俺「なあwww」
従姉妹「……ん」
俺「ちょ、テレビ見てみ、あれめっちゃ面白いなwww」
従姉妹「そうやな」
俺「…そういえば、○○と△△がこの間馬鹿みたいなことしてなwww」
従姉妹「そうなん」
俺「あ、お前この前テスト悪かっただろ、俺より順位下だったろざまぁwww」
従姉妹「…うん、アホやな」
俺「最近バレーの調子はどうなん?ミスばっかりじゃねえの?」
従姉妹「………」
俺「………お、俺コンビ二行って来るけど何か欲しい物あるか?」
従姉妹「んーん、ない」
俺の力ではこれが限界だった
これが三日目くらい、この後も同じような事を延々と繰り返して
従姉妹が来てから丁度一週間が経った日、弟君に会いに行った
病院に着くまでの2~3時間、従姉妹は車の中でずっと俯いてた
俺はその間も騒ぎまくっていたが、効果は無かった
病院に着いて、弟君に会った瞬間従姉妹は元気になった
弟君は「何でねーちゃんこんな嬉しそうなん?」みたいな顔でぽけーっとしていた
手術はもう終わってるらしく、一週間入院の後帰れると言われた
従姉妹はずっとニコニコしてて、面会の間弟君から離れることは無かった
それから帰りの車でも家でも、従姉妹はニコニコしてた
俺は「何コイツ…何この表情…」みたいな複雑な気持ちになっていた
俺があれほど頑張っても効果はゼロだったのに、従姉妹の弟君好きは異常だ、と思っていた
ちなみに、俺が嫌われてるだけ、という考え方は全くしなかった
一方学校では、俺が浮気した、という噂が広まっていた
あれだけ必死にアタックしたさとみを放っといて
従姉妹と登下校したり、休み時間も従姉妹を励ましに行ったり
今考えれば浮気と言われて当然だと思う
けど、俺の頭の中には従姉妹を笑わす、という事しかなくて
さとみとかもうどうでも良かった
会話も少し弾むようになった
俺「おいまた面白いテレビあるぞwww」
従姉妹「あ、ホンマやな」
俺「あ、この前の話なんやけどな、□□っておるだろ?アイツがな――」
従姉妹「何でそんな必死なん?」
俺「は?別に必死ちゃうし意味解らんし」
従姉妹「嘘w、めっちゃ必死やしw」
俺「ううう、うっさい!」
従姉妹「www」
みたいに、徐々に笑顔が増えていくのが嬉しかった
俺は歳も場所も結構離れてるからなんかそういうの羨ましいよ
従姉妹が笑ってくれればなんでも良かった
別に自分がどう思われようと気にしてなかったのは、さとみの時と真逆だった
話しかける→笑う→嬉しくなる→また話しかける
このパターンを繰り返すだけの日々が続いて
とうとう弟君が退院する日がやってきた
俺はその事を頭では解ってたんだけど、どうしても実感が湧かなかった
いつも通りの時間を過ごして、夜に従姉妹のお母さんが迎えに来て
そのまま何事もなく従姉妹は帰ってしまった
俺は笑顔で見送ったけど、やっぱり寂しかった
後、母さんにニヤニヤされるのも鬱陶しかった
その日、風呂の中で本気で悩んだ
何でこんなに寂しいんだ、たった二週間程度だったのに
それに学校へ行けば普通に会えるし、きっとまた話す事もできる
でも寂しい
こんな事を延々と考えてた
これ今考えると確実に惚れてるな、何故この時そう考えなかったのか不思議だ
次の日学校へ行って、それとなく従姉妹の様子をうかがってみた
寂しそうにしてたり、元気が無くなってたりするのを期待してたのかもしれない
けどそんな事もなく、以前の明るい従姉妹に戻っていた
それはそうか、家族が居なかったからあんな風になってたんだし
もう落ち込む理由が無いもんな、と何故かガッカリした
話しかけようかとも思ったけど
今までのように従姉妹を励ます、という大義名分も使えないし
特に話す事も無かったんで諦めた
教室に戻ると皆から従姉妹の事諦めたのか、お前結局どっちが好きなんだ
という風な事を問いただされた
俺はちょっと悩んで「別にどっちも好きじゃねーし」と強がった
俺の中ではベストな答えだったんだけど、皆はそう思ってくれなくて
俺=好きでもないのに女をたぶらかすチャラい奴
というイメージを持たれた
かなりショックだった
それからさとみとも従姉妹とも話さず(話せず)、
引退も近かった事もあり部活にのみ気を向けた
ちなみに部活は卓球
1年からコツコツ努力していたおかげでそこそこ強かったし、
副部長にもなっていた
最後の大会、3年間の総決算の場で
俺は県で個人ベスト16、団体3位になって、優秀選手賞も貰えた
一見従姉妹には関係無い事のように思えるけど、このおかげで
夏休み中に従姉妹家でパーティーが行われる事になった
もちろん名目は俺のお祝いと従姉妹を預かったお礼、というものだ
俺はそれを母さんから告げられた時そっけない態度をとっていたけど、内心滅茶苦茶はしゃいでた
楽しみで楽しみで、早くその日が来い、と小学生のような事を思っていた
そして当日の夜、パーティーが始まった
パーティーといってもお洒落なものじゃなく、ただ焼肉と花火をするだけだったけど
それでも久しぶりに従姉妹と話せて嬉しかった
焼肉は何事も無く終わって、あ、弟君は跳ねた油で焼けどしてたけど
その後もただ他愛ない話をしながら花火をするだけで、
従姉妹と距離が急接近するのを期待していた俺は
あー楽しいけどこんなもんかー、とか思ってた
それで噴出し花火っていうのかな、手に持つ一般的なやつ
あれが無くなって、線香花火をする事になった
俺は線香花火があんまり好きじゃないから、一人で石積んで遊んでたんだけど
そこに従姉妹がやってきた
従姉妹は、二個の線香花火とライターを持っていた
「弟君は?」と聞くと、「あっちでお母さんと遊んでる」と言われ
俺は心の中でガッツポーズを決めた
二人きりで線香花火、という最高のシチュエーションだったけど
いや、むしろそのせいか、俺は空回りして滑り倒し、挙句の果てに無言という最悪の結果になった
気まずい空気の中、喋りだしたのは従姉妹だった
従姉妹「なあ」
俺「!…ん?」