それは、ひまわりなりの誤魔化しなのかもしれない。オラが心配しないための。自分の中の悲しみを大きくしないための。
ひまわりにとっての母ちゃんとの思い出は、暖かいものであると同時に、悲しみの対象でもある。味噌汁を作るということは、その両方を思い出させることになるだろう。
……それでも、彼女はオラのために作ってくれた。だからオラは、それに対して何も言うべきではないんだろうな。
「……いただくよ、味噌汁」
「……うん!」
そしてオラとひまわりは朝食を食べた。
味噌汁は、少し塩辛かった。でも、とても心に沁みた。
朝ご飯を食べた後で、居間でまったりしていたオラとひまわり。
目の前のテレビでは、朝のワイドショーが芸能人のスクープを取り立てていた。
何でも、俳優の藤原ケイジとアンジェラ小梅が、またもや破局したとか。何度目だ、藤原ケイジ。
そんな緩やかに時間が流れる室内に、突如けたたましくドアを叩く音が響き渡った。
「な、なんだ?」
おそるおそる玄関に近付き、ドアを開ける。――と同時に、とある女性が飛び込んで来た。
「――か、匿って、しんのすけ!!」
その女性は、室内に入るなり、ぜえぜえと息を切らしていた。
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