「分からないなら、一度娘さんと話してみてください。夕ご飯でも食べながら。
オラも、妹と一緒にご飯を食べるんです。そして、色んな事を話すんです。
買い物での出来事、仕事での出来事、テレビの内容……くだらないことも多いですが、そうやって話しながらご飯を食べるの、けっこう、いいもんですよ」
「……」
「……あなたなら、きっと娘さんと上手くやれますよ。だってあなたからは、娘さんへの愛が、しっかりと見えてますから。
必要なのは、ほんのちょっとしたきっかけなんです。ただ、それだけなんです」
「……そのきっかけが、よく分からないんですけどね……」
「そんなの簡単ですよ。
――ただその人の帰りを待ってればいいんです。そして、帰ってきたらこう言うんです。
『おかえりなさい』、と……」
「………」
「あなたの娘さんは、もうすぐ家に帰ります。
――帰りを、待っていてあげてください」
「……そうですね。そうします」
そして老人は、徐に席を立った。
老人は、そのままドアの方に歩く。そしてオラに背を向けたまま、再び話しかけて来た。
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