商店街振興組合の人たちは、この客引きやスカウトが、歌舞伎町を訪れる人々、特に若い女性を怯えさせ、街をイメージダウンさせる存在だと考えた
ただし、この時点では組合員たちはとっくに不在地主化していて歌舞伎町にはまったく住んでいないので、実際に自分たちの目で確認したわけではなく、客引きを悪者だと「決めつけた」わけや
対策しようにも警察は客引きスカウトを相手にいちいち動いてくれないので、自分たちで街のパトロールをすることにした
まぁパトロールとは言っても、ただのおじさんたちが怖そうな客引きを相手に、注意したり指導したりできるわけはないので、ほとんど効果はないわけやが
ただこのパトロールを通じてビルオーナーたちは歌舞伎町の実際の姿、スカウトや客引きたちが本当に悪者なのかってことを自分の目で見ることができたわけや
すべての風俗営業を排除するんじゃなくて、法令を守っている「良い」店については、街の特色として認めていこう、と
ただ路上での客引きやスカウトはいけないことやから、こいつらは「悪い」やつら、という扱いなんやけどな
きちんと許可を得て適切に営業している店なら、むしろ歌舞伎町の発展に寄与しているとも言えるんじゃなかろうか、ということやろな
んで、2000年ごろから組合内に「委員会」というインフォーマルな組織が結成された
サークル内サークルみたいなもんやな
あくまでフォーマルな立場、地元組織としての組合は、自分たちのビルには風俗店は入れない
だけど、インフォーマルな立場の委員会としては、こういう人たちもテナントとして受け入れていきますよ、と
フォーマルな立場では積極的に自治活動に乗り出す一方で、インフォーマルな立場としては風俗店ともかかわりを持つという
言わば二枚舌外交のようなことをやり始めたわけや
歌舞伎町商店街振興組合は、自治体と風俗店との間を取り持つような役割を担うようになったんや
そしてこれが、歌舞伎町を成り立たせるメカニズムの一つであると、ここで言っておくで
風俗営業店ってのは、なんとなく想像がつくと思うけど、まぁ危ない人たちも少なくはないので、素人が直接契約交渉なんかしたらあっという間に不利な条件で丸め込まれてしまう
だから当然ビルオーナーと風俗店の契約は、不動産業者が仲介してるわけや
このことも頭の片隅に入れておいてほしい
そしてそれらの客引きやスカウトについて書いていくで
といってもキャバクラやホストについては行ったことがある人も多いと思うし、ワイが授業で聞きかじった話よりみんなのほうがよっぽど詳しいと思うので、かなり割愛させてもらうで
なのでヘルスやソープ、デリヘルなどの性風俗店についてから書き始めようと思う
ちなみに歌舞伎町では、店舗型(ヘルス・ソープ等)の性風俗店の新規出店は認められていない
なので、現存している店はすべて、30年以上営業している、笑っちゃうぐらいの老舗ばかりや
現在都内で新規出店が認められているのは吉原だけやったはず
ただ無店舗型、ようするにデリヘルはこの縛りはないので、いくらでも新規出店できるんや
ここでちょっとみんなが疑問に思うかもしれないのは、「無店舗」型なのに、なぜ歌舞伎町にこだわる必要があるのか、ということやと思う
女の子をホテルか客の自宅に派遣するだけなんやから、場所はどこでもいいんじゃないのか、と
確かに出店を規制する法令はないんやが、デリヘルといえども、客から指名が入るまで女の子たちが待機している「待機所」は必要や
そんでその待機所にするために借りるテナントは、もちろんオーナーの承諾が必要
そういう業者に自分の不動産を貸すことに理解のあるオーナーは、必然的に歌舞伎町などの繁華街に限られてくるし、そういうオーナーの情報を持ってるのも、やはり繁華街周辺の不動産業者が多い
さらに、繁華街にはホテルが密集してることも理由の一つや
無店舗型といえども、空間的文脈と無関係ではないということやな
話を戻すが、性風俗店で働く女の子(ワーカー)の動機のほとんどは、「給料が高いから」や
しかし現実には、必ずしも高給が稼げるとは限らない
なぜなら、大半の性風俗店は「完全出来高制」だからや(一部には保障給=業績に関係なくもらえる給料が出るところもある)
つまり客からの指名が入らなければ、どれだけ出勤しようと1円ももらえないわけや
そうなると当然、月に何百万と稼ぐ売れっ子もいれば、全然稼げない人も出てくる