52:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします: 2017/01/01(日) 00:51:13.57 ID:o5nUPK2qO.net
ヒロコ、、
53:1 ◆od.mCbJyhw: 2017/01/01(日) 00:52:55.90 ID:GsaCylkfo.net
俺「うん、ヒロコとバンドができて楽しかった」
俺「俺たちは、ただ楽しいと思ってやってただけだから」
俺「それでヒロコの夢を叶えられたなら、本当に良かった」
すると突然武智が近づいてきた。
武智「サマーハーツ最高だったわー!!」
俺の話を遮って、三人の輪に入り込んできた。
吉谷「お前、邪魔すんなよwwwwww」
武智「何が!?」
54:1 ◆od.mCbJyhw: 2017/01/01(日) 00:58:45.14 ID:GsaCylkfo.net
ヒロコはそんな様子を眺めて、泣きながら笑っていた。
満面の笑顔だった。
夜も深まり、熱を増す夏祭りの喧騒の中で、
ヒロコは笑っていた。
本当に文句のない笑顔で、俺はきっと、その笑顔が好きだった。
55:1 ◆od.mCbJyhw: 2017/01/01(日) 01:30:36.24 ID:GsaCylkfo.net
合宿7日目。東京に帰る日が来た。
この日もご多分にもれず、カンカン照りの暑い日だった。
ずっとここにいるような気がしていたけど、
やっぱり一週間なんて本当にあっという間だった。
バスが出発する少し前に、ヒロコが宿に訪れた。
宿舎の裏口から委員長が必死に俺を呼ぶので、
何事かと思ったらヒロコが来ていたのだ。
先生の目もあるし、と凄く急かされた。
56:1 ◆od.mCbJyhw: 2017/01/01(日) 01:35:16.48 ID:GsaCylkfo.net
別れ際に会うと辛くなってしまうので、できれば会いたくなかったけど、
やっぱりそうもいかなかった。
ヒロコは、俺を見つけると柔らかな笑顔になった。
その笑顔を見ると、心がきゅっと締め付けられる気がした。
ヒロコ「東京、帰っちゃうんだね」
俺「そうだね。今日までだから……」
ヒロコ「これからも、ブルーハーツは聴くの?」
俺「うん、きっとね。好きだしさ」
57:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします: 2017/01/01(日) 01:36:15.43 ID:o5nUPK2qO.net
なんだろう、胸がムズムズする
58:1 ◆od.mCbJyhw: 2017/01/01(日) 01:37:36.53 ID:GsaCylkfo.net
どうしてなのか、これまでのように会話が盛り上がらない。
どことなく、やるせなさを感じた。
俺「ヒロコは、これからどうするの?」
ヒロコ「これから? あたしの?」
俺「うん」
ヒロコ「実はあたし、中学卒業したらママの実家の方に転校するの」
宿舎の裏側は日陰になっていたものの、頭上には青々とした空が見えた。
遠くに、わずかだが雲が見えた。
59:1 ◆od.mCbJyhw: 2017/01/01(日) 01:38:22.42 ID:GsaCylkfo.net
俺「そっか。ここからも離れちゃうんだね」
ヒロコ「そうなの。1は? 1はどうするの?」
そう訊かれて、ちょっと考えた。
何か取り繕うと思ったけど、今の自分をありのままに伝えることにした。
俺「俺はきっと、東京の大学に行くと思う。何になりたいかとか、全然分からないけど」
ヒロコ「そっかあ、やっぱり東京にいるんだよね」
60:1 ◆od.mCbJyhw: 2017/01/01(日) 01:43:13.61 ID:GsaCylkfo.net
ヒロコ「それなら、あたしも東京の大学に行く」
ヒロコ「あたし馬鹿だけど、頑張って勉強して、東京の大学に行く」
俺「本当に?」
驚いてそう尋ねると、「これでも国語だけはなんとかなるんだから」と苦笑いした。
ヒロコ「もしそうなったらさ、その時1は大学4年であたしは大学1年だよね」
俺「ああ、全部上手く行けば……そうなるなぁ」
ヒロコは「だよねだよね!」と嬉しそうに体を揺らした。
61:1 ◆od.mCbJyhw: 2017/01/01(日) 01:46:33.63 ID:GsaCylkfo.net
ヒロコ「ねえ、そこでまた『THE SUMMER HEARTS』作って、一緒にバンドしない?」
一瞬冗談のようにも聞こえる話だったが、ヒロコの表情は真剣そのものだ。
ヒロコ「あたしは、1の歌が好きなんだよ」
俺「またそれは、随分壮大な話だね……」
ヒロコ「あたしは絶対勉強して追いつくから!」
そう言って、ヒロコは俺にピックを差し出した。
俺「これ、なに?」
62:1 ◆od.mCbJyhw: 2017/01/01(日) 01:48:01.25 ID:GsaCylkfo.net
ヒロコ「あたしが使ってたピック。あげたんじゃないよ、ただ貸してあげるだけ」
俺「え? 貸すって?」
そう尋ねると、ヒロコは「ふふ」と笑みをこぼした。
ヒロコ「あたしが東京の大学に行った時、返してもらうから。それまで持ってて」
ヒロコ「絶対なくしちゃダメだからね」
「そういうことかよ~」と笑ってしまった。
63:1 ◆od.mCbJyhw: 2017/01/01(日) 01:51:41.60 ID:GsaCylkfo.net
ヒロコ「その時はまた、一緒にバンドしようね」
俺「分かったよ、きっとね」
ヒロコと俺は、そんなやり取りをして別れた。
実現するかも分からないような夢見がちな約束だったと思う。
でもこの時は、ヒロコも俺も、信じていればきっとそういう未来が訪れると思っていた。
64:1 ◆od.mCbJyhw: 2017/01/01(日) 01:53:08.83 ID:GsaCylkfo.net
俺は今、大学4年の冬を迎えたが、あれからヒロコとは一度も会っていない。
あの子が今どこで、何をしているかも、正直知る術はない。
きっと、もう二度と会うこともないだろう。
願わくば、今もきっとどこかで、バンドをしていたらいいのになと思う。
あの時のまま、バンドに憧れて、大好きな仲間と一緒に楽しくギターを弾けていたらいいのになと思う。
変わらず、あの笑顔のままで。
65:1 ◆od.mCbJyhw: 2017/01/01(日) 01:56:57.35 ID:GsaCylkfo.net
あの夏の一週間のことは、ずっと忘れられない。
ヒロコは、あの夏の記憶の片隅にいて、ずっと笑っている。
今も俺は、カラオケで『終わらない歌』を入れるたび、夏祭りの熱気と、あの女の子の笑顔を思い出す。
『THE SUMMER HEARTS』の思い出とともに。
75:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします: 2017/01/01(日) 15:39:26.73 ID:DPtiWhvbo.net
偶然見つけたけど面白かった
年明け早々いいもん見れたわ
ありがとな
77:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします: 2017/01/01(日) 19:57:47.95 ID:fbSFBzBQo.net
めっっちゃ良スレだったわ
正月の時間全部持ってかれたけど、逆に正月の暇つぶしにもってこいだったわ
ありがとなーー
76:以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします: 2017/01/01(日) 16:48:59.07 ID:Es/T2heao.net
高校の頃に戻りたくなる話だった
同窓会とか、もう何年も行ってないけどな…
おつかれ