【壮絶なストーリー】魔王を倒した勇者が帰還→勇者「王様チィーッス」王様「だ、誰だ!?」

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11 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) :2011/07/01(金) 11:23:06.65 ID:5Ug8BclXo

勇者「移動魔法ってのは、移動先が限定されている」

勇者「この城にもあるよね? 移動魔法用の魔方陣」

勇者「だからここには戻れる」

姫様「だから戻れるのなら何故!?」

勇者「じゃあ戻った後は?」

姫様「は? 後といいますと?」

勇者「戻った後、養生して、すっかりよくなった後だよ」

姫様「それは……また魔王を倒すために……」

勇者「どうやって行くの?」

姫様「そ、それは移動魔法で……」

勇者「魔王の支配力が強い場所へ? 魔方陣も無いのに? どうやって?」

姫様「…………」

勇者「っと、いじめすぎちゃった。ごめんね。まあ、この辺りならね、姫様の案でも悪くないのよ」

勇者「でも、24時間どんな時に凶悪な魔物に襲われるかわからないような場所で。更には先に何があるかもわからない場所ではそうはいかないんだ」

12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) :2011/07/01(金) 11:36:07.52 ID:5Ug8BclXo

勇者「魔物を殺して薬を飲んで、魔物を食ってまた殺して。傷ついて癒してまた傷ついて」

勇者「戦士はさ、薬の副作用で髪の毛なんてぜーんぶ抜けちゃってさ」

勇者「まあ俺ほどとは言えないまでも、それなりにハンサムだった顔とかもどんどん変わっちゃってさ」

勇者「笑うと糸みたいになって、見てるこっちが笑っちゃうような目も、ぎょろぎょろしてギラギラしててさ」

勇者「俺に冗談を言っては豪快に笑ってた口も、半開きでよだれ垂らして、ずーっとブツブツ言ってるようになってさ」

勇者「武器も鎧も盾も兜も、魔物の血で常に真っ赤でさ」

勇者「どっちが魔物なのか、俺にはもうわからなかった」

姫様「…………」

勇者「でさ、魔王の直下にある四天王の一人を倒した時、腕も足も片目も吹っ飛んで、内臓なんかでろーっと見えてる状態であいつ言ったんだ」

勇者「『殺してくれ』ってさ」

勇者「当然、みんな断ったよ。魔法使いなんて、普段は戦士と喧嘩ばっかしてたのに、すげえ泣いてんの」

勇者「涙と自分の傷から出た血でべちゃべちゃな顔でさ」

勇者「『あたしを置いて行かないでくれ』とか『約束したじゃないか』とかさ」

勇者「そしたらさ、戦士ぷるぷる震えながら、目を糸目にして、少し困ったようにさ」

勇者「『ごめんな』って言ってさ」

勇者「あいつら、きっと両思いだったんじゃないかなあ」

13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) :2011/07/01(金) 11:44:18.96 ID:5Ug8BclXo

勇者「そんで、あいつ俺に『頼む』って言ってさ」

勇者「だから殺した」

姫様「ゆ、勇者様は悪くは……」

勇者「あー、そういうのどうでもいいのよ。ただ、俺が戦士を殺したって事は事実な訳で。それはどうしようもない現実な訳で」

姫様「でも……でもそんなのって……」

勇者「悲しすぎますーって感じかな? ありがとねー。お礼に勇者マークしんてー」

勇者「多分さ、戦士はもう限界だったんだと思うよ」

勇者「最後こそちゃんと喋れたけど、その前なんて『うー』とか『あー』しか言えなくなってたし」

勇者「何度も俺たちを魔物と間違えて攻撃しようとしちゃってたし」

勇者「魔法使いにさ、攻撃しようとしちゃったし」

勇者「ギリギリで気付いて、泣きながら壁にガンガン頭ぶつけたりしてさ」

勇者「みんなが止めても言うこと聞かなくて困っちゃったよ」

勇者「長くなっちゃったね。戦士の話はこんなとこかな」

勇者「次は、魔法使いの話だ」

15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関東・甲信越) :2011/07/01(金) 11:53:04.15 ID:cXkvXRtAO

なかなか

16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/07/01(金) 12:24:01.00 ID:6OF+XC/IO

続きが気になる

20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) :2011/07/01(金) 13:46:47.24 ID:5Ug8BclXo

勇者「さて、魔法使いの死因だけど。よし、じゃあ王様! 魔法使いはなんで死んじゃったでしょー!」

王様「ま、魔物にやられて……」

勇者「ブブー! ふせいかーい! 答えはー……」

姫様「……自殺ではないでしょうか」

勇者「おお、凄いね姫様。だいせいかーい! 勇者マーク進呈! 拍手っ!」

シーン

勇者「なんだよもう。ノリ悪いなぁみんな。まあいっか。それで姫様、どうして自殺だと思った?」

姫様「魔法使いどのは戦士どのを愛されていた。愛する殿方がいない世なればいっそ……」

勇者「なるほどなー。うん、それも一つの理由だろうね」

姫様「では、他に理由があると?」

勇者「さあ? どうだろね」

姫様「はぐらかさないで下さい!」

勇者「だってさ、本当にわからないんだよ。わからなかったんだ俺達には」

21 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) :2011/07/01(金) 13:51:30.55 ID:5Ug8BclXo

勇者「戦士が死んでから、魔法使いは目に見てわかるほど変わったよ」

勇者「まあ、俺らみんな見た目なんて変わっちゃってたし、頭もどっかぶっ壊れてはいたんだけど」

勇者「でも、そういうんじゃなくて、魔法使いは……なんていうか、憎かったんだと思う」

王様「憎かった……魔王がでしょうか?」

勇者「魔王も含めてかな」

王様「魔王も含めて?」

勇者「うん。魔王も、魔物も、自分を置いて死んだ戦士も、戦士を救えなかった俺らも、自分も、きっと人間も」

姫様「そんな……」

勇者「きっと、全部全部憎くて憎くてたまんなかったんだと思う」

勇者「世界中が憎かったんだと思う」

22 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) :2011/07/01(金) 13:56:09.90 ID:5Ug8BclXo

勇者「魔法使いの使う魔法ってさ、結構えげつないのよ」

勇者「広範囲を爆破したり、でっかい炎で焼き尽くしたり、吹雪を呼んだりさ」

勇者「でも、あいつは戦士が死んでから、使う魔法なんかも変わったんだ。なんだと思う姫様?」

姫様「……魔法のことはよくわかりませぬ」

勇者「ですよねー。普通に生活してたら、あんま馴染みないもんね攻撃魔法って」

勇者「えっとね、毒や酸の魔法をよく使うようになったんだ」

姫様「毒や酸ですか?」

勇者「うん。でね、ピンとこないかもしんないけれど、この魔法って凄いのよ」

勇者「まず酸だけど、魔法で造り出した強力な酸って、多分みんなが想像してるよりずっと怖い」

勇者「地面とか溶けちゃって穴が開いちゃうし、これを敵に当てたら……ね?」

王様「…………」ゴクリ

勇者「悲鳴がね、耳から離れないんだ」

23 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) :2011/07/01(金) 14:00:09.99 ID:5Ug8BclXo

勇者「腕が、足が、指が、目が、耳が溶けていく魔物の悲鳴」

勇者「最初に話したけど、魔王の城に近ければ近いほどに魔物の知能は上がっていく」

勇者「人の言葉でね、俺達の使う言葉でね、泣き叫ぶんだ」

勇者「魔物を食べるって話をしたじゃん? あれはさ、ある意味、まだマシなのかもしれない」

勇者「だってさ、生きるためじゃん。食べないと死んじゃうから殺して食べる」

勇者「動物が動物を殺して食べる。世界の正しいあり方なのかもしれない」

勇者「だけど、魔法使いは違った」

勇者「苦しめたいからコロす。憎いからコロす。コロしたいからコロす」

勇者「狂った殺人鬼のでっきあっがりーってもんですよ」

姫様「う……ひっぐ……」

勇者「ありゃま、泣いちゃった。まずいなー、俺フェミニストなのに。ごめんなー」

25 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) :2011/07/01(金) 14:04:52.94 ID:5Ug8BclXo

勇者「でだ。毒の魔法なんだけど」

勇者「これは酸の魔法なんかよりえげつなかった」

勇者「王様も姫様も、ここに集まったえらーい人たちも知らないかもしれないけれど、魔物だって集落みたいなものを作ってるんだ」

王様「なんと……」

勇者「意外だった? でもさ、知能は人並、下手したら人よりも知能があるかもしれない生き物が沢山いるわけよ」

勇者「それに、オスもいればメスもいる。それがいるなら子供だってできる」

勇者「子供の魔物は当然大人なんかよりは弱い」

勇者「だから寄り集まって、集団生活をしたりする」

勇者「人となんら変わりはないよ」

27 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県) :2011/07/01(金) 14:25:11.48 ID:5Ug8BclXo

勇者「魔法使いは、そんな集落で毒の魔法を使った」

勇者「正確には、集落の近くの河や、集落の中にある井戸水に」

勇者「当然、阿鼻叫喚の地獄絵図ですよ」

勇者「魔物にだってオスもいればメスもいる。子どももいれば年寄りもいる」

勇者「強いものも弱いものも混じって沢山いる」

勇者「それを別け隔てなく、魔法使いは皆殺しにした」

勇者「そして、そんな地獄で魔法使いは笑ってた」

勇者「魔法使いってさ、さっきも話した通り、元々は箱入りのお嬢様なんだよね」

勇者「だから冒険に出た最初の頃は、笑い方も『オホホホホー』みたいな変な笑い方でさ」

勇者「そんな変な笑い方を見て、俺や戦士がちょっかい出して、真っ赤に怒った魔法使いを、困った顔で僧侶がなだめて」

勇者「そんな時もあって……楽しかったなあ」

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