学生時代に気になっていた「貧乏な後輩」。しかし時間が経ったことで、それが恋だとわかり…。

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俺の家は小さなパン屋をしていた。親父がパンを焼いて、
お袋が店で売るという店員2人の小さな店だった。

俺は幼稚園のころから店を手伝っていた。 
すぐ横にはおじさんがやっている豆腐屋もあったので、かけもち
で手伝っていた。 友達と遊ぶのも良かったが、店でお客さんと話す方が好きだった。

俺が中学生のころ、うちの店によく来る親子連れがいた。
決まって食パンとラスクとパンの耳を買っていった。
お袋はいつも一緒に来る女の子にアンパンをあげていた。
お袋は「あの人は可哀想な人なのよ」と言っていたが俺にはよく分からなかった。
しかし、アンパンをあげた時の嬉しそうな顔は本当に絵に描いたような笑顔だった。

それからしばらくして、お店に来たお客さんの話でお袋の言葉の意味が分かった。
その家庭は母子家庭で子供が4人もいた。早くに親父さんをなくして母親1人で育てていた。
しかも、その兄弟の1人が中学生で俺と同じ部活の後輩だということも分かった。その後輩は女の子で普通の子だった。ただ、思い出して見ると、
お弁当を忘れて来る日が結構あった。俺はそのことと、聞いた話とが一気に合わさった。
俺はショックだった、どうして今まで気付かなかったのかと悔やんだ。
別に何をしてあげるというわけでもないのに、とにかく自分の無神経さに腹が立った。 俺は次の日から、その後輩に話しかけるようにした。できるだけ近くにいようとした。
そうしないと気がすまなかった。
俺はお弁当を2人前持って登校するようにしていた。うちの中学は弁当は部室で食べることが基本になっていたので、
後輩がお弁当を持っていないと分かったときには
「俺もう食えないから1つ食ってくんない?」とあげることにした。
遠慮しながらも「ありがとうございます」と嬉しそうな顔をしてくれるのが
俺の何よりの楽しみだった。
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