返そうにもどこの誰だか分からない。
いつ会えてもいいようにそのまま持ち歩いた。 それから平日は家庭教師、週末はホテル清掃に勤しんだ。 父親がいないことを知って以来、家庭教師先では頻繁に食事に連れていってもらった。有名なフレンチ、和食、どれも一人では手の届かないレストランだった。
本当に良くしてもらった。
いつ会えてもいいようにそのまま持ち歩いた。 それから平日は家庭教師、週末はホテル清掃に勤しんだ。 父親がいないことを知って以来、家庭教師先では頻繁に食事に連れていってもらった。有名なフレンチ、和食、どれも一人では手の届かないレストランだった。
本当に良くしてもらった。
2ヶ月ほど経って、ホテル前でまたあの白髪のお爺さんに再会した。
お金を返す機会だと駆け寄った。
「あの、以前靴を掃除したものですが」
ああ、と笑ってお爺さんはお辞儀をした。
「あの時はありがとう」
「いえ、あの、お金を返したいんです」
「大した額じゃないからくれてやるよ」
お爺さんはまた封筒をくれた。
次のページに続きます…