オラは、黙って車のエンジンをかけ、発車した。
後部座席には、包丁を持った四郎さん。そしてその隣には……
「……お、お兄ちゃん……」
ひまわりは、顔を真っ青にして震えていた。
そんなひまわりの顔を見ていないのか、四郎さんは、生気のない顔のまま前を見ていた。
……あの後、オラたちの元へひまわりが来た。
そして彼女は車椅子を降ろされ、人質となった。
歩けない彼女がいる状況に、下手に動くわけにはいかなかった。
オラは四郎さんの指示に従い、どこへ向かうのか分からないまま、車を走らせていた。
「……四郎さん。とにかく、一度落ち着いて……」
「――いいからッ!!……今は、黙って運転しててよ。しんちゃん……」
「……分かりました」
今は、刺激しない方が良さそうだ。
オラはそれ以上のことは言わず、ただ車を走らせる。
……それにしても、四郎さんは、いったいどうしてこんなことを……
最後に会ったのは、オラが小学校に入校したくらいだろうか……
あれから、四郎さんに、何があったのだろう……
様々な疑問が浮かぶ。当然、答えなど分からない。
今はただ、ひまわりの身の安全のために、車を運転するしかなかった。
四郎さんの指示のもと、辿り着いたのは山間にある廃屋だった。
今日は雲が出ているのか、星の灯りはほとんどない。辺りは漆黒の闇に閉ざされ、木々がどれ程あるのかも分からない。今ある光は、四郎さんが持ってきた懐中電灯だけであった。
薄気味悪さもあったが、それ以上にこれからのことが怖かった。
オラとひまわりは、そこにある柱に縛り付けられていた。
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