風間くんの言葉は、囁くように、静かにオラの耳に届いた。
雨音は激しく響く。だけど彼の声は、それを潜り抜け、やけにはっきりと聞こえた。
(………クソ……)
思わず、そう思った。
それは、オラ自身に対する言葉だった。
風間くんと別れ、オラは家路につく。
雨は一段と強く降り注いでいたが、オラには傘をさす気力すらなかった。
(……ひまわり……)
ずぶ濡れになりながら、雨の中に彼女の姿を思い浮かべる。
大切な家族。大切な妹。
いつも明るく、笑顔を向ける彼女。
……オラの、たった一人の、家族……
「………」
無言で、玄関の扉を開ける。
「――おかえりー」
ドアの音を聞いたのか、ひまわりは奥から出て来た。
「うわっ!ずぶ濡れじゃない!お兄ちゃん、傘持っていかなかったの!?」
雨に濡れたオラに、ひまわりは驚いていた。
しかしオラの耳は、彼女の言葉を素通りさせる。
ひまわりの顔を見た瞬間、風間くんの言葉が脳裏に甦っていた。
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