「……もし娘が、あなたのような人と巡り合っているとするなら、それはきっと、娘にとって最も幸運なことかもしれませんね」
「……違いますよ。最も幸運なのは、あなたのような、娘さんを心から想っている親の元に生まれたこと、ですよ……」
「ハハハ……恐縮です……」
そして電車は、次の駅に止まる。
ドアが開くと同時に、老人は電車を降りる。そしてホームから、最後に声をかけてきた。
「……その女性を、頼みましたよ」
「……はい。ちゃんと、家に送り届けます」
最後に老人が一礼すると、ドアは閉まり、電車は駅を離れはじめた。
しばらく走ったところで、オラはあいちゃんを見る。
彼女は、依然としてオラの肩に顔を埋めたまま、動かなかった。
そんな彼女に、囁きかけるように、声をかけた。
「……あいちゃん、キミは、ちゃんと愛されているよ。そしてその人は、キミを待ってくれているよ」
「………」
「……だから、家に帰ろう。キミを待つ人のところへ。キミがいるべき場所へ。
オラも、一緒に行くからさ」
「……はい……はい……」
あいちゃんの口から、微かに声が漏れる。
電車の音に掻き消されて、よく聞こえない。……ただ、その声は、僅かに震えていた。
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