父ちゃん母ちゃん弟だったらいいなあなんて思ってた俺が甘かった
相変わらず動きもしねえ左腕もってかれちまったんだよ
原因不明の左腕麻痺だとよ今も動かねえんだこれが
そいつぶっ飛ばすまで篭り続ける決意したんだわ怖いんだけどな
三週間が過ぎたころか
修行あけに篭ったもんだから体力が限界突破の突破になっちまったんだ
気失って糞尿垂れ流しだ
自殺ってどう思う?
俺は決して悪いことではないと思うんだが
自殺は悪いことだよ
そしたらよアニメや漫画みてえに何かが光ってんだよ目の前で
遅せえよ仏さんよ、と思ったな
迎えにくるには早過ぎんだけどな
よくよくよくよく見るとよ
死んだ修行仲間なんだよ
俺にこう言うんだよ
「お前の父ちゃん母ちゃん弟をこっちに送れ、お前のこと連れてこうと必死だぞ死にたくなけりゃ親だろうと兄弟だろうと送れ」っては
それかよっぽどの壊れもんだ
良いも悪いも他人が口出しする事じゃあねえな
けどよ自殺するってのは生きてる他人の心を殺す行為になる事を知ってなきゃいかんな
俺は本末転倒だなと笑ったよ
ふと目が覚めると糞尿垂れ流しの中年が泣いてたんだわ
足にめをやると目の前で父ちゃん母ちゃん弟がグチャグチャになった体で俺を引っ張ってるんだわ
俺は必死に振り払って正座して泣きながら葬式おっ始めたんだ
引導文って言ってな、言えば向こうの世界に行くための切符みたいなもんだ
勧請して読経して引導文読んで読経して回向してな
三時間かかったんだわ
首もとに三人がかりでたかられてよ
俺は何で両親と弟に殺されなきゃいけないのか考えたんだわ
そんでだ、篭るの辞めて親戚中歩き回った
そしたらよ俺が両親だと思ってたのは血の繋がってない人間なんだとよ
はー怖いな知らないってのは怖いな
死んだ修行仲間の数珠もってよ
あっちこっち歩き回った結果死んでたんだよ両親
悲しかったあれは
他人に殺されかけるわ両親死んでるわで困ったな
そんでだ他人だと分かっても親は親だ
供養を始めた訳だ、毎日毎日な
その頃には見えるとか感じるとかそんな事どうでも良くてな
いるのが当たり前なんだよ本来
供養にも種類があってな
先に出てきた触るような連中はだな坊主がヘナヘナお経読んでも意味ねえんだわ
なんでかっつうとな、元人間だからな人間に触ればそいつと同体になれるようなんだわ滅茶苦茶だわな
しまゃあどうするかっていうと、ここで先の荒行で伝承された祈祷をするわけだ
それはそれはもう凄えんだわ
自分の命掛けて修行して会得したもんてのは、ただ職人が時間掛けて会得した技術だったり、スポーツ選手が得た技術とは違うんだな
生前から何か思い当たる節があったのでしょうか?
最後まで書き切ってくれよ
俺は最後まで付き合うぞ
真実の追求は、命が掛かるもんだと定義したとき
その真実の為に命を掛けることは、間違っているか?
答えられる時で良いので、答えてくれ
そりゃ後で書くから待ってろな
その祈祷をだな自分でするんじゃなくて大先輩に依頼したんだわ
先輩の寺の本堂で祈祷が始まって5分くらいか、まだ祈祷自体は始まってない時にな俺は自分の意識が90パーセントくらい遠のくのが分かったんだわ
乗っ取られる感じだな
降ろしてきたもんに対して事を起こして送るんだな
その降ろしてきた段階な
そんでだ俺は自分の意思とは関係なく背中を向けて勧請してる先輩の方へノソノソ歩いたんだ
真後ろにたった時だった
先輩の読経が始まった
同時に祈祷の始まりだ
そのあとそこからいらないモノを先輩は捨てていった
俺の左手に包帯で結ばれた死んだ仲間の数珠が弾けた
御役御免ってやつだ守ってくれてありがとうな
その時だ俺の左手が動いた