55: 名も無き被検体774号+ 2014/03/12(水) 08:44:40.16 ID:zSMs1Lti0
「へえ」
「へえ、じゃないよ。ユウキは知ってたはずだよ」
「あの教師が何利きかなんて、どうでもいいな。学校では右手で板書してたような気がするが」
「学校ではね。そういえば、左利きの教師って見たことないね。なんでかな、そういう決まりでもあるのかな」
「知らねえよ。っていうかその話、どこに落ち着くんだ?」
もちろん、ユウキの本音を聞けるまでだ。
きっと僕には、その権利くらい、あるだろう。
「学校では右利きとして生活してたみたいだけどね、本来先生は左利きだったんだよ」
そうでなければ、包丁を扱っていて、自分の右手を切ってしまうようなことはあるまい。
僕はポケットから、一本の万年筆を取り出した。
「それ……」
ユウキが言葉に詰まる。
「ユウキのじゃないよ。先生の部屋から持ってきたんだ。こういうの集めるの、好きな人なんだね。いろんな小物が他にもあったし」
先生の部屋にあったその万年筆は、ユウキの持っていたそれとよく似ていた。
おそらく、先生がユウキにプレゼントしたのだろう。自分の持っていた二本のうち、一本を彼に。
「これはね、左利き用の万年筆だよ。だから右手じゃ持ちにくいんだ」
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