46: 名も無き被検体774号+ 2014/03/12(水) 08:26:13.15 ID:zSMs1Lti0
左手側に黒い海が見える。
エヌボックスは東京に背を向けて走っている。堤防に沿うまっすぐなアスファルトを走っている車は少なかった。
もういい加減、夜さえも寝静まるような時刻だ。初めに海が見えたとき、先生は「わあ」とも「きゃあ」とも声を上げなかった。僕も同じく、なにも言わなかった。
ぽつりぽつりとあてのない会話がから回るのを除けば、車内にあるのは、件の陽気なギターソングだけだ。「降りてみようか」
エヌボックスは東京に背を向けて走っている。堤防に沿うまっすぐなアスファルトを走っている車は少なかった。
もういい加減、夜さえも寝静まるような時刻だ。初めに海が見えたとき、先生は「わあ」とも「きゃあ」とも声を上げなかった。僕も同じく、なにも言わなかった。
ぽつりぽつりとあてのない会話がから回るのを除けば、車内にあるのは、件の陽気なギターソングだけだ。「降りてみようか」
先生がそう言わなければ、この海沿いの道は、延々と、永遠に、続いていたに違いない。
47: 名も無き被検体774号+ 2014/03/12(水) 08:27:32.91 ID:zSMs1Lti0
24時間営業ではないコンビニを見たのは、いつ以来だろう。
暗く静まり返った店舗の前に設けられた、小さな駐車場に車を停めて、僕と先生は車道を横切った。
この時に繋いでいた手は、どちらから握ったものだっただろうか、よく覚えていない。
刃物のように冷たい先生の手は、寒さのためか、震えていた。実を言うと、冬の海に来るのは初めてのことだった。
こんなに澄みきった冷たい空気の中にも、潮のにおいはあるのだということを僕は知った。堤防が切れて、コンクリートで固められた波打ち際に降りられる場所があった。
冗談のように急な石段で、手を繋いだまま降りるのにはとても難しい場所だったけど、それでも僕らは決して、手を放そうとはしなかった。
仮にここから落ちて頭を打って死んでしまったとしても、それは案外、悪くない死にざまなんじゃないかと、そう思っていたのだ。
暗く静まり返った店舗の前に設けられた、小さな駐車場に車を停めて、僕と先生は車道を横切った。
この時に繋いでいた手は、どちらから握ったものだっただろうか、よく覚えていない。
刃物のように冷たい先生の手は、寒さのためか、震えていた。実を言うと、冬の海に来るのは初めてのことだった。
こんなに澄みきった冷たい空気の中にも、潮のにおいはあるのだということを僕は知った。堤防が切れて、コンクリートで固められた波打ち際に降りられる場所があった。
冗談のように急な石段で、手を繋いだまま降りるのにはとても難しい場所だったけど、それでも僕らは決して、手を放そうとはしなかった。
仮にここから落ちて頭を打って死んでしまったとしても、それは案外、悪くない死にざまなんじゃないかと、そう思っていたのだ。
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