225: ◆DuoCt8/SKk []:2012/10/17(水) 16:20:23.69 ID:sTv0KB2U0
一度だけ、自宅付近で彼を見かけました
自転車に乗った彼が、私を追い抜いて行ったのです
走り去っていく彼の後ろ姿しか見えなかったですが、ふいに香った懐かしい彼の匂いや、
初めて見た高校の制服姿に、胸がひどく痛みました
私を追い越すとき、彼も後ろ姿の私に気付いてくれただろうか
気付きながらも、するりと追い抜いて行ったのだろうか
説明しようのない感情が私を襲いました
寂しさ、もどかしさ、切なさ、自分への嫌悪感
その場に倒れ込みたい衝動を必死に抑えて、歩みを進めました
226: ◆DuoCt8/SKk []:2012/10/17(水) 16:22:01.83 ID:sTv0KB2U0
薄着になり日が高くなり始めた頃、
ついに、彼と鉢合わせました
ロビーでオートロックを解除している時、後ろから現れたのが彼でした
心臓が止まるかと思うほどの衝撃でした
片方の口角を上げて、彼は複雑そうに私を見ました
「ひさしぶり」
本当に久しぶりな彼の声に、胸がドキドキと高鳴り、チクチクと痛みました
「ひさしぶりだね」かすれた声しかでませんでした
せめてもっと可愛い声を出せたら良かった
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