ユカは続けた
「ごめんね
実は私のお父さんなんだけど、ホントのお父さんじゃなくて
義父ってやつなんだ
私は本当のお父さんのこと大好きだったんだけど
1年前に離婚しちゃって
それでお母さんと一緒に住むようになったんだ
女1人でかわいそうだなって思って
お父さんにはたまに会いにいけばいいやって思ってた
お母さんも良いって言ってくれてた
…でもお母さんと住み始めると
お父さんに会っちゃいけないって
会おうとするとすごく怒るようになった
あ、これはまだお母さんの再婚前ね」
俺はうんうんと頷くことくらいしかできない
ユカが話を続ける
「それでね、なんか離婚して3ヶ月目くらいから
知らない男の人、前のお父さんよりもちょっと若いんだけど
家に来るようになった
私も大人だから
お母さんの新しい彼氏かなって思ったよ
すごく嫌だったけどお母さんの人生だし
幸せになってくれるといいなって思ってた
別に悪い人に見えなかったしね
いい人そうには見えたから
それでね
結局前のお父さんと離婚してから半年後に
お母さんはその人と結婚しちゃったの」
「急に結婚したんだよ
お母さんは、離婚後半年立たないと結婚できなかったから
って言ってた
それは法律的に決まってるらしい
でもそんなことじゃなくて、何の相談もなしでビックリした
冷静になろうとは頑張ったよ
でも何故か
私の大好きだったお父さんを
お母さんは裏切ったんだなってのは何となく分かった
離婚の原因は私は知らされてなかったけど
お母さんの浮気が原因だったんだよ」
「それでね
なんで私がお母さんの側についた勝手理由がもう1つあってね
お母さん躁鬱病って病気なんだ
気分が変わりやすくて大変な病気ね
それが心配でお母さん側についたってのもある
だから浮気や再婚も病気の影響もあるかもってのはちょっと思ってたんだけどね
それでもお母さんの人生だから応援しなきゃって思ってたんだ」
俺は相変わらず頷くだけ
ユカは続ける
「それで、そういう事情があって新しいお父さんができたの
それで一緒に住むことになってね
最初の3ヶ月くらいまでは良い人っていうか何とかなかよくやっていけるかなって
そんな感じがしてたんだ
でもね…
ここからちょっと言いにくいんだけど話してもいい??」
なんか俺はちょっと嫌な予感がしたが、
続けて話を聞いた
「それでね
再婚して一緒に住むようになって4ヶ月くらい経った時かな
だから今から3ヶ月くらい前?
その時から、えっと…引かないでね
新しいお父さんが私に妙に接近するようになったっていうか
…何ていうか、お母さんのいないとき狙ってね
うん、ちょっとボディタッチしてくるっていうのかな
不自然なっていうか…そういうのが始まったの
私も女だから気づくよね、ちょっとおかしいって
でもお母さんには絶対に言えないよね
病気のこともわかってるから余計に、言えないよね」
俺の顔はたぶん青ざめかけてたと思う
感情の変化を表に出さないように頑張ることしかできない感じだ
続きはもう聞きたくなかったけどだけどユカは続けるんだよね
「それから、ちょっとそういうのがね、エスカレートしてきて
言いにくいんだけど洗濯した私の下着を部屋にわざわざ持ってきたりとかお風呂の更衣室に私がいるって分かってて
いると思わなかったとかって言って開けちゃったりとかあって、
お母さんはね、仕事で夜とか週末いないことが多くて、新しいお父さんと居る時間って結構あるんだ
それで…これはつい最近なんだけどお母さんがいないとき、
私がまだ寝てる時だったんだけどなんか横で音がしたんだ
そうしたら、うっすら目を開けてみると、新しいお父さんが、なんていうか…その、一人でしてたんだよね
うん
私すっごく怖くて、怖かったんだけど、寝たふりして、出て行くまで待ってたんだ」
俺はどうしようもない怒りの感情を抑えるのに必死だ
「それでね、そんな感じのことが続いて、でも誰にも言えなくて
友達なんかには言えないし…だって言えないでしょこんなこと
だから見ず知らずの人に聞いて欲しかったんだ
俺君も、こんなこと聞いたら引くよね?気持ち悪いって思うよね
だから、そういうことがあって以降、週末とか夜は、お母さんがいないときはね、なるべくどっか外出するようにしてる
お母さんはこのことは知らないよ、言えるわけないし
でも、お母さんのことは大事だからこれは言わないつもり、傷つけたくないから
でも私も、もう少しお金溜まったら出ていこうと思ってるから、あと少しの我慢だと思ってる
でもすぐに出ていけるわけじゃないから、…一人で抱え込むのは辛いから、
聞いて欲しかったんだ
ごめんね」
そういってユカは静かに、話すのをやめた
この時、初めて2人とも無言になった
そりゃそうだよな
こんな時に童貞の俺が気の利いたことなんか言えるわけない
会ったこともないユカの義父に憎悪の感情を抱いたよ