【壮絶なストーリー】魔王を倒した勇者が帰還→勇者「王様チィーッス」王様「だ、誰だ!?」

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28 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) :2011/07/01(金) 14:27:56.31 ID:5Ug8BclXo

勇者「おっと、話が逸れた。駄目だね、思い出を話すと、紐づいて色んな思い出が溢れてくる」

勇者「でだ、集落での魔法使いは、お嬢様だとは思えない顔でゲタゲタ笑ってた」

勇者「とっくに狂ってたんだ」

勇者「そして、そんな彼女を見ても何も感じない俺も僧侶も」

勇者「とっくにみんな狂ってた」

勇者「血の海を見ながらゲタゲタ笑う魔法使いを他所に、俺達はのろのろと食料をあさってガツガツ貪り食った」

勇者「僧侶は泣いてた気もする。俺も泣いてたのかもしれない」

勇者「魔法使いも泣いてたのかもしれない」

勇者「まあそんなのはどうでもよくてですねー」

勇者「そんな事を繰り返してたある日の夜、俺達は凄いものを見たんだ」

29 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) :2011/07/01(金) 14:29:51.20 ID:5Ug8BclXo

勇者「どこまでも下へ続いてるような崖があってね。その場所を渡ると魔王の城までもう少しって場所だ」

勇者「そこでキャンプをしていたら、テントの外で魔法使いがキャーキャー叫んでた」

勇者「狂ったような声じゃなくてさ、歳相応の女の子が、綺麗な服を見て騒ぐような、あの暖かい感じで」

勇者「気になった俺と僧侶がテントから出ると、空一面で星が流れてた」

勇者「流星群っていうの? 偶然、見ることができたんだ」

勇者「つい数時間前まで、集落を潰して魔物の死体をザクザク切ったりして遊んでた魔法使いだけれど」

勇者「この時だけは子供みたいにさ。『すごいね』とか『綺麗』とか言っちゃってさ」

勇者「そんで、俺も僧侶もうなづいて、みんなで空をずっと眺めてた」

勇者「そしたら、魔法使いが言ったんだ」

勇者「『戦士にも見せたかったなー』って」

勇者「その辺の街中で、ふと言っちゃうような感じで。特別な感じでもなんでもなく言ったんだ」

勇者「次の日、魔法使いは居なくなってた」

30 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) :2011/07/01(金) 14:31:44.63 ID:5Ug8BclXo

勇者「崖の前に、魔法使いの杖と、これが置いてあった」

姫様「羊皮紙……まさか、遺書……?」

勇者「なのかなー?」

姫様「え? 勇者どのは中をご覧になってはいないのですか?」

勇者「いや見たよ? 俺も僧侶も中身を確認した」

姫様「でしたら、遺書ではない……? 中にいったい何が書かれてたのですか?」

勇者「見る? ほいよ」

姫様「あ、ありがとうございます。それでは…………ヒィッ!! こ、これは!?」

勇者「あっはっは。わかんないっしょ?」

姫様「うっ……うげっ……ケホッケホッ!」

王様「ひ、姫! 勇者様! まさかこの書に呪いを!?」

勇者「いんや、呪いの類はかかってないよ。正確には、呪いは『もう』かかってないだけど」

王様「ど、どういうことですか!」

31 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) :2011/07/01(金) 14:35:46.39 ID:5Ug8BclXo

勇者「まずその手紙、魔法使いの意思か意思じゃないのかわからんが、最初はとんでもない呪いがかかってた」

勇者「俺でも近くにいるだけで意識がゴリゴリ削られるようなシロモノでさー。弱い人間や魔物なら、近くによっただけで死んじゃったんじゃないかな」

勇者「んで、僧侶が必死になって呪いを解いたんだ」

勇者「そして、女の子の手紙だってのもあって、僧侶が見たんだけど、ショックで気絶しちゃってさ。丸一日は動けなかったねー」

王様「中にはいったい何が……」

勇者「ぐちゃぐちゃの血文字っつうか、血で描かれた絵」

勇者「一つだけわかるのは、魔法使いはこれを見た奴全員を呪ってると思うってことだけかな」

勇者「あいつ、世界がどこまで憎かったんだろうなー」

姫様「酷い……こんなの……こんな絵、人の描けるものじゃない」

王様「ひ、姫っ!」

勇者「姫様に全面的に同意だね。そんなもん描ける魔法使いも、それを見てもほとんど何も感じなくなった俺も、もうとっくに人じゃないんだろうなあ」

勇者「とまあ、魔法使いの話はこれでおしまい」

勇者「じゃあ最後。僧侶の話をはじめようか」

32 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) :2011/07/01(金) 14:44:24.47 ID:5Ug8BclXo

勇者「僧侶の死因については少し特殊なんで、問題は無しで。残念だけど勇者マークは諦めてね」

王様「…………」

姫様「…………」

勇者「さて、残りは俺と僧侶だけになった訳だけれど、結構大変だったのよこれが」

勇者「だってさ、戦力は1/2。しかも僧侶は戦闘職じゃない。そして、街に戻って仲間を集めてちゃ時間が足りない」

勇者「結果、俺達は逃げながら魔王の城へ向かった」

勇者「勇者とバレないようにみすぼらしい格好をして、魔物を騙し討ちして、泥水をすすって、獣みたいになりながら向かった」

勇者「もう中毒とか気にしてられなかった。超回復薬だって、それ以上に強い薬だってガブガブ飲んだよ」

勇者「ぐにゃぐにゃの景色を見ながら、何かの拍子にぶっつり切れちゃいそうな意識ではあったけれど、俺も僧侶も魔王の城まで生きて辿り着いた」

勇者「っと……」ぐらっ

王様「ゆ、勇者様!? 大丈夫ですか!?」

勇者「あー、大丈夫大丈夫。ごめん、ちょっと失礼して一服」

34 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) :2011/07/01(金) 14:49:27.58 ID:5Ug8BclXo

勇者「…………」スー……プハー……

王様「あの……勇者様、もしやその葉巻は……」

勇者「あー、うん。普通の葉巻じゃない。強い薬草と毒消し草を巻いて、煮詰めた聖水を染みこませた特別品」

王様「そんなものを……」

勇者「悪いね。でも、これ吸わないとさ、ほら」プルプル

王様「手が震えて……」

勇者「まあそういう事。ごめんねみなさん、もうちょっと待ってねー」プハー

シーン

勇者「うし、んじゃ続き。さて、どうにか魔王の城まで辿り着いた俺達だけれど、ここで俺がとんでもないヘマをやった」

勇者「魔王の側近に俺がいることがバレちまったんだ」

勇者「僧侶は運良く城の中で別行動をして情報を集めていたから大丈夫だったんだけれど、俺はそうはいかなかった」

勇者「どうにか魔王の側近は倒した。腐っても勇者だしね俺」

勇者「でも、俺も死んじゃったんだ」

38 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) :2011/07/01(金) 15:02:46.75 ID:5Ug8BclXo

勇者「僧侶が見つけたとき、俺はっつうか、俺だったモノは指のかけらぐらいだったみたいでね」

勇者「普通、人が蘇生するためにはその人のパーツ、肉片でも灰でもいいんだけれど、半分以上は欲しい。せめて2/3は欲しいってのが常識でして」

勇者「つまり俺の蘇生は絶望的。ここで僧侶も諦めて帰っちゃえばよかったのになーとは今でも思う」

勇者「でも僧侶は諦めなかった。俺の身体の再生と蘇生を実行することにしたんだ」

勇者「と、ここで突発問題! ここで更に問題が発生します! それはなんでしょーか! 王様でも姫様でも、どちらが答えても構いません!」

王様「…………」

姫様「そういう気分ではございません……」

勇者「あーあ、残念。えーっと、勇者マークは……あー、足りてないねー。まあ後からだね」

王様「?」

姫様「?」

勇者「さてその問題とは、蘇生魔法は難易度の高い魔法だってことです」

40 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) :2011/07/01(金) 15:16:44.94 ID:5Ug8BclXo

勇者「元々、蘇生魔法を使う場合、簡易的な結界みたいなものを張って使うんだけれど、ここは魔王の城な訳で」

勇者「そんなもん張ったら、一発で魔王にバレちゃう可能性が高い。つうか確実にバレる」

勇者「そうなると俺の蘇生どころの話じゃないわけで」

勇者「更に、使う魔力だってべらぼうに必要で、今回はそれに高等な再生の魔法もミックスしなきゃいけないときたもんで」

勇者「もうねー、奇跡でもおきない限り無理! 無理無理無理無理かたつむり!ってぐらいの無理難題だったのよ」

姫様「ですが、勇者どのがここにいらっしゃるということは」

勇者「うんそう。でも、奇跡なんて起きてないよ」

姫様「え? でしたらつまり?」

勇者「すげえ強引な手を使ったんだあいつ」

姫様「強引な手?」

勇者「そ。だから死んだんだ」

41 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) :2011/07/01(金) 15:22:47.99 ID:5Ug8BclXo

勇者「俺が気付いたとき、辺りは真っ赤だった」

勇者「身体を再生して、死んでたところを無理やり引き戻されて、痛みや吐き気で転げまわっってた」

勇者「でも嬉しかった。僧侶が必死になって蘇生させてくれたんだとわかってたから」

勇者「だから、ゲロをまき散らしながら、がくがく震えながら、それでも立って僧侶を探したんだ」

勇者「でも、僧侶は僧侶じゃなくなってた」

勇者「あたり一面に割れた回復の薬のビンや、使い終わったスクロールなんかが落ちてた」

勇者「どれも魔力を回復するためのシロモノだったよ」

勇者「僧侶が何をやったのかは簡単な話だ。色んな工程を魔力で強引に押し切ったってだけ」

勇者「当然、そんなことしたら魔力なんてすぐ空っぽになるわけで」

勇者「なので、無くなるそばから薬をがぶ飲みしたりスクロールで強引に回復させて、また魔法を使ってって訳」

勇者「でもなー。人の体って、限界みたいなものがあるじゃん?」

勇者「僧侶がやったのは、その許容量を遥かに越えるような事なのよ」

42 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) :2011/07/01(金) 15:26:34.85 ID:5Ug8BclXo

勇者「そして僧侶は……」

王様「魔力に耐えられず、消滅……?」

勇者「だったらマシだった」

勇者「部屋の端っこにね、もぞもぞ動くものがあったんだ」

勇者「なんだろー?って思って近づいてみたら、子供ぐらいの大きさのピンクの肉がもぞもぞしててな」

姫様「や……やめて……」

勇者「やめねえよ。お前らが楽しみにしてたみんなの話だ。聞けよ」

勇者「あいつなー、僧侶なー、回復魔法を垂れ流すだけの肉の塊になってたんだよ」

勇者「どっかの文献にあったんだけど、回復魔法を延々と流し続ける石ってのがこの世にはあるらしくてさ」

勇者「僧侶は、多分それに近い物になったんだと思う」

勇者「つうか、そんな石より凄いもんになったとも言えるね」

勇者「それって一抱えぐらいあるんだけれど、持ってるだけで傷が治っちゃうのよ」

勇者「そんで、持ってたら僧侶の声っていうか、意識みたいなのが流れてきた」

43 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) :2011/07/01(金) 15:30:41.84 ID:5Ug8BclXo

勇者「『食え』」

王様「は?」

姫様「え?」

勇者「いやだから『食え』って言われたの」

王様「え? いやその……」

姫様「何を……?」

勇者「僧侶だった肉を」

王様「…………」カタカタカタカタ

勇者「だから食った」

姫様「そんな……僧侶どのの最後がそんな……」

勇者「ああ、勘違いしないでね。僧侶は俺を蘇生してる時に死んだんだよ」

姫様「でも、先ほど僧侶どのは、その、肉に」

勇者「肉は肉。あいつと一緒にするな」

姫様「す、すみません!」

44 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) :2011/07/01(金) 15:36:19.75 ID:5Ug8BclXo

勇者「とまあ、そんな訳で勇者パーティーは全滅しましたとさ。おしまい」

王様「全滅? で、ですが勇者様は」

勇者「ああ、俺? んー、どうなんだろ? 今の俺って勇者って言えるのかね?」

勇者「勇者ってのはさ、人のために生きて、人の為に魔王を倒す人でしょ?」

勇者「俺はさ、肉を食った瞬間から、いや違うな。もうずーっと前から、人の為になんか戦ってなかったと思うんだ」

勇者「誰かのために戦ってたんだとしたら、仲間の為なんだと思うよ」

勇者「そういう意味じゃ僧侶が死んだ瞬間、俺はもう勇者なんかじゃなくなってたんだと思う」

勇者「一応ね、魔王は倒したよ。そりゃねえ、常に回復しっぱなしの状態ですもん。例え即死魔法打ち込まれても死ねないとかどうなのー?って感じですよ」

勇者「あー、そうだ。もう一個、重大なことがあるんだ」

王様「一体、これ以上に何が」

勇者「そう難しいことじゃないよ。簡単簡単。僧侶の願い事なんだ」

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