74:名も無き被検体774号+:2013/03/23(土) 23:27:08.84 ID:m0kNzr3Y0
切ないねー
76:名も無き被検体774号+:2013/03/23(土) 23:39:27.18 ID:E+Aq0yLX0
いいなあ
82:アキ:2013/03/24(日) 00:09:29.79 ID:pmN8elV80
ハルと雪が上手くいくことを願いながらも、
私は何となくこの後の流れを予想していた。
もし夏の言うとおり雪がふられしまったら。
夏は、雪を精一杯慰めるだろう。
もしかしたらその時告白するかもしれない。
でも雪は「断る」と言ってくれた。
ほだされないと、約束してくれた。
だから夏もふられる。
雪の言うように、このまま四人の関係が壊れないなんて、有り得るのだろうか。
言いようのない不安な気持ちに襲われた。
83:アキ:2013/03/24(日) 00:11:36.30 ID:pmN8elV80
そんなことをぐるぐる考えていると、教室のドアが開いた。
雪が「あれ、夏君もいたんだ」とぎこちなく笑った。
まだ教室にクラスメートが数人いたから、
私は雪を引っ張って、カーテンの中に連れ込んだ。
入った途端、雪の両目からぼろぼろと涙がこぼれた。
そして「ダメだったぁ」と呟いたんだ。
「なんで?」と聞いてしまった私に、
「好きな人がいるんやって」と嗚咽混じりに答える雪。
「誰か聞いた?」と続けると、首を横に振って一層泣き出してしまった。
雪を抱きしめて撫でてあげることしかできなかった。
84:アキ:2013/03/24(日) 00:16:32.18 ID:pmN8elV80
少し落ち着いた頃、雪が言った
「ふられるだろうなーって、思ってたんよ」
そうなん?て聞く私に、力無く雪は笑った。
カーテンから出ると、夏が何とも言えない顔でこっちを見てた。
そして「雪ちゃん、帰ろう」って言った。
私なんて夏の眼中に入っていないようだった。
その証拠に夏は言った。
「アキはハルに付いてやって」
85:アキ:2013/03/24(日) 00:24:05.42 ID:pmN8elV80
ショックだった。
夏は、雪と二人きりになりたいから、こんなこと言うんだ。
そう思った。
けれど雪は一人で教室から出て行った。
私の顔を見ずに。
その後を夏が走って追いかけてった。
私に「ハル頼んだ」と言い残して。
なんだか打ちのめされた気分で、ふらふらしながらハルの教室へ向かった。
今の私のメンタルでハルをフォローできっこないのに、と思いながら。
でもハルはもう教室にはいなかった。
ホッとした。
そして一人でふらふらと帰った。
86:名も無き被検体774号+:2013/03/24(日) 00:24:50.46 ID:sCcm4Qtb0
これが青春か…
87:アキ:2013/03/24(日) 00:29:03.15 ID:pmN8elV80
次の日学校へ行くのは気が重かった。
あの後の雪と夏を想像するだけで、ひどく胸が痛んだ。
重たい体を引きずるように教室に入ったら、雪はまだ来ていなかった。
その日雪は学校を休んだ。
昼休みになった。
夏達とご飯を食べる曜日だったけれど、どうすればいいのか解らず悩んでいた。
けれど夏が迎えに来てくれた。
後ろには相変わらずヌボーっとしたハルが立っていた。
いつもと変わらない笑顔で「いくぞ」って夏が言って、なんだかすごくホッとした。
三人で定位置でお弁当広げた時も、気まずさを振り払うように夏が喋った。
でもそれも尽きて、三人に沈黙が走った。
88:アキ:2013/03/24(日) 00:35:53.86 ID:pmN8elV80
「昨日、あの後、雪どうだった?」最初に口を開いたのは私だった。
「駅で別れたから、その後は解らんけど、それまでは泣いとった」
夏がぽつりと呟いた。
ハルは黙って箸を進めてた。
そんなハルと夏に、
「ごめん、昨日ハルの教室行ったけど、ハル帰ってた」と謝った。
ハルが「教室、来てくれたん?」って、やっと顔を上げた。
「うん」って答えると、そっかぁって少しハルの表情が和らいだ。
そんなハルを見て、夏が言った。
「今日こそは二人で帰ったら?」
訳が分からなくて、「え、なんで」と聞く私に、「二人お似合いやし」と笑う夏。
あまりに衝撃が大きくて、黙り込んでしまった。
91:アキ:2013/03/24(日) 00:44:32.89 ID:pmN8elV80
「な、ハル」と笑う夏に、「いや、二人じゃなくていいよ」と返すハル。
「夏はなんでそういうこと言うん?」
喉カラッカラみたいな声で訊ねた。
「二人が上手くいったらいいなぁーと思うし」
夏が笑顔でそう発した時、
もう苦しくてしょうがなかったけど、声を振り絞って言った。
「ハルには好きな人がいるんやろ、勝手なこと言わんでよ」
そして一人で教室に戻った。
やっぱり上手くいかなくなってしまったと、めそめそ嘆きながら。
92:アキ:2013/03/24(日) 00:46:32.38 ID:pmN8elV80
次の日、雪は登校してきた。
明るく振る舞う雪に、かける言葉が見つからなかった。
そんな雰囲気を察したのか「もうハル君なんかどうでもいいー」と、
雪はニコニコ笑顔で言い放った。
だから今まで通り、四人でやっていこうね
雪は笑顔でそう言った。
「昔みたいに戻れるかな」と聞く私に、「努力する」と笑った雪。
雪は強い子だったね。
97:アキ:2013/03/24(日) 00:51:49.93 ID:pmN8elV80
そして四人で顔を合わせて、雪が笑顔で場を盛り上げた。
ハルも私もホッとして、ぬるま湯に身を委ねていた。
夏だけは、雪のことを真っ直ぐ見ていた。
それから夏は、より甲斐甲斐しく雪を気遣い始めた。
誰が見ても、夏が雪を好きなのは明確だった。
夏は隠そうともせずに、毎日雪にアタックしていた。
けれど「好き」とは伝えていないようだった。
98:アキ:2013/03/24(日) 00:56:04.98 ID:pmN8elV80
告白されなきゃ断りようがない、雪がぽつりとそう呟いた。
確かにその通りで、なかなか変化しない関係性に、
私の気持ちは宙ぶらりんになっていた。
夏が告白したと聞いたらショックだろうけど、
夏が告白しなければ夏は雪を諦めない。
何度か告白をけしかけたこともあった。
でも夏は笑ってるだけだった。
クリスマスは四人で過ごした。
カラオケに行って、お世辞でも上手とは言えない夏と雪の歌を聞いて笑ってた。
呑気に笑っていられたのは、この時までだった。
101:アキ:2013/03/24(日) 01:01:41.16 ID:pmN8elV80
少し街をぶらついて、解散になった。
夏と二人で同じ駅に帰れることが嬉しかった。
でも夏は、電車に乗り込む前に行ってしまった。
雪のところへ。
「俺やっぱ雪ちゃん送ってくわ」って、走って行ってしまった。
一人、満員電車に揺られて、
クリスマスで浮き足立ってる街を見下ろしながら帰った。
いやな予感がしていた。
102:アキ:2013/03/24(日) 01:08:03.57 ID:pmN8elV80
次の日、夏が珍しく電話をかけてきた。
受話器の向こうで夏が興奮していて、もうなんとなく予想はついていた。
雪と上手くいったんだろう。
「雪ちゃんとチューした!!」
夏の言葉は私の予想の一寸先進んでいた。
胸が大きく跳ねた。
「告白したん?」と力なく訊ねる私に、
「いや、正式にはまだ」と彼は言った。
好きだと伝えけど、付き合ってくれとは言っていない。
「でも確かにあの瞬間、雪ちゃんと心が通じ合ってチューした!」
受話器の向こうで夏がどんな顔してた容易に想像が付く。
私は「うん、うん、へぇ」を繰り返すロボットになっていた。
103:名も無き被検体774号+:2013/03/24(日) 01:10:06.19 ID:qef5VNgf0
うわぁーツラい
104:名も無き被検体774号+:2013/03/24(日) 01:10:26.87 ID:UpItWECJ0
胸が張り裂けてしまうね
105:アキ:2013/03/24(日) 01:16:57.36 ID:pmN8elV80
最悪の冬休みだった。
廃人のように横たわる毎日だった。
雪からの連絡は返せなかった。
けれど「話がしたい」、雪からのその文面を見て、話さなきゃ、と思った。
そして私の地元に雪がやってきた。
二人で無言で公園へ向かって、その空気のままベンチに座った。
雪がぶるぶる震えながら「ごめんね」と泣いた。
「雪は、私が夏のことを好きなの、とっくに気付いてたんやね」
私がそう言うと、雪は首を縦に振った。
「でも、雪も夏を好きになっちゃったんやね」
私のその言葉に雪はワッと泣き出した。
106:名も無き被検体774号+:2013/03/24(日) 01:18:15.89 ID:Jcb8Y3Io0
おいついた
切ないなー泣けてくる
107:アキ:2013/03/24(日) 01:25:09.35 ID:pmN8elV80
「ハル君のことがあって、毎日泣いてて
でもみんなが心配するから、学校では平気なふりしてて
そんなとき、夏君が毎日メール送ってくれてて
大丈夫?とか、今日ハルの前で頑張ってたね、とか、
全部気付いてくれてて
沢山励ましてくれて気遣ってくれて、褒めてくれて
気付いたら、少しずつ夏君の時間が増えてて
でもまだハル君のこと気になってて、
クリスマスの日も本当に辛くて
みんなと別れて泣きそうになりながら帰ってたら、
夏君が追いかけてきてくれた
嬉しくて、ありがとうって思って
ごめん…」
雪は言葉を詰まらせながらそう言った。
私が、気丈に振る舞う雪に気付かず
現状に甘えてぬるま湯に浸かってる間に、
夏だけは気付いたんだ。
それはそうだろう。
夏は誰よりも雪を見つめていた。
109:アキ:2013/03/24(日) 01:30:50.08 ID:pmN8elV80
「ごめん」と繰り返す雪に、返事はできなかった。
だって雪は言ったじゃないか。
「断るからね」って。
ほだされないからねってことじゃなかったの?
裏切り者。
私の方が夏をずっと好きなのに。
でも、私にそんなこと言う権利ある?
人の気持ちなんて変わるのが当たり前だし、夏は私の私有物じゃない。
ただ私が夏を好きだと言うだけで、人の恋愛を制限していいはずがない。
そして何より、気丈に振る舞う親友に気付いてあげられなかった。
それが全ての原因。
私が気付いてあげられたら、こんなに雪を泣かせてしまうことも、
こんなことになって私が泣くこともなかったかもしれない。
そもそも、いつも「私なんか」って自分を卑下して、
私はスタートラインにすら立っていなかった。
夏に好きになって貰う努力を、何もしていなかった。
自分の気持ちから逃げて、全て人任せ。
そんなの、私が選ばれないのは当然のことだった。
111:名も無き被検体774号+:2013/03/24(日) 01:32:25.25 ID:yjd4bIAsO
切ないな
112:アキ:2013/03/24(日) 01:35:43.78 ID:pmN8elV80
「雪、夏は、初めて雪と会話したあの日から、
ずっと雪のことが好きやったんよ
夏の気持ちが報われて良かった」
恥ずかしげもなくぼろぼろ泣きながら、「夏をよろしくね」って言った。
「やだ、私アキの方が大事やもん、夏とは付き合わない」
そう泣きじゃくる雪に、
「夏と雪は好き同士なのに、何言ってるん?
そんな気の使われ方嬉しくないし」
でも、でも、と続ける雪に、私は最大級かっこつけて言ったんだ。
「私のことが大事なら、私の大事な夏を大事にしてやってよ」
やっと雪は、うんって言ってくれた。