夢で出会った子に恋をした人間の末路・・・

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134:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2016/07/21(木) 21:29:22.49ID:ykLL93O3.net
十一月の海はとても寒かった。
彼はここではないここで、私のことを好きって言ってくれた。
私も好きだった。
たった一夜の夢だったけど、それでも私は彼が好きだった。

135:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2016/07/21(木) 21:29:39.96ID:ykLL93O3.net
でもここに彼はいない。
だって、全部私が創った。
彼は夢の中にしかいない。
ユメミヤは小さい頃からいつも好きな夢を私に見せてくれる。
だけど、夢から覚めたあとの、この感情をどうすればいいかは教えてくれない。

136:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2016/07/21(木) 21:30:00.79ID:ykLL93O3.net
いつからだろう、夢に逃げるようになったのは。
小さい頃にユメミヤが現れたときから、私は辛いことがあるといつも楽しい夢をみるようにした。

137:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2016/07/21(木) 21:30:19.79ID:ykLL93O3.net
夢の中では私は無敵で、全部思い通り。
だけど夢から覚めたら、私には何もない。

138:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2016/07/21(木) 21:30:39.58ID:ykLL93O3.net
だから、今回の夢は少しシチュエーションを変えてみた。
彼も現実からユメミヤに連れてこられて、私と同じ。
そういう設定。
そんな風にしたら彼が本当にいるみたいに思えてきて、幸せだった。

139:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2016/07/21(木) 21:31:13.86ID:ykLL93O3.net
それなのに、起きてみたらやっぱり彼はいなかった。
なんでも思い通りになるんだったら、私は起きたくなかった。
ずっと夢を見ていたかった。

140:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2016/07/21(木) 21:31:31.15ID:ykLL93O3.net
でも、彼はそれを許してはくれなかった。
その代わり私と一緒に現実を生きてくれるって言った。
そう言ったのに……

141:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2016/07/21(木) 21:31:48.71ID:ykLL93O3.net
「……嘘つき」
自然と声が漏れていた。
別にいっか、ここには私の声に反応してくれる人はだれもいない。

142:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2016/07/21(木) 21:32:36.15ID:ykLL93O3.net
また会えるかな、そんなかすかな思いを胸に、だれもいない海で私は眠りに落ちた。

143:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2016/07/21(木) 21:33:12.55ID:ykLL93O3.net

なにかに呼ばれた気がして、目を開ける。
気がつくと、辺りはもう暗くなっていた。
結局夢の中でも彼には会えなかった。
そしてここにも彼はいない。
いや、彼どころかこんな田舎でこんな時間、しかも十一月だ、周りにはだれもいない。
私は一人、

なはずだった。

144:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2016/07/21(木) 21:33:43.80ID:ykLL93O3.net
「おはよ」

その声は確かに聞こえた。
どうしてここにいるの? なんで?
横から聞こえた声に、
聞きたいことがいっぱいあった。
伝えたいこともいっぱいあった。
朝おきてから泣きっぱなしだったから目も腫れてるし、今もきっと涙で顔がぐちゃぐちゃで大丈夫かな、とか。
頭の中もぐちゃぐちゃで、結局出てきた言葉は一つだった。


145:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2016/07/21(木) 21:34:09.09ID:fLRKoG/Y.net
「おはよう」

146:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2016/07/21(木) 21:34:33.20ID:fLRKoG/Y.net

「おはようございます」
目を開けるとユメミヤがまだそこにいた。
というか、俺は何回こいつにおはようって言われるんだ? スズハと合わせたらかなりの数だ。

147:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2016/07/21(木) 21:34:53.29ID:fLRKoG/Y.net
「おい、なんでまだお前がいるんだ、スズハは?」
俺は確かにさっき現実に戻ると決めたはずだ。
「スズハは現実に戻りました。ただあなたにはもう少し話があったので」
ユメミヤの声はいままでの不気味な感じとは違って、なぜだか優しく聞こえた。

148:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2016/07/21(木) 21:35:14.61ID:fLRKoG/Y.net
「じゃあ、ここはまだ夢の中なのか? でも、ここはいつもの俺の部屋だろ?」
「いいえ、ここは夢の中です。そもそもあなたはずっと夢の中にいたんですよ」
ユメミヤはいやに明朗に話した。

149:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2016/07/21(木) 21:35:43.70ID:fLRKoG/Y.net
「だから、その夢から覚めたんだろ?」
「違います、ここも夢なんです。あなたがバスで私と会った日、あの日の夜からあなたはずっと夢の中にいたんです。スズハと一緒にいたセカイ、そしてこの現実のようなセカイ、どっちもたった一夜の夢なんです。
「なんでそんなことをする必要があるんだ? なんのためにそんな面倒くさいこと」
ユメミヤがそんなことをする理由がわからなかった。

150:名も無き被検体774号+@\(^o^)/: 2016/07/21(木) 21:36:56.85ID:fLRKoG/Y.net
「スズハがそう望んだからです。スズハは何回も好きな夢を見るうちに、夢から覚めた後の現実を恐れるようになりました。自分だけが夢から取り残されると。だから、夢の中の人物にも同じ境遇を求めた、現実から私の手によって夢を見ているという境遇を」
「ちょっと待ってくれ」
いろんなこと一度に言われて頭が追いつかないが、その中に一つとても不安なことがあった。
もしいま言ったことが本当なら、
「俺は夢の中の人物なのか?」
もしそうなら俺は実在しないことになる。