【壮絶なストーリー】魔王を倒した勇者が帰還→勇者「王様チィーッス」王様「だ、誰だ!?」

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114 : ◆Vcef9xkjaI :2011/07/04(月) 02:33:05.56 ID:kJm+5Oklo

海向こうの国まで2日ほどだと船長に言われた。
船員たちはどこか余所余所しく、私たちも進んでは話そうと思わない。

船酔いが辛い。陸が恋しい。
泣いている女王の夢を見た。
いつの日か、彼女の目的や涙の理由がわかる日がくるのだろうか。

6つの大国の4番目。海向こうの国へ到着した。
船は私たちを降ろすと、別れの言葉もなく去っていった。
これを書いている今も気分が悪い。今日は早く眠ろう。

気分は優れないが、時間は待ってはくれない
早く荷物の整理をし、出発に備えなくては。
次の目的地は、この国の王がいるという街だ。

なんで彼女は何も言ってくれなかったんだろう。
後悔だけしか残らない。

荷物の整理をしていた際、見覚えのない手紙があった。
それは女王からの手紙で、そこには彼女の真実が記されていた。
彼女が誰よりも勇者に憧れ、冒険譚に胸を躍らせる少女であったこと。
現実の私たちを知り、自分の無知を恥じたこと。
自分の国が、民が大切であること。
隣国の砂漠の国が宣戦布告してきたこと。
おそらく、自分たちは勝てないであろうこと。
それでも民も、自分たちも立ち向かうことを。
最後にはこう書かれてあった。
『それでも、逃げない勇気をあなた達がくれた』
『あなた達の旅に幸あれ』

124 : ◆Vcef9xkjaI :2011/07/04(月) 16:30:37.35 ID:kJm+5Oklo

次の街までの旅が始まった。
次に出会う王はどんな人物なのだろう。
あの女王と懇意だったとあれば、人格者なのではないだろうか。
手紙と一緒に入っていた紹介状が役に立つと良いのだが。

魔物の強さが増して来ている。
更に、人形のものも増えてきた。
食料に余裕のある今はいい。だが、今後はどうなるのか。
考えるのが怖い。

街道の道すがら、壊れた馬車を見つけた。
壊れ具合を見るに、魔物ではなく野盗に襲われたようだ。
敵は魔物だけではない。

警戒のために二人一組で寝ずの番をする。
私と番をすることになった戦士がぽつりと言った。
『俺達は何のために戦っているのだろう』
私は答えられなかった。

勇者と魔法使いが番をしていた際、野党が現れたらしい。
相手は飢えていたのか、私と戦士が起きる前に苦も無く撃退できたとのこと。
だが、魔法使いは精神的に辛いようだ。
炎の魔法で焼いた相手の悲鳴が耳から離れないらしい。
今は薬で眠らせている。
彼女を落ち着かせるのに必要なものは、神の言葉や祈りではなく、人の作った薬と時間だけだろう。
自分の存在意義を疑問に思う。

2度目の野党の襲撃。
相手は農民崩れなのか、鍬や鎌を手に持ち襲ってきた。
メイスで殴りつけたときの感触が手から離れない。

125 : ◆Vcef9xkjaI :2011/07/04(月) 17:01:54.72 ID:kJm+5Oklo

街が遠くに見えてきた。
今日中に辿りつけるだろう。

街にたどり着き、王女からの紹介状を渡した後、私たちは投獄された。
その際にこの手帳も没収されたため、その期間のことを今から記そうと思う。

投獄されてすぐ、勇者の尋問が始まった。
絶叫が響く中、隣の牢から魔法使いのすすり泣く声が聞こえる。

尋問を受ける。
何度殴られたかわからない。
私達は女王を騙してなどいない。

魔法使いの悲鳴がこだまする。
勇者と戦士のいる牢からはうめき声だけが聞こえる。
私も似たようなものだろう。

この日、私たちの死罪が決定した。
でっち上げられた罪状は、王族への詐称と戦争幇助。
怒り狂う王の顔が印象的だった。
王女と恋仲であった王の復讐。と聞けば綺麗なのかもしれない。
実際に王が叫んでいたのは、王女の国との交易による損害ばかりであったが。
これで尋問の日々が終わるのだと思うと、恐怖心よりも安堵の方が大きかったことを覚えている。

再度牢に入れられて三日目の深夜。
外の喧騒が大きくなったかと思うと、慌てた顔で兵が飛び込んできた。
どうやら魔物の襲撃があり、兵の数が足りないのだという。
荷物を受け取り、外へと出された後、回復魔法や薬による手当を受ける。
魔物の数は多く、街の損害は多大なものになった。
この中で私たちは多くの魔物を討ち取り、大罪人から一転して救国の勇者の扱いを受けることとなった。
そしてこの日、この国の王は逃亡し、その道中に魔物に襲われ死亡したとも伝えられた。

そして今、私たちは5つめの国を目指している。
途中で出会った旅の商人からうわさ話を聞いた。
あの国の王が死に、今後は内乱が続くであろうこと。
だが最早、私たちには関係の無いことだ。

129 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) :2011/07/04(月) 19:35:18.55 ID:Sq2DVMHmo

すごいものを読んでしまっている気がする

133 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都) :2011/07/04(月) 20:17:02.81 ID:XFJmYM26o

ふぅ……面白いが気分が重くなるな

137 : ◆Vcef9xkjaI :2011/07/05(火) 05:57:23.17 ID:RffJ7xz2o

次の国は魔法が盛んと聞く。
魔法使いが少しだけはしゃいでるようにも見える。

滞在予定だった村は、魔物の手によって壊滅していた。
つんとした腐臭が立ち込める。
壊滅した後に野党にあさられたのか、目ぼしい物は何も残ってはいなかった。
予定を変更し、先にある街を目指す事にする。

魔物が集団で襲ってくる。
知性が高く、対処に戸惑う。

以前、砂漠で出会った魔物と同じように、言葉を理解する魔物がいた。
どうしても武器を振るう腕が鈍る。

自分の叫び声で目が覚める。
番をしていた勇者が悲しそうな目で私を見ていた。
きっとひどい顔をしていたのだろう。

食料が減ってきている。あれを食べるしか無いのか。
だがそれは人食いと何が違うのか。

見た目は干し肉だが、口に入れた瞬間にあの魔物の姿が目に浮かび戻してしまう。
水で無理やり飲み下す。

138 : ◆Vcef9xkjaI :2011/07/05(火) 05:58:15.98 ID:RffJ7xz2o

雨が降りだした。
冷たい雨が私たちの体温を容赦なく奪う。
勇者も戦士も魔法使いも、みんな白い顔をして震えている。
私も同じような顔をしているのだろう。

雨は止む気配すらない。
勇者が嫌な咳をしている。

勇者が高熱を出し、歩くことすらままならない。
馬車に寝かせてはいるが、碌な薬も無く、長時間の休養も出来ない。
悪化する一方だ。
雨はまだ振り続けている。

勇者の咳に赤いものが混じりだした。
移動魔法で戻る案も出たのだが、今の状態で使用すれば彼の命の危険すらある。
だが、このままでは死んでしまうだろう。
魔物が原因での死では無い場合、蘇生は不可能。次の街まで早くて三日。
決断を迫られる。

採取した魔物の体液を馬車に持っていった時、勇者は全て理解したようだった。
お願いだからそんな優しそうな目で私を見ないで。
毒を持つ体液を嚥下した後、血を吐いて動かなくなった彼を馬車に残し、私たちは進む。
雨音が私を責め続ける言葉のように聞こえた。

街はまだ見えない。
雨に氷が混ざってきている。

真っ白な雨が降り出した。
これが話しに聞く雪なのだろうか。
急激な冷え込みの為か、魔物の姿は少なく、動きも鈍い。
勇者がいないことを考慮し、出来る限り戦闘を避け、先を急ぐ。

140 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中国地方) :2011/07/05(火) 07:28:51.10 ID:uiGJbsHF0

間接的とはいえ、想い人を自分で殺したんだよな……救いなさ過ぎるだろ

141 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/07/05(火) 07:41:16.43 ID:lUaSieOko

いやでも毒や病気で死んだら蘇生不可、みたいなRPGやったら
自分でもこういうプレイングするよな…パーティアタックか
モンスターにわざと殴らせるか。
それの真実がこいつかorz

145 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/07/05(火) 19:52:44.46 ID:S6/xv9P10

生きかえっても死んだときの感覚が残るんだよな

142 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) :2011/07/05(火) 08:43:47.46 ID:ujmh/GsXo

もうRPGできねえ

149 : ◆Vcef9xkjaI :2011/07/06(水) 00:20:58.60 ID:9CXwYTRQo

遠くに街が見えた。
雪が積もり、予定よりかなり遅くなってしまった。
馬車の車輪が思うように進まない。
手足の赤切れが激しい痛みを伴う。

手足の感覚がなくなってきた。
雪の勢いが増し、見えていた街どころか少し前の景色すら見えない。
死がちらつく。

これしか無いのか。
本当にこうするしか無いのか。

これを見ている方へ。
我々は勇者の一行です。
雪で進めなくなり、この場で雪が晴れるのを待っておりましたが、体力、気力ともに限界が来てしまいました。
全員、魔物の毒を服毒し死んでおりますので、蘇生は可能だと思われます。
蘇生をしていただければ必ず謝礼は致します。
何とぞよろしくお願い致します。

あれから三日後、我々は魔法の国で蘇生された。
何度味わっても、蘇生された瞬間の感覚は慣れることがないだろう。
どれだけ暖かくしても、身体の芯から悪寒が来る。
まるで、あの夜が永遠に終わらないかのようだ。

私たちを見つけたのは街を守る衛兵の一人だったという。
聞けば、街まで残り僅かの場所で馬車が雪にうもれていたらしい。
衛兵へ感謝の言葉をとお願いすると断られた。
これ以上の厄介ごとは御免なようだ。
謝礼に関する書類にサインをし、今日は眠ることにする。

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