91:名も無き被検体774号+:2011/10/22(土) 19:17:36.48 ID:UkOZl8kt0
金とられたんじゃ・・・
92:いちじ ◆.RK0SmlnEImq :2011/10/22(土) 19:20:20.38 ID:oLGClRRO0
鏡台の引き出し開けて、みよ姉は黒い長財布をとりだした。
普段みよ姉が使っている財布じゃなくて、
多分大元のお金だと思う。
みよ姉の行動がどういう事か、俺にもわかった。
俺「え、嘘やろ?」
姉「わからん」
みよ姉はバッと札入れを見開いた。
空っぽだった。
みよ姉はその場に座り込み、俺は立ち尽くした。
二人とも無言だった。
93:名も無き被検体774号+:2011/10/22(土) 19:22:48.17 ID:mSEqxl7I0
泣ける・・・
94:名も無き被検体774号+:2011/10/22(土) 19:23:46.78 ID:PRphkBFm0
トシ・・・。
ホットーケーキの時からそれ狙いだったのか?
99:いちじ ◆.RK0SmlnEImq :2011/10/22(土) 19:36:11.49 ID:oLGClRRO0
俺「…ごめん」
姉「…なんで一次が謝るんよ。君が盗ったんやないやろ」
俺「でも、俺が、トシと友達になっちゃったから、こんな…」
姉「いいよ。友達になって、楽しかったんやろ?ならいいよ」
俺「よくないよ、お金….」
みよ姉がお金にうるさいのはよく知ってた。二人で暮らすには十分の収入があるのに、
節電しろ節水しろとよく言っていた。
成人したお祝いに買った車も、借金はしたくないと言って現金支払いだった。
姉「こうなるやろうと、薄々わかっとったし。
あの親子との手切れ金だと思えば安いもんよ、6千円」
姉はその長財布に大金をいれてなかったらしい。
こうなる事を見越して。
101:名も無き被検体774号+:2011/10/22(土) 19:48:43.75 ID:PRphkBFm0
姉はその長財布に大金をいれてなかったらしい。こうなる事を見越して。
↑これが本当ならみよ姉はネ申。
103:名も無き被検体774号+:2011/10/22(土) 19:56:29.37 ID:sT4/b7Qy0
つか、本当に良く出来た女性だね。
たいした女だ。
104:いちじ ◆.RK0SmlnEImq :2011/10/22(土) 20:07:33.62 ID:oLGClRRO0
みよ姉は教えてくれた。
トシがしょっちゅう家来るようになって、
たまにお金が合わなくなる事があった事を。
最悪の場合を考えて、みよ姉はクレジットカードや印鑑、通帳を別の所へ隠し、
お金がよく無くなる財布にはレシート9割千円札1割をいれるようになった。
厚みをだしてお金ごまかしてたんだとw
六千円っていうには、今までに盗まれたお金の総額。
その時盗まれたのは2千円だった。
トシ父がみよ姉を引き止め、トシが盗むっていう役割りがあったんじゃないか。
あの二人はグルだったんだと思う。
みよ姉はそう言った。
信じられなかった。
みよ姉「人間ってそーゆーもんよ。
だから人に依存せんで、自立せんにゃいけんのんよ」
人間不信になりかけたけど、みよ姉の言うとおり、そういうもんだと割り切るようにした。
じゃないとやっていけない。
109:いちじ ◆.RK0SmlnEImq :2011/10/22(土) 20:26:23.00 ID:oLGClRRO0
夏休みが開けて、学校が始まった。
トシの姿はなかった。
他の連中は、突然俺に冷たくなった。
トシがいなくなったからだろう。
また俺はぼっちになった。
少し寂しかったけど、元々ぼっちだったから過ごし方は知っていた。
もう誰も信じない、そこそこの付き合いをしよう。深い所まで関わっちゃだめ、
同情しちゃだめ、人は人はだ。
とか、いろいろ自分を律した。
そんなこんな毎日を過ごしてたら誕生日になった。
俺もただじっとしてこの日を待ってたわけじゃない。
アルバムを引っ張り出して父母の顔を見たり、家系図を探したり、
なんだかんだ足掻いていた。
毎年通り、ケンタッキーを食べてケーキを食べた。
いつ話してくれるんだろうってドキドキしてたけど、夕食では何事もなかった。
結局夜になった。
俺はみよ姉の部屋を訪れた。
去年みよ姉がそうしたように、
ファンタ2つを持って。
110: 忍法帖【Lv=40,xxxPT】 :2011/10/22(土) 20:28:16.93 ID:Xoh+Ic4T0
いよいよ核心だな
111:名も無き被検体774号+:2011/10/22(土) 20:28:18.27 ID:GhSgC5dO0
ついにか…
114:いちじ ◆.RK0SmlnEImq :2011/10/22(土) 20:44:15.46 ID:oLGClRRO0
みよ姉は布団の上に、俺も見た事のあるアルバムを広げて待っていた。
ファンタを一つ、みよ姉に放り投げて
みよ姉の隣に並んで座った。
みよ姉はアルバムの一枚の写真を指差した。
姉「これが森中家。私と君のおじいちゃんおばあちゃんの家ね。
そこに生まれたのが、私の母さんと君のお父さん」
そして写真と照らし合わせながら、
森中家の家系図を説明してくれた。
祖父母の間に伯母と父ができて、
伯母が嫁いだ先が川上家。
俺の母方の家が山下家らしい。
この時点で俺は森中一次、みよ姉は川上みよ、という名前だ。
118:いちじ ◆.RK0SmlnEImq :2011/10/22(土) 20:48:36.58 ID:oLGClRRO0
伯母と父は仲が良くて、しょっちゅう家族ぐるみで遊びに行ってた。
俺が4歳の夏、その日も二家族で遊びに行った。
けれど帰り道、事故が起きる。
その場にいあわせたのは父、母、俺、伯母、伯母夫、従姉の長女(17才)、
従姉の次女みよ(15才)の8人。
結果助かったのは3人のみ。
みよ姉、俺、伯母夫。
事故として処理されたけど、
みよ姉はそれは違うと言った。
自分の父が心中を企てたんだと、みよ姉は言った。
121:いちじ ◆.RK0SmlnEImq :2011/10/22(土) 20:52:43.99 ID:oLGClRRO0
みよ姉によると、伯母夫は誠実で真面目な人だった。
けれど勤め先の中小企業が倒産、同僚が新しい小会社を立ち上げるのに
伯母夫は協力してお金を投資、けれどその事業は失敗、借金だけが残ったそうだ。
伯母夫は家族の保険金で借金を返済した後、自殺した。
これは前の会社の人から葬式に聞いた話で、会社が倒産したのも、
お金を投資していたのも、そればかりか借金をしていたこともみよ姉は知らなかった。
123:いちじ ◆.RK0SmlnEImq :2011/10/22(土) 20:58:53.96 ID:oLGClRRO0
みよ姉は、県内トップレベルの進学校を高1で中退し、
俺と一緒に祖父の家で暮らすようになった。
川上家と俺の家族が住んでいた家や車は売ってお金に替えた。
みよ姉は資格をとるため専門学校に通った。俺は幼稚園に預けられた。
冬、祖父は階段から転倒して亡くなった。
祖父の痴呆と体の衰えが原因。
本当にそうかはわからない。
俺の断片的な記憶を信じると、少し違う気がするけど。
125:名も無き被検体774号+:2011/10/22(土) 21:03:04.79 ID:PRphkBFm0
「俺の断片的な記憶」って何?
128:いちじ ◆.RK0SmlnEImq :2011/10/22(土) 21:08:39.90 ID:oLGClRRO0
>>125
うろ覚えなんだけどね
じいちゃんが階段から落ちた時、俺もそこにいたんだ
階段下でうずくまってるじいちゃんと、
階段上でじいちゃんを見下ろしてるみよ姉
っていう構図がすごい記憶に残ってる
127:いちじ ◆.RK0SmlnEImq :2011/10/22(土) 21:05:00.15 ID:oLGClRRO0
法的な手続きとかは、俺の母兄がしてくれたらしい。
俺とみよ姉は、母兄の養子となった。けど母兄は自分の家庭をもってる。
姉「だから、君と二人暮らししようと決めたんよ。君を施設に預けたくなかったし」
俺の背中をさすりながら、
「けどね、私も、いつまでも君と一緒ってわけにはいかないけん。
君はいずれ、一人で生きていかんにゃーいけん。その時がくるまでに、
自立した人になるんよ」
祖父が経営してた駐車場と貸し家があるんだけど、
母兄が、その収入をみよ姉の口座に振り込まれるようしてくれた。
二家族と祖父の財産や、みよ姉のバイトの給料 とかで十分暮らせるお金はあったらしい。
139:いちじ ◆.RK0SmlnEImq :2011/10/22(土) 23:38:25.75 ID:oLGClRRO0
姉「家族の事やトシ君の事とかで、
多分ナーバスになっとるじゃろーけど。
そんな事に囚われないでいいけんね」
悲観せずに。
堂々と生きーさいね。
みよ姉は去年と同じ事をまた言った。
その日は久しぶりにみよ姉と一緒寝た。
みよ姉のぬくもりを感じて、
あー俺孤独じゃないんだなあって思えた。
静かに泣いたら、みよ姉は頭を撫でて抱きしめてくれた。
おやすみ。
140:名も無き被検体774号+:2011/10/22(土) 23:44:28.98 ID:ZxVKUugJ0
いいなあああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
おやすみ
141:名も無き被検体774号+:2011/10/23(日) 00:12:34.43 ID:oiMvg34z0
いいお姉ちゃんだな。
おやすみ
146:名も無き被検体774号+:2011/10/23(日) 04:47:48.90 ID:bzxJcVjH0
たしかに山はないけど谷はあるな
あと7年分……気になりすぎて眠れない
148:いちじ ◆.RK0SmlnEImq :2011/10/23(日) 09:51:27.38 ID:R9YuRbwD0
五年生になった。
学校の話になる。
とくに人とつるむ事は無かったけど、
周りの奴らは普通に接してくれるようになった。
深い干渉はないけど、本当にクラスメイトとして交友した。
それから、二年生までよく遊んでた奴、
カズと同じクラスになった。
カズは何かと俺に声をかけてくれて、
気を遣ってくれた。
その気持ちは嬉しかったけど、煩わしくもあった。
クラスメイトに、ルミとナナという女子がいた。
ルミは昨年兵庫から転校してきたらしく、関西弁だった。大人しい感じの子。
ナナは目鼻口がはっきりしていて可愛い子だった。
昔からそこそこモテるクラスの人気者だった。アヤとユイは同じグループにいた。
俺は少し、ルミが気になってた。
少し影があって、たまにふっと冷めた目でクラスを見てるルミの事を、
もっと知りたいなーとか思ってた。
好機は訪れる。
150:いちじ ◆.RK0SmlnEImq :2011/10/23(日) 10:01:36.86 ID:R9YuRbwD0
カズもどうやらルミの事が好きだったらしく、俺に良く相談してきた。
笑った顔が可愛いとか、清楚な所が好きとか。
俺は友達いないからこういう秘密を話す事はないだろうって思ってたんだと思う。
俺もルミが気になってたから、その話には
結構食いついた。もちろん、俺もルミが
好きってことはばれないように。
ある時、ナナが俺の事を好きという噂が
流れた。カズを通して知った。
あのナナがなんで?って思う部分もあったけど、
俺の事好きになる奴なんていたんだって驚いた。いやまだ確実な情報では
なかったんだけど、ちょっと浮かれた。
151:いちじ ◆.RK0SmlnEImq :2011/10/23(日) 10:16:07.28 ID:R9YuRbwD0
俺はルミよりもだんだんナナに目が行くようになった。
カズと同じ人を好きになってるっていう、
罪悪感がない分、ナナを好きになるのは
簡単だった。明るい子だし、みんなに優しいし、良い子だなー尊敬するわ
と良い所を見つけては好きになっていった。
一方で、カズがルミの事好きという噂も広まった。
もちろん俺が言いふらしたんじゃなく、カズがルミにアタックしすぎて
ばれた。
カズは俺に提案した。
一次はナナに、俺はルミに告ろう。