「……隣に座っても、よろしいでしょうか?」
「……え、ええ……どうぞ……」
「ありがとう……」
そして老人は、オラの隣に座る。
電車の中は、オラ達3人しかいない。だから席だってガラガラだった。
それなのに、わざわざオラの隣に座るなんて……でも、その理由は、なんとなく分かっていた。
しばらくの間、オラと老人は、対面の窓の外を眺めていた。
夕陽が窓から射し込み、オラ達の顔をオレンジ色に染めていた。
少し時間が経った頃、老人がふいに話しかけて来た。
「……隣のお嬢さん、よく眠っていますね」
「え?……ああ、はい。海で遊んだので、きっと疲れたんでしょう」
「そうなんですか。……なるほど、とても安らかに眠っている。本当に、気持ちよさそうだ……」
老人は、朗らかにあいちゃんを見つめていた。
そして視線を窓に戻し、再び口を開く。
「……実はですね、私にも、娘がいるんです」
「……そうなんですか……」
「はい。大切な一人娘でしてね。私は、その子のために、色々なことをしてきました。色々なものを与えてきました」
「………」
「……ですが、どうやら私は、その子が一番求めている時に、何も与えることが出来なかったようです。
――その子の御友人から、怒られてしまいました……」
「………」
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