小さく言って愛嬌のある笑みを浮かべひとつお辞儀をして帰って行った。
出るときには夕暮れだった空がいつのまにか群青色に変わっていた。
ソフトクリームは食べそびれたが、悪い気分ではなかった。

162:1@\(^o^)/: 2016/08/11(木) 15:09:50.12ID:EpMbwdaB.net
俺たちも吉田さんの小さい背中を見送ってか途中まで一緒に帰ることにした。
俺と奥山は横山さんを中心に挟み込むようにして並んで歩いた。
それぞれの家路に通じる分岐路の手前で横山さんが思い出したように笑い、
俺と横山の少々ごつくなり始めてきた腕に自分の腕を絡ませてきた。

衣替えはすでに終わり夏服になっていた俺は横山さんの素肌に初めて触れた。
どくん。と俺のちっぽけな心臓は跳ね上がった。
もう夏だというのに横山さんの素肌は信じられないくらいさらっとしていた。
俺はどきどきして奥山がどんな顔をしているか確認することもできなかった。

彼女はそんな俺の気持ちを知ってか知らずかさらにぎゅっと抱きしめるように
俺たちの腕を引き寄せ、こう言った。

「あたし今日の事、一生忘れない。あんたたち、かっこよかったよ!」

セェェェェェェフ!たち!俺も入ってた!!よっしゃぁぁぁぁあ!!!!
小踊りしそうになる自分を必死に抑え、別に興味なんてないって顔を
無理して作っていた俺は、そこであることに気が付いた。

…当たっている。その、乳が。

163:1@\(^o^)/: 2016/08/11(木) 15:12:35.97ID:EpMbwdaB.net
俺の全神経は、無意識のうちに肘の先に集中していた。
幼稚園児のゆうちゃんとも、スケバンのおっぱいとも違う感触。
100人いたら、100とおりのおっぱいがあるのか…と俺は顔を真っ赤にしながら
そんな知能指数の低い真理に到達していた。
俺はなんとか勃起しようとする息子を抑えるために円周率を数えようとした。
しかし10ケタくらいしか知らないことにすぐに気が付いた。

幸運にも分岐路はすぐそこだった。
俺と奥山は、手を振って横山さんを見送った。
それじゃ俺も、と言いかけたところで奥山が口を開いた。

「よかったな…」
「ああ、よかった」俺はそう返した。
「ところでさ…当たってたな…」と奥山。
「ああ、当たってた」と俺。

あいつもだったんだ。さっきはすごく遠くに、大人に感じた奥山が
俺と同じことで舞い上がっていたということに気が付き、嬉しく思った。
俺たちはその後黙って別れた。同じ気持ち(と感触)を共有した漢たちに、
それ以上の言葉は無粋でしかなかった。

165:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2016/08/11(木) 18:07:28.19ID:e3E6YLRL.net
ここ最近の話は女難って感じはしないな

166:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2016/08/11(木) 18:20:09.11ID:xy3LcTMA.net
まだあわてるような時間じゃない

167:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2016/08/11(木) 19:53:51.93ID:458UdftJ.net
吉田さんは今の1の奥さんとみた

169:1@\(^o^)/: 2016/08/12(金) 00:02:36.05ID:WgAsFJWe.net
>>167
まぁよかったら最後まで読んでくれ。大人編は短めの予定。

168:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2016/08/11(木) 20:41:41.07ID:663rPJ+j.net
男はどうしようもなくバカになってしまう瞬間があるよな……。どうしようもねえよ本当。

169:1@\(^o^)/: 2016/08/12(金) 00:02:36.05ID:WgAsFJWe.net
>>168
だからこそかわいいじゃないか。

さて、今日は短いけど投下します

170:1@\(^o^)/: 2016/08/12(金) 00:03:08.18ID:WgAsFJWe.net
次の日か、そのまた次の日か。

1学期の殆ど最後の、消化試合のような授業を受けるため俺は一応登校した。
校門まで続く右側が住宅街で左側が茶畑の長いながい坂道を上る途中にある
バス停のベンチにこないだの小動物が緑を背にして本を広げて座っていた。
集中しているのか、至近距離に近づいても彼女はまったく気が付かない。

本の背表紙を見ると
村上春樹の「ノルウェィの森」だった。俺も大好きなタイトルだ。

「吉田さん?おはよう。それ、春樹?」と声をかける。

一瞬ビクっとした彼女は眼鏡ごしに上目づかいで恐る恐る俺の方を見る。
そしてようやく認識したのか、ちょっとほっとしたように笑い、挨拶をかえす。

「おはようございます。俺君。そう私この人の本大好きなの。」
「俺もだよ。いつも本読んでるよね吉田さん。こんなところで何してるの?」
「昨日のお礼を言おうと思って。教室だとみんないるから恥ずかしくって。」
「そんなのいいのに。とりあえず学校行こう。遅刻しちゃうよ」
「あ、そうだった!私本読み始めると時間忘れちゃって。」

171:1@\(^o^)/: 2016/08/12(金) 00:04:23.90ID:WgAsFJWe.net
ぱたぱたと本を鞄に仕舞い、彼女は俺の後ろをちょこちょこと付いてきた。
学校まで数百メートル。俺は彼女と村上春樹について語りながら登校した。
頭の隅で、この子は俺が逆方向の家だったらどうするつもりだったんだろうと
思ったがまぁいいやと放り投げた。

「あ…そういえば…ハンカチ洗って来たんだけど…」と吉田さん。
「そういえばそうだったね。後で一緒に行く?ほかのクラスだもんね」と俺。
「そうしてくれると嬉しいな。私、人見知りだから…」可愛いこと言うじゃないか。
「じゃあ、部活あるから授業終わったら体育館に来てくれる?」と俺は言った。
「うん大丈夫。私美術部だから、早く終われるし。」実は初めて知った。

彼女は学校に入ってからはまるで貝のように押し黙り全くの他人のように
ふるまった。俺も気持ちは分かったから、わざわざ話しかけることもなかった。
まぁ、昨日まで殆ど話したことはなかったから他人みたいなものだったが。

しかし俺はいつもひとりでいる吉田さんを見ていたからわざと、誘ったんだ。
ハンカチを返すだけなら簡単だったが妙な親心の様なものが湧いたんだよね。
だって、俺も昔ずっとひとりだったから。

172:1@\(^o^)/: 2016/08/12(金) 00:04:47.25ID:WgAsFJWe.net
約束通り、部活の終了時間の少し前に彼女は現れた。
体育館の、いちばん端っこの両開きの扉の脇にちょこんと。

ネットの片づけがあるのでバスケ部よりバレー部のほうが終了時間が遅くなる。
先に終わった俺と奥山は吉田さんに声をかけた。

「おつかれさまー。横山さんももう終わるから一緒に途中まで帰ろうよ。」と俺。
「そうしよそうしよー。ソフトクリームでも食って帰ろうよ」と奥山。食い意地か。

吉田さんは恥ずかしそうに、でも嬉しそうにこくんと頷いた。

その日から、俺たち仲良し3人組は、4人になった。
昨日食べそびれたソフトクリームは、甘く冷たい夏の味がした。

彼女は言葉数は少なかったけど、微妙に天然でイジりがいがあったし
俺と読む本の趣味がよくあった。横山さんもまるで妹ができたみたいと
よく考えると結構失礼なことを言いながらも歓迎していた。
奥山もまんざらではなかった。そりゃぁ、年頃の男の子だ。
女子が増えて嬉しくない奴なんていない。
それに俺たちはいじめを経験していたから、彼女の気持ちがよくわかったんだ。

一学期が終わり、長い夏休みが始まる。
それまでの少しの間に俺たち4人は随分打ち解けていた。
吉田さんは勉強がよくできたから、ボンクラな俺たちは図書館や俺のうちに集まって
宿題を教えてもらったり、みんなで映画を見に行ったりした。

いつのまにか彼女はよく笑うようになっていた。
それを3人とも、ほほえましく感じていた。
本当に健全に、楽しく時間は過ぎて行った。

仲の良い友達ができるってのは人生においてもっとも美しい瞬間だ。
みんなにもあるだろう?少なくとも俺にとっては忘れられない夏だった。

173:1@\(^o^)/: 2016/08/12(金) 00:05:16.23ID:WgAsFJWe.net
鳴いている虫の音が少しずつ変化してきた頃。

俺の生まれた町では夏休みの最後の方に盆踊りが行われる。
場所は俺と奥山が通っていた小学校だ。
そこへみんなで行こうという話になった。もちろん断る理由はない。
早めに俺のうちで奥山と集合し、ふたりで出かけた。
夕暮れがすぎあんなに日中騒がしかった蜩もおとなしくなっていた。

待ち合わせの時間に俺たちは懐かしくも苦い思い出のある小学校へむかった。
校舎のの真ん中の時計の下にある歳をとった大きな桜の樹。そこが目的地だった。
その下に彼女たちはいた。俺たちは予想もしていなかったが二人とも浴衣を着ていた。

祭りのために青々とした葉はライトアップされていて
それをバックに彼女たちはとても可憐に見えた。

横山さんは白地にピンクの帯。その上にひまわりの花が咲いていた。
いつものツインテールではなく綺麗な髪をひとつにまとめていた。
吉田さんはシックな紺地に渋い紅帯。和風の文様が非常に彼女らしい。
暗い印象を抱かせかねない眼鏡もかけていなかった。

一瞬俺と奥山は言葉を失い、何かとても崇高なものでも見たように息をのみ、
そして彼女たちに声をかけた。正直人違いかと思った。

「おっっおす」俺は間の抜けた声をかけた。
「おーふたりともいいね~。すごくよく似合ってる。」奥山ぁぁぁぁぁあああ!

これはあれじゃないか?人生初の。だっ…ダブルデートってやつか?
いつも気の置けない友人に徹していた俺はこの時異常に異性を意識した。
もちろん横山さんの事は好きだった。でもそれは子供の淡い憧れにすぎなかった。