今日は外行きたいけどどうしようか、などと考えていると、隣兄の部屋で隣兄と隣姉が朝から喧嘩をしている。
半年近く付き合っていて何故同棲しないのか気になるが、まぁそれぞれ思うことがあるんだろうな。
スミーは少し眠そうだったので二度寝。自分はクリーニングに出していた隣姉の服の回収。
家に戻り、お礼にカレーをタッパーにいれて服と一緒に持ち、隣姉の部屋をピンポンする。
不機嫌そうに出て来たが、お礼を言ってカレーを渡す。
「ちょっと愚痴って良い?」
なんでも朝飯のご飯の硬さが固い、柔らかいがきっかけで「ご飯くらいちゃんと炊けよ」と言われて揉めたらしい。本当にどうでもいい喧嘩だ。
「炊く前に米の高さを斜めにしておくと柔らかいのも硬いのも同時に作れますよ」
「そうなの?」
「マジです」
愚痴が止まったので自分の部屋に戻り、カレーをタッパーにいれて今度は隣兄に荷物受け取りのお礼に。
「俺です、昨日帰ってくるの遅かったみたいだから今日お礼持ってきました」
「おぉ有難う」
「また喧嘩したみたいですね」
「色々あってな。ちょっと上がってくれ」
隣兄はかなり真面目に色々話してくれた。開陽台のライダープロポーズの話を聞いて、隣姉との結婚を真剣に考えている事を聞いた。
「その話を隣姉にしましたか?」
「まだしてない」
「生意気言いますが、姉には丁寧に言わないと伝わらないっすよ。」
「クソ生意気な意見ありがとう、でも確かにそうだな。」
兄の部屋から戻ると放置されていたスミーがご立腹。
事情を話すと
(・∀・)
実に興味深い反応。国は違っても恋話は楽しいみたい。
今日は近くにある原生林公園の一部を散策して楽しむ事にした。リヤカーにクッションを置き、スミーを載せてゆっくり歩いて行く。
程良く汗をかきつつ、景色を眺めながら休んで水を飲み、また歩き出す。時折すれ違う人が苦笑いしていた。
スミーをドナドナしていると、コココココとキツツキ(アカゲラ?)が木を掘る音。
(*゜∀゜*)てぃっか!
キョロキョロと鳥を探したりして楽しそうだ。喜んでもらえるのは嬉しい。まぁリヤカーで引っ張ってもらえたら普通に楽しいだろうけど。
帰り道、パンを買って帰る。おんぶして入ったからか最初はちょっと変な目で見られたが、幾つかパンを選んで会計する時に色々パンを多めに入れてもらった。
再びスミーをドナドナして行く。
アパートの前に来ると隣兄と隣姉がまたバーベキューの準備をしていた。ご飯の硬さ問題が解決したお礼だとか言っていたが、単に飲みたいだけだと思う。
(・д・)
スミーは二人の様子を見ていた。
(*´∀`*)
結婚するんですか?
隣姉がピクッと反応して顔が赤くなりながらmay beと。
隣兄は英語がわからないからか不思議そうな顔をして俺に聞いてきた。
「太らないんですか?って聞かれて、多分って答えてましたよ」と教えてあげる。
隣姉が肩を殴ってきた。
肉を焼いたり串焼きを置いたり、パンを端っこで温めたりしながら夜は深くなっていく。
スミーも隣姉も飲みながら色々ヒソヒソ話。兄に何話しているのか尋ねられるたびに「貧乳に悩んでるっぽいです」「むだ毛処理の相談みたいです」「ウェストの悩みみたいです」等と答えていたらまた肩を殴られた。
意味のわからないスミーはそれをみて
(*´∀`*)
ニコニコ
酔った隣姉は隣兄に「私を抱っこしろ」と、強気に甘える発言をしている。これはツンデレなのかな。などと思っていた。
「流星群来ているんですよ、天気良かったら見にいきませんか?」
「いいね!」
「スミー、Do you want to see shooting star tomorrow?」
(*´ω`*)yes
明日夜の予定は決まった。
スミーをおんぶして部屋に置いて、後片付けを手伝う。
「あの子足大丈夫?」
「いや、多分怪我していません。」
「わかってたの?」
「えぇ。手当していて違和感ありました、重心も怪我人と違います。」
多分ホームシックみたいな状態、人恋しく、だけどまだ北海道を離れたくない。そんな状態なのだろうと思っていた。
「姉さん、そろそろ覚悟決まりました?」
「何が?」
「何となくわかってるでしょ?」
「んー、ついに私も来たのかーって感じだよ正直」
「閉経が来たんですか?」
「このタイミングでそのネタ言えるお前すげぇよ」
「まぁ、兄は本気で姉さんラブ。それだけは嘘じゃないです」
隣兄が吐いてる音が聞こえる。
「あのバカの面倒見てくるわ」
「俺もスミーの様子見てきます」
部屋に戻るとスミーは日記をカリカリ。邪魔しないでおこう。
風呂を洗い、残り少ないシャンプーの中に着色料を入れて血が出る様に見える細工し、お湯を貯める。
「スミー、take a bath」
(っ・ω・)っ
だっこして運べの状態
だっこしてお風呂場へ。暫くしてスミーが悲鳴を上げて飛び出てきた。慌ててバスタオルをかけて、ジョークだと謝る。ちょっとやりすぎてしまった。
落ち着いたスミーに怒られながら「足大丈夫?」と聞くと、治った!と言っている。
なかなか風呂に戻らないので、結局怖がらないように扉越しに座って風呂上りを待った。
スミーが風呂を上がったのでコンビニに誘い、ハーゲンダッツを買って渡す。これで機嫌が良くなったから笑える。
家に戻って風呂に入る。
暫くしてスミーが風呂の電気を消した。
予想済みだったので風呂場で転んだような音を立てて、血みたいなシャンプーを洗い場に垂らし、頭を押さえて座る。
スミーが心配して風呂を覗いて悲鳴。
大成功!
泣きながら肩を叩かれた。
風呂から上がるとスミーはちょっと不機嫌。
黙ってマリオをつけてスミーに2コンを渡して始める。
約6分後ノーミス全面クリア。
(ノ゜∀゜)ノ オオォォォ-
スミーは驚いていた。
スミーもゲームをクリアして、ぬくったーの時間。布団を敷いて電気を消す。
スミーが転がってくるので脇腹を突っついて笑わせたりしているうちに眠くなったみたいで、グッスリ眠れた。
起床。今日の予定は近場の巨大公園キャンプ場で流星群を見る事を伝える。
(`・ω・)ゞ
スミーの服だけ旅仕様なのは可哀想なので、最初に大型衣料品店に行く。真っ青なTシャツと真っ白なYシャツとジーンズを買い、嬉しそうだ。
(*´∀`*)
フィンランドの国旗でも意識したのかと聞いてみたら、その通りだった。じゃあ俺も日本の国旗だ!と赤いTシャツを購入。
こんな馬鹿な買物は初めてだったが、気兼ねしない異性との買物はとても楽しかった。
帰りに炭と酒とシートを買ってアパートに戻り、外出中の隣兄部屋の前へ買ってきた荷物と重めの物を置き
【先にキャンプ場行ってます。車でこれ運んで貰えたら隣姉のパンツあげます】
と書き置きしておく。
自分の部屋で着替え、フィンランド仕様の服に着替えたスミーと一緒にテントと固形燃料、星座早見板と望遠鏡を持ってキャンプ場へ向かう。
途中でプロポーズカップルから近くに来たけど飯食べない?と連絡が入る。状況を説明すると
「そこにキャンプ場あるなら今日はそこに泊まるわ!」
と、良い返事。
スミーにその話を伝えると
(*´∀`*)
ニコニコしていた。
途中で発泡スチロール製ボックスに肉とか野菜とか大量に入れて、スミーの発泡スチロール製ボックスにはライダーさん達の婚約祝に買ったホールケーキを入れてゆっくりキャンプ場に向かう。
受付を済ませ、スミーと自分のテントを設置していると、カップルライダーも到着。苫小牧から札幌に向かう途中だったらしく、直ぐに来れたとの事。
カップルライダーさんも隣にテントを設営。
火を起こし、飲みながら道中の思い出話をダラダラとしていると隣兄姉も到着。カップルライダーの存在に驚いていたが、すぐに打ち解けて飲み始めた。
ただ、一番の問題は三組揃って大量に買込んできた最低14人分の食材をどうするか。
キャンプ場内にはあと数組のライダーとチャリダーが居たので、声を掛けて宴会がスタートした。
(・ω・)
最初は黙っていたスミーだったが、隣姉も適度にフォローをしてくれたので直ぐに笑顔を見せるようになった。
バイト代を貯めて旅する大学生、仕事を辞めて旅する人、退職して旅する人、いろんな人達が肉を食べ、持ち寄った酒を飲み、泣いたり笑ったり。
日が落ちて暫くして流れ星が見え始める。
「流れ星みようぜ!」
みんなで横になって沢山の流れ星を眺めた。
流れ星の度に聞こえる歓声の中
自分は望遠鏡でスミーに北斗七星の連星を見せたり、土星の輪が見られないかチャレンジ。
暫くして少し離れた所にいた兄が姉に何かを話し始めた。
そして
「結婚して下さい」
周りに聞こえる男らしいプロポーズがハッキリ聞こえた。
直後に
「はい、こちらこそお願いします」
涙声の返事が小さく聞こえた。
おめでとう!
カップルライダーが言う。
次いで定年退職した旅人も。
普通に退職したライダー
学生ライダーも。
スミーも二人が祝福されている事で何が起きたか理解したらしく、泣きだした。
起き上がり、ランタンに火を灯す。
発泡スチロールからケーキを取り出し
「本当はカップルライダーさんたちに持ってきたんですがね、兄姉も一緒にカットして下さい」
結婚式でも無いけれど、四人でならんでケーキ入刀。
爪楊枝で食べるサイズになったケーキをわけながら食べ、祝賀会が始まった。
みんな浴びるように飲み始める。シャワーが無いのにビール掛けしてるし。
そんな様子を見ていたら俺もつい嬉し泣きしそうになり、トイレに逃げる。
スタックして出られなくなった兄の車を押して助けて、二人で雪を片付けるようになり、それを知った姉がうちらに温かい飲み物を出すようになって、アパートの周りに雪だるまを作ったりして始まった交流。
多分一つでも何かがズレていたら今のプロポーズにはならなかったであろう様々なことが思い出され、涙が止まらない。
北海道に来てよかった。
暫くして落ち着いてトイレから出るとスミーが外で待っていた。
スミーにお礼を言う。
スミーが居たからライダーさんたちのプロポーズに出会えた事、ライダーさんたちのプロポーズを知った隣兄が覚悟を決めた事
一生懸命つたない英語で話しかける。
理解してくれたかはわからないけど、スミーは手を繋いでくれた。
スミーと二人で泣いて、そして笑った。
キャンプサイトに戻ると、プロポーズ仲間となった二組は両親に挨拶に行かなきゃとか、そんな話をしていた。
自分とスミーはまだ残っている食材を焼いて摘む。
時間が経ち、酔ってフラフラになったライダーさん、チャリダーさん達がそれぞれのテントへ消えていく。
カップルライダーさん達もケーキのお礼を言ってテントへ。
隣兄姉はテントを見事に忘れていた。
飲んでいるからアパートに取りに戻ることも出来ないし、車で寝るか、とか普段なら喧嘩しているような状態にも関わらず、建設的な事を言っていたので自分のテントを貸してあげた。
狭いテントの一人用寝袋に二人で入って寝苦しい夜を過ごせばいいんだ。
一人で星を眺めていると、スミーがテントから出て来て隣に座った。
(´・ω・`)つ
手を繋ぐ。流れ星が通過する度に
(´・ω・`)おー!
と、小さく呟く。
東の空が仄かに青くなりだした頃、半分眠っているスミーをお姫様抱っこしてテントに戻る。
そのまま寝た。
朝
酔い潰れていたグループが目覚める。
「寝過ぎた!」「気持ち悪い!」「フェリー間にあわねぇ!」
等と元気な声が聞こえる中、隣兄姉も起きてきた。
「わりぃ、寝袋買って返すわ」
昨夜微妙にカサカサとテント動く音が聞こえたし、荒い息も微妙に聞こえてきたし、きっと暑くて寝苦しく、寝汗がすごかったんだろうな。そう考えておこう。
隣兄姉は仲良く歯磨きに行った。
「おはー」
カップルライダーさん達も出て来た。今日はこのまま小樽に向かうとの事で、明日北海道を離れるらしい。
宴会の後片付けはこちらでやる事を告げて、彼らは手を振りながら去っていった。
それを追うように他の人達も出発。
残った四人で後片付けをして、大きな荷物を兄車で運んでもらい、スミーと自分は自転車で戻る事にした。
アパートに戻ると、隣兄姉が荷物をまとめて待っていてくれた。
「お盆でちょうどいいから今から実家に隣嫁つれて挨拶に行って来るわ!」
大量に余ったお酒を貰い、隣兄姉も旅立って行った。あの人ほんと自由だな。
アパートには住人が俺一人だけ。スミーが帰る日も近いし、何かやりたいことないかを尋ねる。
(・ω・)ふろ
取り敢えず部屋に戻る。
お酒を冷蔵庫に入れる。スミーは今日の入浴剤を選んでお風呂へ行った。
部屋の窓を開け、風を通しながら21歳の夏に起きた出来事を思い出していた。
真新しいノートを取り出し、表紙に北海道を描き、この2週間の滞在箇所に1.2.と数字を書き、対応するページに写真を貼って、余ったスペースに簡単な単語で何があったかを書いていく。
最終日にスミーに渡してあげよう。帰国してから何度か見てくれたら嬉しい。
一時間もかからず作業が終わったので本棚に隠しておいた。
入れ替わりで風呂に入り、上がるとスミーが日記をカリカリ書いていた。相変わらず読めない。
退屈なので脇腹を突っついてみる。
Σ(っ゜Д゜;)っ|
日記にズバーって線が伸びた。
(っ・д・)三⊃
肩を叩かれた。
やることが無いので外出。札幌駅につき、そのまま百貨店でスミーに浴衣を選んで貰い、荷物を駅ロッカーに入れて盆祭り会場へ。
祭りを見て回り、露店を覗いて食べ物を買う。
時々ナンパしてくる人が居たが、相変わらずの人見知りで無表情と変化する為問題は無かった。面倒なので手を繋いで歩く。
酔っぱらいが増えてきたので、撤収。JRに乗り我が家に戻る。
部屋に戻り、スミーが私服に戻る。
スミーに何処か行きたい所はないのか尋ねる。
ふる(・ω・`三´・ω・)ふる
せっかく旅に来たんだし、好きな事しなくてどうする。
( ;ω;)
( つω;`)
ガチ泣き。
そして
まぁ色々あった。
次の日。
まだ自転車乗ったら痛そうだから嫌、と布団から出てこないので朝食を軽く食べたあと一緒にマリオ3をしたり、テトリスをしたり。
目が疲れてきて布団でゴロゴロしたスミーを見つつ、素早く天ぷらを作る。やっぱり海老が大好きらしくチマチマ大事そうに食べるので自分のをあげる
(*´∀`*)
良い笑顔だ。
今日は動きたくないと言うので、そのまま昼寝したり、ゲームしたり。夕方近くなったら二人で野菜切ってすき焼きを作る。
(*・ε・*)
しらたきだけはイマイチな反応だったが、他は黙々と食べていた。
夕食を終え、風呂を貯めている間、また日記をカリカリと書いていたので何を書いているのか尋ねてみると
(〃艸〃)シークレット
書いているので先に風呂入ってと言われて入っているとスミーも入って来た。出ようとすると
(*´ω`*)フィンランドは男女でサウナ入るよ
といわれ、結局二人で入ることに。
人の胸元に背中を預けながら嬉しそうに笑うスミー、でもあと何回こうやってじゃれ合う事ができるのかと考えたら切なくなった。
風呂から上がり、スミーを座らせて髪を乾かす。ドライヤーの風にハラハラと綺麗な髪が踊る。
お盆が終わる。
ゲームをして笑って時間が過ぎていく。
電気を消して布団に横になる。スミーが潜り込んできて笑う。
朝を迎える。
布団を干して、スミーの浴衣をクリーニングに出し、荷物をまとめて国外郵送の準備をする。
帰宅して昼寝してゲームして、もう一度食べたいと言ったカツカレーを作り、また一日が過ぎていく。
夜に隣兄姉が戻って来た。
スミーが隣姉にいらないことを言ったせいでニヤニヤされながら宴会が始まった。
9月の連休に隣姉の実家に挨拶が決まったと聞く。
二人は明日から仕事と言う事だったので早めに切り上げ、スミーとお風呂に入り、一緒に寝た。