ごく普通の合宿のはずだった。あんな者を見なければ・・・

【PR】Akogare


271 :本当にあった怖い名無し:2011/05/20(金) 21:02:59.21 ID:x83Y3WRH0
そういえば…
俺はあのときの事を思い出し、
皆に「あの時さ、変な笑い声みたいなのと、なんか子供の姿見たよな?」と聞いてみた。
しかしみんなは、声はずっと聞こえていたけど、
子供の姿は最初のドアのところで見ただけで、家の中では見ていないという。
俺達がそんなやり取りをしていると、さっきまで黙っていたおじさんが、事件の詳細を話し始めた。
非常に長い話だったので要約すると。
俺達がであったのは、『ひょうせ』と呼ばれるものらしい。
これはあの土地特有の妖怪のようなもので、滅多に姿を見せないが、
稀に妊婦や不妊の家の屋根に現れて、笑い声をあげるらしい。
そうすると、妊婦は安産し、不妊の夫婦には子供が産まれるという、非常に縁起の良いものだそうな。
ただし、理由は全く分からないが、
数十年に一度、なぜか子供を襲い憑り殺してしまうという、厄介な存在でもあった。
ちなみにあの家は、全くいわくも何もなく、ただ『ひょうせ』が偶然現れただけの場所なのだが、
『ひょうせ』が子供を憑り殺そうとした場合、それに対する対抗策があり、
『ひょうせ』が最初に現れた場所に結界を作り封じ込め、簡易的な祠をつくって奉ることで、
殺されるのを防ぐ事ができるらしい。
合宿所から帰る直前、俺達が見たのは、その封じ込め作業だったわけだ。

272 :本当にあった怖い名無し:2011/05/20(金) 21:03:29.67 ID:x83Y3WRH0
おじさんは続けて、ただ今回は何かおかしいのだという。
普通、祠をつくって奉ればそれで終るはずなのだが、今回はどういうわけだが逃げられてしまって、
E介がまた被害に会い、しかも俺のところにまで現れている。
それに、そもそも現れるだけでも珍しい『ひょうせ』が、
自分達の村とその周辺以外に現れる、というのも全く前例がないうえに、
『ひょうせ』が前回子供を襲ったのは20年ほど前で、早すぎるのだそうな。
ただ、おかしいおかしいといっても、現実に起きてしまっているのだから仕方が無い。
俺達は学校で、村から来たお坊さんに簡易的な祈祷をしてもらい、お札を貰って、
「君たちはこれで大丈夫だろう」と言われ帰された。
ちなみに、E介に関しては、暫らくお寺で預かって様子を見て、
その間にもう一度祠を建てて、『ひょうせ』を奉ってみるとの事だった。
学校から帰された俺達は、各々迎えに来ていた親に連れられて帰る予定だったのだが、
話し合って、ひとまず学校から一番近い俺の家に全員で泊まることにした。
安全と言われていてもやはり不安だし、全員でいたほうが少しは心細く無いと思ったからだった。
その夜、俺達が部屋でゲームしていると、
コン…コン…コン…コン…と、窓を規則的に叩く音がした。

273 :本当にあった怖い名無し:2011/05/20(金) 21:04:40.52 ID:x83Y3WRH0
さっき説明した通り、俺の部屋は車庫の上にあり、壁もほぼ垂直なので、よじ登って窓を叩くなどまずできない。
しかも、その窓は昨晩、例の子供が覗き込んでいた窓だ…
状況が状況だけに、全員が顔をこわばらせていると、
B太が強がって「なんだよ、流石に誰かの悪戯か風のせいだろ?」と、カーテンを開けようとした。
俺は大慌てでB太に事情を話し、カーテンをあけるのを踏みとどまらせた。
窓を叩く音はまだ続いている。
D幸が、「やっぱ正体確認したほうがよくね?分からないままのほうが余計こえーよ…」と言ってきた。
たしかに、何かその通りな気がした。
なんだか分からないものが一晩中窓を叩いている状況なんて、とても耐えられそうに無い。
俺達は階段のところまで移動し、カーテンを少し開けて、隙間から俺の部屋を見てみた。
いた…
昨日のあれが、やはり昨日と同じように首をらしき棒を伸ばし、窓から俺の部屋を覗き込んでいる。
そして時々、コン…コン…と頭を窓にぶつけている。

274 :本当にあった怖い名無し:2011/05/20(金) 21:05:45.22 ID:x83Y3WRH0
「ホホホ…ホホホ…ホホホ…」という、例の抑揚の無い笑い声のようなものも聞こえてきた。
音の正体はこれだった。
異様な光景だった。
そして、昨日は気付かなかったが、あれは子供と言うより、和服を来た人形のようだった。
頭が窓にぶつかる音も、人間の頭と言うより、中身が空洞の人形のような音だ。
C広が、「ひょうせって、今日もう一度封じ込めたんじゃねーのかよ…」と呟いた。
その時、俺の親父が騒ぎに気付いて、「お前ら何やってるんだ?」と階段を上がってきた。
その声にびっくりしたA也が、思わず腕を窓にぶつけて、ドン!と大きな音を立ててしまった。