女旅人「なにやら視線を感じる」→そこからゾッとする展開に・・・

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188 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/15(水) 09:13:05.45 ID:fNXhvYIy0

九月、リンゴが旬を迎え美味しい季節です。
この町を経って五ヶ月、よう生き残ったなぁと自分でも感心する。
とりあえず前と同じ宿に部屋を確保する。
店主曰く、この五ヵ月の間にライバル店が出没したこと以外
この国や町、及び軍に大きな変化は特には見られなかったとの事。
よし、ならば彼女に会いに行かなければ! というか会わないと死ぬ!!
定期的に彼女に会って話すという事が当然になっていたお陰で、
この町を発ってから「彼女に会いたいバイタリティゲージ」は一週間で頂点に達してしまい、
頭がどうにかなってしまいそうだった。 今正気なのは彼女の使ったジョッキがあるからに他ならない。
歩くときも食べるときも寝るときも彼女を思い浮かべ、
そればかりか仕事場でも彼女を思い浮かべたもんだから危うく命を落としかけた。
そんなこんなで危ない橋を何度か渡り、今回は金銭的危機には陥らないほどの金を稼いできた。

192 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/15(水) 09:18:19.25 ID:fNXhvYIy0
足早に例の酒場へと向かった。
今日彼女が来るとは限らないが、可能性が無いわけではないのだ。
いつもの席に座り彼女が来るのを待った。 久々に会うからかは解らないが、
初めて彼女とここで待ち合わせた時のように、ドキがムネムネして破裂しそうだった。
店のドアが開く度に彼女ではないかと振り向く。
しかしそこにあるのはオヤジの姿ばかりで、今日はもう来ないかもなと諦め最後の酒を注文した。
その時、カランと来客を告げるベルが鳴った。
足音が聞こえる。 この足音には確か聞き覚えがある。
それは何歩か歩くとぴたりと止まった。
数秒静止した後、また動き出し、歩く度にそのテンポは速くなった。
そしてまた、真後ろで止まった。
振り返ると、恋焦がれた愛しい女性が、目の前に居た。

195 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/15(水) 09:24:22.19 ID:fNXhvYIy0
彼女「お前、いつ帰ってきた」
俺「今さっき」
彼女「……くたばったと思っていた」
俺「御覧の通り、脚もついてますぜ」
彼女「……そうか」

196 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/15(水) 09:30:30.87 ID:fNXhvYIy0
正直、彼女が俺のことを覚えているとは思わなかった。 彼女にとって俺など、
飲み仲間にしたってモブキャラであるから、五ヵ月も出番が無ければ記憶から失せてしまうと思っていた。
彼女はいつも通り、俺の向かいに座った。
その顔は相変わらず美しく、可愛らしかった。 髪はまた短く切ったようだ。
彼女「……右目」
俺「え、あぁ、矢がズチュッと」
彼女「痛くないのか」
俺「もう結構前の事だから」
彼女はまた「そうか」と言って、鼻から大きく息を漏らした。
もしかして、心配してくれたのだろうか。 だとしたら大変喜ばしいことである。

199 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/15(水) 09:37:26.08 ID:fNXhvYIy0

店に入った瞬間、鼓動がドクンと鳴ったのが分かった。
いつもの席に、見覚えのある頭。
――まさか。
足を早め、その後ろにつくと、そいつは振り返った。
相変わらず髪をボサつかせた男は、相変わらずの笑顔だった。
私「お前、いつ帰ってきた」
ボサボサ頭「今さっき」

200 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/15(水) 09:42:14.56 ID:fNXhvYIy0
右目は矢で射られたらしい。
騎士団という集団の中で隻眼だというのであれば仲間内で補うことはできるが、
あいつのような個人の傭兵の場合助けてくれる者などいないだろう。
これはかなりのハンデになってしまっているのではないか。
しかし元気そうで何よりであった。 思わず深い安堵の息が漏れる。
……私は安心しているのか、この男が帰ってきて。 何故だ? ……分からない。
とりあえず、ビールを二つ注文した。
すると男は驚いたような顔を見せ、ビール苦手じゃなかったかと訊いた。
私「最近、美味いと思い始めた」
嘘である。

203 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/15(水) 09:48:25.79 ID:fNXhvYIy0
ジョッキを掲げ、コゥンというぐぐもった音が鳴る。 乾杯。
四分の一程度飲み、一息をつく。 慣れはしたが、やはり美味いとは思えない。
私「で。 どこに行っていた」
ボサボサ頭「地方貴族同士の小競り合いとか色々。 某有名傭兵団に当たっちゃって困ったよ」
私「それでその目か」
ボサボサ頭「負け戦確定して逃げようと思ってたら流れ矢が」
なんとも下らん理由で右目を失ったものである。
運が悪かったなとしか言いようが無い。

205 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/15(水) 09:56:20.43 ID:fNXhvYIy0
血の滲むような特訓のお陰でスラスラと筆記体で文章を書けるようになったとか、
話したいことはあったが、結局は何も喋らなかった。
いつものように、無言で酒を飲みチーズとつまむだけだった。
しかし、それでもよかった。
こいつと居るだけで、この五ヶ月で荒んだ私の心は綺麗に洗われるような気がした。
何故そう思えてしまうのかは分からない。 分からないが――
私「久々に会えて嬉しかった」
去り際に言ったこの言葉は、私の素直な気持ちであろう。

207 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/15(水) 09:58:06.87 ID:fNXhvYIy0

彼女とは特に会話はなかった。 まぁ、いつも通りである。
この五ヶ月でどんなことがあったか彼女に聞きたいと思っていたが、
彼女を見るだけで俺の心はふくふくと満たされた。
しばらく飲んだ後、彼女は「明日も早くから仕事がある」と言って席を立った。
彼女と別れるのは残念だが、今日偶然にも会えただけでも良しとしよう。
彼女「久々に会えて嬉しかった」
彼女が横切るときにそう言った。
その言葉の意味を理解するのにはしばらく時間を要した。

208 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/15(水) 09:59:09.03 ID:fNXhvYIy0
俺「旦那ァ、久々に会った子が『会えて嬉しかった』って言ったんだ。 どう思う?」
宿屋「誰だそりゃ」
俺「え、あー……お店の娘なんだけど」
宿屋「そりゃただの営業だな、またお店に来てくださいねー(はぁと)っていう」
俺「いや、言いなおそう。 その子とは飲み友達だ。 お姉さんがいっぱい居るバーじゃない」
宿屋「ほー? でもどっちにしたって社交辞令だろうよ」
俺「しゃ、社交辞令……」
宿屋「お前みたいに収入の安定しない根無し草に脈があると思うな。 期待するだけ無駄だ無駄」
俺「そっか……そうだよなぁ……」

209 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/15(水) 09:59:46.36 ID:fNXhvYIy0
期待するだけ無駄、か。 そうだ、そうなんだが。
そんな希望の全く無い状態から、今の彼女の飲み友達というポジションまで辿り着けたという事実が
俺にもうちょっと先まで行けるのではないかという甘い期待を持たせてしまっている。
自惚れるな。 調子に乗るな。 付け上がるな。
自分に言い聞かせながら、今日も――今回は四日ぶりに、店に入る。 と。
珍しく彼女が俺よりも先に席について、テーブルに伏していた。
寄ると、俺に気付いた彼女は、とても疲れたような顔をあげた。
そんな彼女の顔も色っぽ――ではなく。
俺「何かあった?」

211 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/15(水) 10:07:00.46 ID:fNXhvYIy0
訊いても、彼女は「いや」とかぶりを振るだけだった。
こんな疲れた表情は見たことがない、何かあったに違いないが――
彼女が言いたがらないのなら無理に訊くこともあるまいと、黙って席についた。
しかし、どうも酒も進んでいるようには見えない。
こんな所に寄らず、はやく帰って寝たほうがいいのではないかとさえ思う。
チーズをつまみながら、ちらりと彼女を見る。
やはり、何か話しかけたほうがいいのだろうか。 しかし何を言えばいいのか――
彼女「なぁ」
俺「あ、はい」
彼女「お前は次、いつ町を出る」
俺「……はい?」

214 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/15(水) 10:12:18.81 ID:fNXhvYIy0
ななな何故そんなことを知りたがりますか!
そりゃ、こっちに金があってこの町に彼女がいるのなら一生ここに居たいけども
そんな事を彼女に言うわけにはいかんだろう。 俺は彼女のことをどうしようもない程に
好きだけれども、彼女にそんな気があるわけないから、そんな事を言ったら引かれる。
俺はやっと掴んだこの「飲み友達」というポジションを手放したくはないのだ。
とは言っても、もし彼女が俺を嫌い、もう一緒には飲みたくない、
さっさと町から出て行けと言うのであれば、彼女の望んでいることであるし、大人しく従う他ない。
俺「……この町は料理が美味い、特に今は秋だから、まぁ金の続く限りは。
あ、でも、もし出て行けと言うのであれば、その……いつでも出て行けます、はい」
彼女「そうか。 ……なら、出て行って欲しい」
俺「あ、…………は、」
彼女「それで、私も連れて行って欲しい」

216 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/15(水) 10:18:53.26 ID:fNXhvYIy0
すみませんちょっといみがよくわかんないです。
ワタシモツレテイッテホシイ? watasimo tureteittehosii? 私も……
……
俺「っはあぁぁあああ!!?」
彼女「おい静かにしろ」
俺「あはい」
俺「え、ちょ、っと、え、つまり、一緒に旅を……え?」
彼女「ああ」
俺「え、お、おお……ま、まずはおお落ち着くぁwせdrftgyふじこ」
彼女「お前が落ち着け」

217 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/15(水) 10:24:02.16 ID:fNXhvYIy0
酒を一気に飲み、一息ついて、まず落ち着く。
危ない危ない、紳士たるもの常に冷静であるべきだ、落ち着いて考えよう。
まず。 彼女は確実に、共に旅をしようと――そう言った。
俺「話が見えない。 どうしてそんな事を」
彼女「……私は、疲れたんだ」
俺「疲れた?」
彼女「あそこでの生活が嫌になったんだ」

218 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/15(水) 10:28:03.13 ID:fNXhvYIy0

今日は珍しく、全くと言っていいほどにすることが無かった。
午前の鍛錬が終えてから軽く汗を洗い落とし、部屋に戻る。
側近に訊いても提出すべき書類があるわけでも誰かに会う約束があるわけでもなく、
本当に、何も無かった。 面倒は面倒だが無かったら無かったで困るものである。
本棚から適当に一冊選び、ソファに腰掛けパラパラと捲る。
これは最近読んだばかりだな、と思っていると、ドアが開く音が聞こえた。
王子「うわぁ~、せんまい部屋ァ」
ずけずけと入ってきたのはこの国の王子であった。

219 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/15(水) 10:30:08.00 ID:fNXhvYIy0
双子の弟で、王位継承位第二位の17歳の少年である。 ろくに勉強しようともせず、
甘やかされたこいつは随分と我侭に育ってしまった。 御聡明な兄とは正反対だ。
私「殿下。 こんな狭い部屋に何の御用で」
王子「別に用は無いんだけどさぁ」
王子は部屋をきょろきょろと見回した。 勲章を流し見、そして壁に掛けられた剣の前で足を止める。
実際に手に取り、しげしげと見つめ、そして振りかぶってみたりする。
素人が剣を振るというのは流石に危なっかしくて見ておられず、王子に近付いて注意する。
私「無闇に触れては危険です、お止めください」
王子「だいじょーぶだよ、剣ぐらいちょっとは習ってんだからさぁ」

220 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/15(水) 10:36:04.80 ID:fNXhvYIy0
王子は、近付いた私の顔をじっと見る。
身長は私と同じぐらいか少し大きいぐらい。 顔はまだ青臭い。
王子「ここまで近くで見るのは初めてだけどキミ、可愛い顔してるんだね」
私「……勿体無いお言葉で」
相手をするのは面倒臭い。 さっさと帰ってくれないか。
そう思うも、王子は帰るような素振りは見せない。
私の周りをゆっくりと歩き、私の身体を嘗め回すように見る。 嫌な目つきだ。
決していい気分はしない。 王子でなければとっくに剣の錆になっていたろうに。
王子「よし、決めた」
背後から声が聞こえたと同時に、太股に気色悪い手がねっとりと触れるのを感じた。

223 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/15(水) 10:43:36.72 ID:fNXhvYIy0
王子「キミはボクの所有物だ」
私「……戯れ事はお止めください、殿下」
王子「ふざけてなんかないよ」
尻を撫で回していた手は徐々に前に移動し、そして私の陰部へと到達した。
私は思わず腰の短剣に手を伸ばす。
私「殿下。 私にも限度が御座います。 それ以上続けると言うのであれば――」
王子「どうなるの?」
ぱっと私から手を放す。 そして私の前に歩み出てナスビのような顔を近付けた。
王子「ねぇ、どうなるの? ボクをそのナイフで殺そうって言うの? ねぇ」

225 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/15(水) 10:48:01.77 ID:fNXhvYIy0
王子「いいよ、別に。 でも王子であるボクに少しでも傷つけたりしたらどうなると思う? ねぇ」
王子「それに本当は感謝してほしいんだよねぇ、王子であるボクに相手してもらえるんだから。
……将来、兄上にもし不幸があったら、次の王の座はボクのものになる。
その時、もしかしたら王妃にキミを選ぶかもしれないんだよ? そういうのも捨てちゃうワケ?」
私「そのようなものに興味は御座いません」
王子「……いいのかなぁ。 キミがもし、すこしでもボクに反逆の意を見せたりしたら――
ボク、凄く怒るだろうね。 何をするだろう? 例えば、キミの属する騎士団を潰しちゃうとか?」
私「……! 卑怯なッ!!」
王子「何とでも言えば良いよ。 よく考えてよね、ボクはどっちでもいいから。
キミが大人しく言うことを聞いて、ボクのオモチャになるか、
反発してキミ個人としてのプライドを守る代わりに、キミの大切な恩人や仲間がいる団を潰すか」
王子「キミなら分かるよね。 どっちが利口な選択か」
私は血が滲むほどに下唇を噛締め手を握り締め、王子は目を細め口の端をつり上げた。
短剣から手を引いた瞬間押し倒され、私の唇はあっけなく奪われてしまった。

224 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/15(水) 10:46:38.23 ID:c0PfHZgf0
やっちまなーつか俺がやる

226 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/15(水) 10:48:21.24 ID:nBrR9aPX0
いや、俺がやる!

228 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/15(水) 10:51:25.10 ID:43hYGA8j0
最後までしたというなら、今から王子を殺しにいく

231 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/15(水) 10:54:18.59 ID:fNXhvYIy0
抵抗する唇を貪り、強引に舌をねじ込み、絡ませる。
離すと、間には白い糸が引いた。
憎たらしい程に可笑しそな顔の王子が馬乗りにして見下す。
王子「弱いモンだねぇ騎士団の隊長さんも! たった一言で!」
王子「最初から決まってるんだよ、選択の余地がないことなんか!」
私の腰から短剣を抜き取り、服の端に切れ込みを入れる。
王子「権力の前じゃ、キミみたいなたかが平民の人間なんかさぁ!!」
そして力任せに引き裂き、乱暴に服を剥ぎ取り、私の上半は裸を露にした。

232 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/15(水) 10:54:44.00 ID:c0PfHZgf0
ちょマジでやめて

233 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/15(水) 10:55:52.19 ID:MQWE04010 ?2BP(0)
やめろおいおおおおおおやめてくれ・・・・・

234 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/15(水) 10:56:57.27 ID:fNXhvYIy0
王子「うわっ!!?」
王子は私の上から転げ落ちた。 そして怪物を見るかのように、私を指差す。
王子「な、なんだ、お前、そんな身体で……!!
そんな化け物みたいに醜い身体が、女のものだって言うのか!?」
そして未だに倒れる私に寄って、「汚らわしい」「奇形」と腹を蹴る。
口に入ったゴミを外に出すかのように、臭い唾を私の顔に吐き捨て、
王子「あ゛ー興ざめた! 気分悪ぃ!! 帰る!!」
と、床を踏鳴らしながら部屋から出て行き、壊れそうなほどに強くドアを閉めた。
取り残された私は、しばらくそのまま天井を見ていた。

235 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/15(水) 10:58:12.36 ID:fNXhvYIy0
ソファに凭れ呼吸を整えていると、ドアがノックされ下女が入ってきた。
ケーキを焼いたから食べないか、とのこと。 何も言わずに手を振った。
私「それより、服を引っ掛けて破いてしまった。 替えを頼む。 楽なやつを」
下女「はい、分かりました」
服を取りに部屋を出ようとしたが、ドアの前で足を止めた。
私の表情を窺がい、おどおどと少し口ごもりながら私を心配した。
下女「……大丈夫ですか? お顔が、真っ青です」
何も言わないまま、またひらひらと手を振る。
下女は困ったような顔をし まだ何か言いたげだったが、そのまま部屋を出て行った。
膝を抱きかかえ、顔を埋める。
あのボサボサの頭をした男のだらしない顔が見たいな、と思った。

240 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/15(水) 11:06:34.80 ID:fNXhvYIy0
ボサボサ頭「何かあった?」
開口一番がそれだった。 下女にも言われたが、私は相当酷い顔をしているようだ。
この男もやはり何か言いたげではあったが、何も言わないまま席についた。
こいつは、私のことをどう思っているのだろうか。
やはり弟王子やそこらの傭兵達の様に――私を慰み者としか見ていないのか。
それとも、この町にいる間だけ共に酒を飲む、ただそれだけの人間だと思っているのか。
そして、私はどうなのだろう。 私はこいつをどう思っているのか。
戦場で仇として出会い、情けをかけられ助けられ、そしてまた偶然この場所で出会ったこの男を。
決闘で清々しいほどに負かされ、数えられる程度しか共に酒を飲んでいないこの男を――

243 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/15(水) 11:12:31.48 ID:fNXhvYIy0
共に旅をしたいと、告げた。 いつの間にか口が勝手に喋っていた。
当然こいつは大層驚いたが、酒を飲んで深呼吸をすると落ち着きを取り戻し、
そして真っ直ぐ私の顔を見て問うた。 何故そんなことを言うのか、と。
私「私は、疲れたんだ。 あそこでの生活が嫌になったんだ」
いろいろな出来事が頭を過ぎった。
どれもこれも、吐き気がするほどに嫌な事ばかりだ。
言いたいことは山のようにあった。 言うことができれば、どれだけ楽になるだろうか。
しかし喉から搾り出すことができたのは、たったこれだけの言葉だった。

245 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/15(水) 11:18:16.27 ID:fNXhvYIy0
私「もちろん、お前が嫌だと思うのであればそれでいい、今日の話は忘れてくれ」
忘れて、今までのように、毎日じゃなくてもいいから共に居させてくれ。
どうか私から離れないでくれ、お願いだから――……言える、わけがない。
だいたい嫌がるに決まっているのだから、こんなことを言っても余計に――
いや、それとも旅をしようと言った時点で――嫌われてしまったかもしれないな。
しかしその予想は大きく外れた。
ボサボサ頭「えっと、じゃあ、行こっか」
少し恥ずかしがる男の言葉を聞いた瞬間、
私の中の糸のようなものがプツンと切れ、目の前が真っ暗になった。

246 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/15(水) 11:24:26.39 ID:fNXhvYIy0

店員によると、彼女は開店前から来てそれからずっと飲み続けていたらしい。
酒が進んでないように見えたのは限界が近付いていたからだったようだ。
だったら、あの言葉も酔った彼女の戯言なのだろうか。
糸がプツンと切れたように眠る彼女を見て考える。 どうしたものか。
最初に彼女がそうしたように、このまま店に放置しておけばいいのだろうか。
いや、彼女のような美しいかつ可愛い女性が無防備にもこんな場所に寝ていては
他の酔っ払った客に何をされるかわかったものではないし、放置はダメ絶対。
彼女の肩を揺すってみる。 起きる気配なし。
だめだこりゃ

247 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/15(水) 11:26:32.47 ID:WLosrk7p0
ONBU!!
ONBU!!!!
O!!!!N!!!!BU!!!!!!!!!

249 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/15(水) 11:28:32.87 ID:iqKvdHBZ0
ohimesama!!
dakkko!!!
a!k!k!ko!!!!

250 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/15(水) 11:29:48.02 ID:lXZBST7i0
>>249
待て。良く読み直せ。

253 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/15(水) 11:31:00.41 ID:c0PfHZgf0
>>249
落ち着け
和田アキ子を所望してどうする

251 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/15(水) 11:30:36.20 ID:fNXhvYIy0
宿屋「お? 兄ちゃん今日は早かtt」
彼女を背負う俺の姿を見た宿屋の旦那がぽかんとしているのを尻目に、急いで部屋に運び込む。
唯一の狭いベッドに彼女を寝かし、ボロい布切れのような毛布をかける。 無いよりはマシだろう。
規則的に胸を上下させ、すぅすぅと寝息をたてる。 髪は乱れて彼女の顔にかかっている。
そして何より、まだありありと残っている、彼女の体重を担っていた俺の背中が捉えた感触――
彼女の、小さいながらも確かにあった柔らかなモノの感触が、俺の頭を、股間を刺激し、
今にも爆発させようとしていた。
これはいかん。 これはいかん!! これは、俺の理性が保たん!!
いくら彼女が寝ているとはいえ、その横で息子を宥めるというのも……不可ッ!!

257 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/15(水) 11:37:20.32 ID:fNXhvYIy0
宿屋「で、何でオレんとこに居んだよお前は」
俺「萎えさせるには旦那を見るのが一番だと思った」
宿屋「失礼な、見ろこの肉体美」
俺「なんというビールっ腹。 あー萎えた萎えた」
宿屋「だいたい萎えさせる必要がどこにあるんだ。
折角たぶらかした女だろ、さっさとぶち込みゃいい。 女を待たせちゃいかんぜボウヤ」
俺「たぶらかしてなどいない! 酔いつぶれちゃったから仕方なく、」
宿屋「なるほど酒を飲ませて無理やりか。 でも後悔するぜェきっと」
俺「だから、そんなつもりは無い!」
宿屋「無いっつーか出来ないんじゃねーの。 臆病っつーか甲斐性なしっつーか」
俺「俺は紳士なだけだ!!」

260 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/15(水) 11:40:27.61 ID:fNXhvYIy0
俺「……というわけでさ、俺をここで寝かしてほしい」
宿屋「だめ。 却下。 客は客室で寝ろ」
俺「じゃあ新しく部屋を借りる。 多少高くてもかまわん」
宿屋「却下。 満室」
俺「ふざけんな客来ねーってボヤいてたのどこのどいつだ!!」
宿屋「うるせー店主が満室っつったら満室なんだよ!!
折角シングルベッド一つの密室なんだから童貞ぐらい捨てて来い!!」
その後も口論は続いたが、結局別の部屋で寝ることは許されなかった。
くそう、あのおっさんめ。 明日奥さんにおっぱいパブ行ってた事バラしちゃる。

262 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/15(水) 11:43:20.19 ID:fNXhvYIy0
朝の日差しがこうこうと輝き、小鳥の囀りが聞こえる。 俗に言う朝チュンである。
窓から差すその清々しい光が作り出す陰で、俺は膝を抱えて蹲っていた。
俺は何もしなかった。 出来なかったのではなく、しなかったのである。
無防備、無抵抗の彼女を前にして俺は、何もしなかったのである。
一晩耐え抜いたこの俺を誰か褒めてやって然るべきだ。
とりあえずロビーに降りる。
カウンターの奥では宿屋の奥さんが朝食を作っていた。
俺に気付くとニカッと笑い「もうちょっとだからね」と言った。
宿屋の旦那と奥さんは喧嘩こそするものの、仲良く今までやってきたのだろう。
俺が居ない間にライバル店が増えたりもした。 それでも、これからも二人三脚で続けていくのだろう。
そんな夫婦の仲に皹を入れるのは、やはり良心が痛む。 他人が介入するのは野暮というやつだ。
俺「前、旦那さんが若いお姉さんのいっぱい居る店に居たよ」

265 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/15(水) 11:46:55.96 ID:fNXhvYIy0
朝食を持って部屋に戻る。 と、ドアの閉まる音で彼女は起きてしまった。
彼女「ん……」
もぞ、と動く。 かわいい。 うっすらと目が開く。 かわいい。
上半身を起こすも、まだぼーっと目を擦っている。 超絶かわいい。
キョロキョロと見回し、俺と目が合う。 その瞬間ぱっと見開かれた。
彼女「な、なっ……!!」
俺「お、おはよう……」
彼女「私の剣は!!」
寝起きどっきり。 死ぬほどかわいい。
というか起きてまず剣の心配か。 ベッド脇の壁に掛けてあるのを指差す。

267 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/15(水) 11:49:03.33 ID:fNXhvYIy0
彼女「……私の部屋、ではないようだな」
俺「酔いつぶれて寝ちゃったんで、運ばしてもらいました」
「そうか」と言いながら彼女は自分の胸、そして下腹部を触って確認し、
そして小さく安堵の息を漏らした。 俺はそんなことしてないので安心してください。
彼女「……酒場からは、宮廷の方が近かったと思うが」
俺「いやそうだけど……そこには行きたくないだろうと思って」
はっとしたような顔をする。

268 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/15(水) 11:51:11.12 ID:fNXhvYIy0
彼女「……昨日は、とんでもない事を口走ってしまったな」
俺「酒かなり飲んでたみたいだしなぁ」
酒を飲んだ勢いで、思ってもいないことを言ってしまうことはある。
当然、今回――彼女が共に旅をしたいと言ったことも、そうだと思っていた。
その時だけでも俺は死ぬほど嬉しかったから、今嘘だったと言われても
ヘコタレ……ないことは絶対にないが、まぁ仕方ないかと諦めることはできる。
彼女「うむ、だから……その時の言葉、取り消して欲しい」
俺「あ、……はい」
ほらほらほらほらぁぁぁああああ!!!
所詮夢だったんだよちくしょおおおおおおおおおお!!!

270 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/15(水) 11:52:38.69 ID:fNXhvYIy0
彼女「それでだな」
俺「あはい」
彼女「傭兵のお前に、依頼する。 内容は私の旅の同伴、護衛」
彼女「報酬は当分の食費と宿代。 どうだ、引き受けてくれるか」
つまりは――
しばらく固まったあと、黙って頷く。
彼女はにっこりと笑って「ありがとう」と言った。

274 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/15(水) 11:56:35.96 ID:fNXhvYIy0
一階のロビーにはボコボコにされた宿屋の旦那がぽつねんと立っていた。
理由は知っているが「どうしたのその顔」と訊いてみた。 「放っておけ」
宿屋「それよか朝の決まり文句! 『昨夜はおたのしみでしたか』?」
俺「あっおいこら!」
言ったとき、彼女がちょうど階段から降りてきた。 旦那の表情が固まる。
そして、俺と彼女の顔を指を差し、交互に確認した。
宿屋「たたったたたた隊長殿ぉぉおおおおおッ!!!?」
彼女「朝から騒々しいな」
宿屋「え、どっ……おい、もしかして前言ってた飲み友達って」
俺「彼女がその」
宿屋「な、なんだってー!!!」