「……それはわかるんだけどな。ただ、結婚となると話は違うんだよ。
夫婦になれば、付き合っているときとは違う、制約みたいなやつが出るんだ。
好きだから結婚する……確かに、その要素は大きいけど、それだけじゃうまくいかなくなることもあるんだ。
――そんなに簡単なものじゃないんだよ。結婚は」
「……そんなもんかなぁ」
「そうそう。だからお前も、よく考えろよ?」
「……うん」
……その時、突然家のチャイムが鳴り響いた。
「……と、こんな時間に……」
誰だろうか気になりながら、オラは玄関に向かう。
そして鍵を開け、ドアを開いた。
「――はい。どちら様で……」
「……や、やあ……」
玄関先に立つ人物は、少し不器用な笑顔を見せ、片手を上げて挨拶をする。
その人は、オラがよく知る人だった……
「……よ、四郎さん?」
「……」
――四郎さんは、困ったような笑みを浮かべたまま、そこに立っていた。
「――本当にお久しぶりですね、四郎さん」
「あ、ああ……」
四郎さんを家に招き、テーブルを囲む。
四郎さんは、どこか落ち着かない様子だった。
それに、その身なり……着ている服はぼろぼろ。白髪混じりの髪もボサボサ。顔も煤汚れている。
「はい四郎さん。お茶です」
ひまわりは車椅子のまま、四郎さんに湯飲みを渡す。
「あ、ありがと……」
「四郎さんのことは、お父さん達から聞いてましたよ。ゆっくりしてくださいね」
笑顔を見せたひまわりは、奥へと戻っていった。
そんな彼女の背中を見ながら、四郎さんは呟く。
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